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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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53話 会議と大金

「はい?なんですか?」


「私を・・・『フリーター』に入れて貰えませんでしょうか?ヨーヘーさんと一緒にいたいということもあるのですが、皆様を見ていて楽しそうだなぁ、私もその輪に入りたいなぁと感じてしまいまして・・・」


まさかの入団要請!でも俺達は冒険とは別にセリアさんを探してユグドさんを止めるという目的があるしなぁ。それに加えて俺は地球に帰る手掛かりを探してたりするわけで・・・、まぁ地球への帰還方法は雲を掴むような話で、いったい何をすればいいのかわからない状態だから、トリスさんをパーティに加えるにあたってほぼ問題ない。しかし、アリアの方は切羽詰っているわけではないが、目的がハッキリしてる分、現在の『フリーター』としての行動指針となっている。それに賛同してくれるかどうかがパーティ参加の有無を決めることになるだろう。まぁこれについては俺が1人で決める事じゃないし、アリアと要相談だな。


「トリスさん。ちょっとアリアと相談したいので、返事は後日でも構いませんか?」


「はい。それで構いません。ご迷惑になるなら断って頂いて構いません。・・・でも本音を言うと仲間に入れて欲しいです。」


「わかりました。とりあえず明日の夕方に冒険者ギルドに来てください。それまでには決まると思いますが、決まらなかったら場合はその時にまた次の日程を指定しますので。」


「えぇ、良いお返事を期待していますね。」


俺達はそこでトリスさんと別れて宿に戻った。


宿に戻ってから一回スッキリする為に魔法の袋(家)の風呂に入り、今は宿のベッドにアリアと2人で腰掛けている。タァマちゃんは俺の足を枕にしてスヤスヤお休み中なので、そのまま寝かせてあげることにする。


「第1回『フリーター』パーティ会議ー」


「わー」パチパチパチパチ


アリアはノリが良いな。おかげでとってもやりやすい。ノッてきてくれなかったら今日の枕は冷たくなっていただろう。


「はい!今回の議題ですが、新しくパーティに入りたいという人物が現れました。現在『フリーター』としてはメンバー募集はしていませんが、是非入れてもらいたいとの要望がありました。さて、どうしましょうか。俺の意見としてはユグドさんを止めるのが最優先目標としてあるので、それを伝えた上で了承されればいいのではないかと思いますが、了承されないのであれば残念ですがお断りする方がいいと思います。」


「私もその方向でいいと思うけど、ヨーヘーが地球に帰る方法も探さないといけないよね。その時にトリスさんにヨーヘーの事情を伝えないといけないよね。大丈夫かな?」


「ん?俺が異世界人なのってもしかしてバレるとヤバい?」


「うーん・・・どうかなぁ?そこまで重要視されないかも?私やミイ師匠もヨーヘーが異世界人だって聞いても反応薄かったでしょ?でも人によっては研究の対象にしたいって思うかもしれないし、トリスさんがどうなのかまではわからないなぁ。」


そういえばそうだったな。アリアやミイ師匠は、地球?ふーんって感じだったしな。魔法がありふれている世界だし、俺みたいに偶然転移してくる人もいるのだろうか?使った事ないけど召喚魔法もあるくらいだしな。


「それなら仲間になったら打ち明けよっかな。じゃあ方針としてはユグドさんへの対応を目標にして動いていますということを了承して貰えるならよろしくー、んでダメならごめんねってことでいい?」


「ヨーヘーありがとうね。お兄ちゃんのこと考えてくれててとても嬉しいよ。」


「なんかのんびりし過ぎてる気もするけどねー。キレースまで10日で着くはずがもう19日経ってるし。」


「今更焦ったところでいい結果にはならないだろうし、私達も色々経験積みながら進んだほうがいいと思うからそんなに気にしないよ。」


よし、パーティの方針も決まったな。ユグドさんを目標にしていることに賛同して貰えるかどうかで加入を見極めよう。


「でも、今日のトリスさんにはビックリしたなぁ。ヨーヘーの事慕ってるってことだよね・・・。あんなに綺麗な人に慕われるなんてヨーヘーも隅にいけないね。トリスさんの事・・・どう思ってるの?」


