30.オーバークロック攻撃
その攻撃は、まるで早回しのビデオでも見ているかのようだった。
モモコが兵士の眼前に瞬間移動。
袈裟懸けに走る銀閃。
鈍い金属音。
プレートメイルにパックリと開く斜めの切れ目。
吹き出す血潮。
それを浴びる前に、隣の兵士の眼前へ。
剣を横向きの8の字を描くように振り、再度袈裟懸けに斬る。
これを繰り返し、八人を斬り殺すのに、5秒とかからなかった。
兵士たちが次々と斃れると、不思議なことに、体全体が受像機の激しいスノーノイズ――砂嵐のように乱れた後で、フッと消えた。
肩で大きく息を吸っていたモモコの全身から炎が消えると、彼女は膝を折った。
「モモコ!」
そう叫んだアンベールは、真っ先にモモコに駆け寄った。遅れて駆けつけたアルバンとエスカは、他に敵が隠れていないか、周囲を警戒する。
「大丈夫!?」
「あ……ああ。
頭に血が上ったら、体が勝手に動き出して……」
「なんか、アルバンの話だと、オーバークロックって言うんだって」
「オーバークロック? あのCPUの周波数を上げるやつ?」
「詳しくはわからないけど、隠しコマンドだって」
モモコは、ステイタス画面を表示するも、オーバークロックという単語は見つからなかった。
「おっと、経験値が140になっている!
やったね!」
「一人当たり、経験値5と言ったところね」
「この調子で、十人以上出てこないかなぁ……。
あれ? あれれ……めまいが……」
突然、モモコが石畳の上に倒れ込んだ。
アンベールは、まだ表示されたままのモモコのステイタス画面を覗き込む。
すると、体力が1に下がっていた。
アンベールは、回復魔法を使おうと思いついたが、よく考えると、回復魔法を使えるのは勇者のみだ。
「アルバン! どうしたらいい!?」
「それ以上動いたら、体力0になって、昏睡状態になる。
寝かせて回復を待つしかあるまい」
「でも、ここじゃ……」
アンベールは、周囲を見渡す。
と、その時、遠くの建物の陰で、緑色とオレンジ色の何かが動いているのが見えた。




