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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
55/172

55話 フィッシュリターンズ

次の日の朝。

宿を後にした俺達はトリスと合流する為に冒険者ギルドに行くと、旅支度をしたトリスが俺達を待ってくれていた。


「トリスおはよう。待たせちゃった?」


「あ、皆さんおはようございます。そんなに待っていませんよ。」


「それじゃ改めて、これからよろしくね。」


「はい、宜しくお願いします。」


軽く挨拶を済ませてから、依頼板にキレース関連の依頼が無いかを確認する。


「えーっと、キレースまでの運搬系ってあるかな?」


「うーん・・・あっ、ヨーヘー、キレースまでの護衛依頼だったらあるみたいだよ。出発は都合良く今日のお昼だって。」


「護衛かー。やったことないな。トリスはやったことある?」


「はい、何度かありますよ。魔物や賊から依頼人又は品物を護衛する仕事ですね。常に警戒しなくてはいけないので、精神的に結構疲れる仕事です。」


「ふーん、まぁ経験ってことでやってみるのもいいかもね。皆はどう思う?」


「私も護衛経験はあった方がいいと思うなー。」


「タァマは皆と一緒にゃらにゃんでもいいです!」


「私もかまいませんよ。」


「よし!じゃあこの護衛依頼を受けてみようか。」


依頼用紙を依頼板から剥がして受付に持って行く。もちろんカナさんのところだ。


「あら、ヨーヘー様。おはようございます。本日はどうされましたか?」


俺を確認したカナさんは凄い笑顔で迎えてくれた。美人に笑顔で迎えられると嬉しいな。


「おはようございますカナさん。先日はご馳走様でした。今回は依頼を受けようかと思いまして。それと、トリスが『フリーター』にパーティ加入するので、手続きをお願いできますか?」


「はい、承りました。それでは皆さんのギルドカードの提示をお願いします。」


それぞれギルドカードを提出する。


「お預かり致します。依頼は・・・あ・・・」


「?」


どうしたんだろう?


「・・・ガラダを出られるんですか?」


「えぇ、キレースに行かないといけない用事がありますから護衛の依頼があって丁度良かったです。」


「そうですか・・・」


さっきまで笑顔だったカナさんの表情が急に暗くなってしまった。そうだよな、ガラダに戻ってくるかわからないし、職業柄これで今生のお別れになることだってあるわけだよな。


「ご、ごめんなさい。う、受付ですよね。はい、登録できました。この護衛依頼は行商人のブリード殿からの依頼です。お昼に西門のところに集合となっております。すでに1名の冒険者が護衛することになっていますので、その方と合同で護衛依頼を行ってください。」


「はい、わかりました。カナさん、色々とお世話してくれてありがとうございました。」


「いえ・・・私もなんとお礼を言っていいか・・・っ、あ、あのっ!」


「はい?なんですか?」


「あっ・・・いえ、ご無事をお祈りしています・・・」


「ありがとうございます。また会えるといいですね。」


「・・・はい。」

折角仲良くなれたのにもうお別れだもんな。カナさんも悲しんでくれているのかもしれない。正直俺も悲しい。もうちょっとこの街に残ってもいいのかもしれないが、長く居れば居る程別れの時が辛くなる。仕方ないことだよなぁ。




カナさんに別れを告げて冒険者ギルドを出た俺達は、お昼までまだ時間があるのでトリスの防具を合わせる事にした。


「トリス、昨日言ってた防具だけどとりあえず作ってみたから着けてみて貰ってもいい?」


「はい!本当に用意して頂けたんですね。うわぁ、これなんの素材ですか?とても頑丈そうです。」


「マーシュサーペントの皮の間にミスリルを挟んである。魔力を通すと凄く硬くなるから、戦闘時には防具に魔力を流すのを忘れないでね。」


「・・・・・・・今、なんて言いました?ちょっと幻聴が聞こえた気がしたのですが。」


「いや、だから戦闘時には防具に魔力を流してねと」


「そこじゃありません。何の防具って言いました?」


「マーシュサーペントの皮の間にミスリルを挟んであるって」


「えぇぇぇぇぇ!!?マーシュサーペントっていったら衝撃吸収や防斬にも効果がある素材ですよね!?それも驚きですが、そ、それよりもミ、ミ、ミスリル!?魔力を通すと硬化するということは魔法陣が刻まれてるということですか!?そそそそんな高価な物頂けません!!」