なんでそんな不安そうな目で見てくるんだ。


「どうって、正直嬉しいよ。でも今のところそれだけかな。お互いの事よく知らないし。それにアリアはトリスさんのこと綺麗だって言うけど、まぁ確かに凄い美人でエルフ耳だけど、アリアだって全然負けてないぞ?俺はアリアに好意的に見られるほうがうれ・・しい」


俺は何を言っているんだ。言ってて途中から凄い恥ずかしくなった。


「えっ!?そ、そうなの?う、うんありがと。(そっか嬉しいのかぁ)」


真っ赤になったアリアがふいっと顔を背けた。

お互いに落ち着くまで約10分くらい掛かった。アリアはタァマちゃんを抱きしめながらなんかブツブツ言ってたけどもう大丈夫なようだ。


「で、では次の議題です。魔法の袋(家)ですが、個別の名前を付けたいと思います。いい案はありますか?」


「え?名前?まぁ魔法の袋は色々種類があってややこしいかもね。うーん、食料が入っているのは食糧庫でいいでしょ。単純に荷物入れに使っているのは魔法の袋でいいし、ヨーヘーの腰に下がっている携帯用は別に名前いらないよね。それで家の名前かぁ・・・魔法の家だからマジカルハウスとか?」


「そのまんまだね。うーんラブハウスなんてどうだろう?」


「恥ずかしいから却下。」


その後、「ヨーヘーとアリアのお家」、「ヨーヘーパレス」、「セイクレッドセリアル」、「不思議な館」、「風雲石川城」、「家」、「住処」、「秘密基地」等色々な案が出たがいまいちパッとしない。最後の方とか適当になってきたので、もう一番最初に出たマジカルハウスでいいやという話に落ち着いた。

命名:魔法の袋(家)改め「マジカルハウス」


パーティ会議終了後はアリアと一緒にカナさんのレシピ帳を読んで料理の勉強した。なるほど、あのジュルワの衣はポップビーンズという豆を粉末状にした物なのか。2人でレシピについて関心しつつグロスティア料理の勉強をして、日付が変わるころにそろそろ寝ようと勉強を切り上げた。


「そうだアリア、これ貰ってくれる?」


俺は昼間に雑貨屋で購入しておいた髪飾りをアリアに手渡した。


「え?これって・・・昼間見てたやつだよね?買ってくれてたの?」


「それ凄く似合ってるって思ったから買っちゃったんだ。貰ってくれると嬉しいな。」


「・・・ありがと。どう?似合う?」


やっぱり色合いがアリアの髪によく合っている。凄く可愛いと思ってしまった。


「凄くよく似合ってるよ。たまにでいいから着けてくれたら嬉しいなー。」


「ふふっ、いいよー。ところでこっちの髪飾りはタァマちゃんのだよね?」


あ、いけね。同じ袋に入ってたんだった。タァマちゃんは寝てるからタァマちゃんの髪飾りだけは返してもらって、台の上に置いておいた。


「それじゃおやすみ。」


「うん、ありがとね。おやすみー。」


髪飾り気に入って貰えてよかったな。なぜ気に入って貰えたかわかるかって?それは隣のベッドから時折「フフッ」とか「えへへ~」とか笑いが漏れてくるからだ。ベッドに入る際に髪飾りを持ったままだったのは確認しているから、髪飾り関係の事を思って笑いを漏らしているんだと思うのだ。




「おはよーございます!お兄ちゃん朝です!朝ですよー!」


タァマちゃんにラヴリー妹モーニングを受けて俺は目を覚ます。俺に馬乗りになって起こすタァマちゃんをハグして温もりを感じる。


「にゃぁ、お兄ちゃん寝ぼけてます!でも気持ちいいです。」


腕の中でにゃあにゃあしてるタァマちゃんを堪能してたら、タァマちゃんの髪に髪飾りが着いている事に気が付いた。


「あれ?タァマちゃん、その髪飾り・・・」


「にゃあ!そこに置いてあったです!にゃいますか?」


「うん、似合う似合う。すっごい、いや、世界一可愛いよ。それはタァマちゃんに買った物だからタァマちゃんにあげるね。」


「にゃぁ♪お兄ちゃん大好きですっ」


俺に抱き着いて喜んでくるタァマを抱きしめ返してから、隣のベッドで寝ているアリアに声を掛けた。


「う~・・・おやほ~」


おやほーってなんだ?おはようなのか?やっほーなのか?

寝ぼけた様子のアリアを連れてマジカルハウスに入り、顔を洗ってから朝食を作成する。ここは街中なので宿で朝食を取るのが俺達のルールだったが、昨日折角覚えた料理を早く試したくてウズウズしていたので、今日くらいはいいよねとルールを曲げてしまったのだ。

早速カワメのジュルワを作ろうとしたのだが、ポップビーンズは昨日買った食材の中にあったのでよかったのだが、カワメがいないことに気付いて急遽ファロー肉のジュルワに変更になった。朝からちょっと重い料理になってしまったな。うまかったからいいけど。


午前中はアリアと料理講座を開いてお互いに勉強した。

アリアの料理の腕の上達速度が目覚ましい。3ヶ月前に比べるともはや別人だ。あのデモンズ料理がもう食べられないと思うと少し寂しく・・・はならないな。あれは食材に対する冒涜だからな。


昼食の時間になったが料理講座で作った物を皆で突いていたのでお腹は減っていない。

13時からヨクマタ氏に会う約束があるので、冒険者ギルドに向かうとしよう。宿屋を出る際に宿の主人にもう1泊食事付きでお願いしてから冒険者ギルドに向かった。


「初めまして、私はヨクマタと申します。この度はチャリート殿の運んでいた物を買い取らせて頂ければと思い、所有権を持っていらっしゃるヨーヘー殿に面会を希望させて頂きました。」


「チャリート氏は残念でした。それで荷物の買取をしたいということですが、全ての荷物を買い取りしてもらえるのですか?」


「はい、先日保管されている荷物を拝見させて頂きましたが、大きな欠損はなく商品価値は下がらないと判断させて頂きましたので、ヨーヘー殿が不必要であるということならば全て買い取らせて頂きたいと思います。」


いつの間にか検分してたのか。俺に所有権があるはずなのに聞いてないぞ。まぁその方が話が早いから別にいいけどね。


「荷物は食料や雑貨でしたよね。食料とか腐ってたりしませんか?」


「はい、食料は日持ちする物ですので、価値は変わりません。なので、チャリート殿に支払う予定だった金額そのままで買取させて頂ければと思うのですが・・・」


「ちなみにいくらになりますか?提示金額を聞いて判断したいと思います。」


棚ボタな荷物だが、所有権が俺に移った以上ボッタクられるのも気分悪いしな。カナさんに大体の相場は聞いてある。


「はい、荷の引き取り額は8万レンスで買取させて頂ければと思います。」


うん、多少安いが聞いていた相場と対して変わらないな。


「わかりました。その金額でお売りしますよ。」


「それと・・・もう一つよろしいでしょうか?」


「はい?なんでしょう?」


「あの荷物が載っていた荷車なのですが、あちらもヨーヘー殿の持ち物と聞き及んでおります。」


「あぁ、はいそうですね。」


人力荷車のことか、そういや忘れていたわ。


「あの荷車は馬が必要ないと聞きましたがどのようにして動かすのでしょうか?」


「あぁあれはですね・・・」


口で説明するよりも見せた方が早いと思い、俺達は荷車が保管されている場所に移動してヨクマタ氏の前で動かして見せた。


「素晴らしい!トロッコの技術を複合したのですな!このハンドル?という装置が画期的ですな!車輪に連動していて進行方向を変えるというわけですか!」


「えぇ、その通りです。しかし作っておいてなんですけどこれ動かすのに結構疲れるので馬に引かせた方が効率的だと思いますよ。特に上り坂とかキツイ・・・というか死ねます。」