今の台詞の中にコウカというキーワードで効果、硬化、高価って3つ出てきたな。どうでもいいけど。


「いや、皆同じの着けるし、受け取って貰わないと困るんだけど。」


「はっ?皆同じ物!?ヨ、ヨーヘーもしかしてどこかの貴族様なんですか!?」


「いや、貴族じゃないし、ただの魔法使いですけど。」


「トリス、あんまり深く考えない方がいいよ。ヨーヘーの特殊魔法ってそういうものなの。師匠もそうだったけど、出鱈目過ぎるんだよね。それと、世に出しちゃいけないような技術使ってるからそれも売らないようにね。」


「えぇ?な、なんですかそれは・・・こ、怖いんですけど・・・。」


「まぁまぁ気にしないで着てみてよ。サイズは適当に作ったから調整しないといけないしね。」


まだ納得いってないような顔のトリスに防具を着けてもらった。


「非常に言い辛いのですが・・・む、胸の部分がちょっと緩いような気が・・・いえ!ちょっとそんな気がするだけですから問題ないんですけどね。気のせいでした。」


言われてトリスの胸の部分を見てみると凄い隙間が空いていた。これは気のせいじゃない。アリアサイズで作ったのが間違いだったなぁ。


「そ、そうか、違和感あるかな?ちょっと調整するから外して貰える?」


いそいそと防具を外して俺に渡してくる。いかん。プライドを傷つけてしまったかもしれない。

俺がサイズの調整をしているとトリスは後ろを向いて胸に手を当ててブツブツ言っていた。何を言ってるんだ?


「『ビッグイアー』」


わー、耳が大きくなっちゃったー。

気になったので集音機能をあげてみる。


「(成長期!成長期!まだいけます!成長期!頑張れ頑張れ成長期!れっごーれっごー成長期!)」


19歳ってまだ成長期だったんだ。胸の大きさに関する話題はトリスに振らない方が良さそうだな。明らかな地雷だ、地面からはみ出て、尚且つここに地雷が置いてありますって看板があるクラスの地雷だ。まぁ全く無いという訳じゃない・・・んじゃないかと思う。ちょっと慎ましいだけ。引っ込み思案なんだ。引き篭もり。インドア派。そんな感じだ。

トリスのサイズに合うように調整した防具をトリスに受け渡した。胸の部分は若干外側を膨らませてある。

喜んで着けていてくれたから正解だったのだろう。


そんなことをしていたら依頼の時間になったので集合場所である西門まで向かった。

そういえば門兵の隊長さんにはあれ以来会えなかったな。色々語ってみたかったんだが・・・。

東門にいた人だから西門にはやっぱりいないよな。

とりあえず見張りをしていた門兵の人にガラン隊長によろしく伝えておいて欲しいと言伝をして日本酒を1本渡しておいた。


さてと、ブリード氏はどこだろう?荷馬車が3台くらいあるな。正解の確率は3割強。勘に頼るか・・・。

なーに、正解率3割なら高いほうだ。野球で3割打てれば一流だからな!