「動力に関しては魔法を使えばどうとでもなりますよ。・・・ヨーヘー殿、もしよろしかったらこの荷車を譲っては頂けませんか?」


「これをですか?結構ボロボロですよ?」


「いや、見た目は細かい傷が目立ちますが車輪やここの歯車の部分等ちゃんと整備されているようですし、大切にお使いになられたのがわかります。」


なんだろう?心が痛い。即席で作ってわざと傷つけたとか言えない。

後ろめたいことがあって少し苦い表情をしてしまったのだろうか。俺の表情を伺っていたヨクマタ氏はなんか勘違いをしているようだ。


「今まで共に歩んできたのでしょうから愛着もあるでしょう。この荷車も主人にここまで大切にしてもらい嬉しいと思います。」


やめて!俺の心のHPがどんどん減っていく!長い付き合いじゃないんです!50mくらいしか乗ってないんです!


「それを承知で無理なお願いをさせてください!どうか!どうか譲ってはもらえませんでしょうか??もちろんタダでとは言いません。大切な物を譲って頂くわけですから、こちらも誠意を見せさせて頂きます!25・・・いや30万レンスで譲って頂けませんでしょうか!?」


「ぶっ!」


はぁぁぁ!?30万レンス!?300万円相当!?いくらなんでもそれは高過ぎじゃないだろうか?馬車の相場って馬込みでも10万レンスとかだったよな?荷車だけなら4万レンスくらいのはずだ。そ、それが30万!?トロッコとハンドル付けただけで!?


「むむぅ、まだ足りませんか・・・?わかりました!では40「30万でいいです!それでお譲りします!」」


「本当ですか!?ありがとうございます!大切に使わせて頂きます!もしこれで儲けがでましたら、その儲けの数割をお支払致しますので!」


金額にビビって売ってしまった。ハンドルがそんなに画期的なのか?ハンドルの技術を売っていくのかもしれないな。ほらタァマちゃん、そんな残念そうな顔しないの。運転が楽しかったのかな?あんなのいくらでも作ってあげるから。

そんなタァマちゃんを目聡く見つけたヨクマタ氏はごめんねとタァマちゃんに謝っていた。


さて、38万レンスを手に入れてしまった。思わぬ大金だ。全部旅の資金に充てる予定だけど、小市民としては持ってるのは怖いからどこかに預けたい。ギルドに預けようかという話にもなったが、いざ使いたい時に手元にないと困るということで魔法の袋(携帯用)をクローンで複製して金庫として使うことにする。

それにしてもこれが大金貨か・・・威圧感がパネぇな。これ1枚で100万円なんだよな・・・。

・・・・・・凄く大金貨の海に溺れてみたい。


あの時の俺はどうかしていたんだ。マジカルハウスに入り込み、クローンで大金貨を10万枚くらい複製して金貨の海だヒャッホゥゥゥ!!この世の財宝は俺のもんだー!!とタァマちゃんと一緒に海賊ごっこをして遊んでいたらアリアに見つかってすっごい怒られた。

「キャプテンキャット様に文句をつけるたぁ覚悟は出来てんだろうなぁ?」と調子に乗ってしまったのが更にいけなかったのだろう。それはもう凄く怒られた。複製してしまった大金貨は以前作ってしまった金塊と同じ魔法の(ダメなもの)、通称ブラックボックスに保管した。ちなみにアリアンもここにいる。段々カオスになっていくね。このブラックボックス。


さーて、そろそろトリスさんとの約束の時間だ。


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