荷馬車でボーっとしていた若い男性に話しかけてみた。


「あのーすいません。ブリード氏の荷馬車はこちらでしょうか?」


「え?あぁ、そうだよ。護衛の冒険者の人かい?」


「はい、今回依頼を受けてキレースまで護衛する事になる『フリーター』です。これが依頼書です。」


「あぁ、ちょっと待ってくんな。旦那ーーー!護衛の人が来ましたよー!」


すると別の荷馬車にいた男性がこちらにやってきた。2台持ちかい。確率は7割弱だったわけだ。


「俺がブリードだ。あんた達が護衛の冒険者かい?・・・改めて聞くけど、魔物や盗賊から俺達や荷物を守るのが仕事だが大丈夫かい?」


ブリード氏はアリアやトリス、タァマちゃんを少し不安そうに見ている。

確かに4人中3人女性で内1人は子供だ。俺だってその辺にいる兄ちゃんだからな。不安になるのも分かる気もする。


「こんにちは、護衛依頼を受けた『フリーター』です。俺達は星3つの冒険者ですが、グリーベアの群れを撃退するくらいの実力はあります。遊撃手1人と弓手1人、魔法使い2人のパーティです。」


「グリーベアーの群れを・・・。そうか!それなら安心だな!それに魔法使いが2人もいるのか!それは心強い!キレースまで宜しく頼むよ!護衛対象は俺と家内と御者の2人、それと荷馬車3台だ。基本的に馬車の空いてるスペースに乗ってくれて構わないが、有事には頼んだよ。」


3台とも正解でしたか。どれに話しかけてもよかったらしい。


「わかりました。では先頭の馬車にお邪魔させてもらいますね。」


「あぁ、実はもう1人護衛がいて、その人は星5つの前衛らしいのだが星5つのベテランだとしても1人だと不安でね。君達が依頼を受けてくれて助かったよ。・・・あぁ、彼も来たな。では挨拶をすませたら出発しようか。」


ブリード氏の視線を向けた先を見ると身長2mくらいの男性がいた。引き締まった全身の顔以外は鱗に覆われていてツヤツヤしている。着けている防具は無数の傷があり歴戦の戦士って雰囲気を出している。顔はかなりのイケメンだ。たらこ唇がチャームポイントなのだろう。

・・・ていうかマグロじゃねーか。


「なーっはっはっはっ!ユー達が護衛依頼を受けた者たちだね!?むむっ!?ユーはたしかヨーヘー=イシカワ!ここで巡り合えるとはなんたる運命!!やはりミー達は固い絆で結ばれているようだね!!なーっはっはっはっ!!」


「マグロさんチーッス」


「ミーの名前はトロ=オーマだ!マグロではないぞ!!気安くトロ様と呼んでくれても構わないよ!!なーっはっはっはっ!!」


あ、そうだった。しかし、テンション高い人だ。そして面倒臭い・・・。


ジーーー。


そこにマグ・・・トロ氏をジっと見つめる視線があることに気が付いた。マグ・・・トロ氏もそれを感じとっているようだ。


「ふむ・・・このプレッシャーはなんだ?ミーを見つめる視線を感じる・・・この不快感はいったい・・・。これは・・・これは・・・ニャンコの気配!?」


トロ氏を見つめているのは俺の背中にぶら下がっているタァマちゃんだ。


「ヒッ、ヒィィィッ!!やめて!ミーを食べないで!!び、猫人に付けられた傷は治りが遅いのだ!ヨ、ヨーヘー!心の友よ!!そ、そのニャンコをミーに近づけさせないでくれないか!?」


「タァマちゃん、あんなの食べたらお腹壊しちゃうよー。あとで美味しい物作ってあげるから我慢してねー。」


「にゃぁ・・・・・・お魚」


「ヒィィイッ!?」


いい弱点を知ったな。面倒臭くなったらタァマちゃんをけしかけるか。


「君達は知り合いだったのか。それなら挨拶はいらないかな?早速出発しよう!」


そう言うとブリード氏は真ん中の荷馬車の御者席に乗り込んだ。隣にいる女性が奥さんかな?俺達も先頭の荷馬車に乗り込む。

見張りはミーに任せたまえ!と言って御者の隣に座ったマグロ。俺達は荷馬車の荷物の上に座っていいと言われたので、遠慮なく荷物の上に座らせてもらった。

荷馬車が西門を通過しようかというところで、荷馬車を静止する声が聞こえた。


「待ってください!その馬車、待ってください!!」


声の方に視線を向けると、こっちに向かって走ってくるカナさんの姿が見えた。


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