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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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22話 写真とお仕置き

昼食を食べ終わり、今日は安静にしていようという話になったので、空いた時間でチーズで撮った魔記録(チーズで記録したデータをこう呼ぶ事にした。)の整理をする事にした。

整理をしないと俺の中に魔記録が溜まり続けてしまう。それがどういうことかというと、魔力消費し続けてしまうわけだ。まぁそんなにたくさんの魔力を使うわけでもなく、俺の魔力回復速度を考えると全然影響はないのだが、定期的にアウトプットしないとゴチャゴチャしてきて、いざ写真が見たいとなった時に探すことに苦労しそうなのだ。なので魔結晶や紙等の媒体に魔記録を移して、俺の中にある魔記録は消去するようにしようと思う。

今回は外部出力先としてロジャーさんから貰った魔結晶を使うか。

その前にクローンで魔結晶を増やしとこっと。

ロジャーさんに貰った魔結晶だと1個つき500枚くらい保存できそうだ。

魔結晶に魔記録を転写して、いつのデータかを書いてから魔法の袋にしまっておく。

人物が写ってる魔記録だけは紙に転写してみよう。これはアリアと一緒に見て楽しむんだ。

大体200枚くらいあるな。全部確認するのメンドイからとりあえず人物が写っているデータでフィルタリングして紙に転写するか。

「『ペースト:魔記憶、人物』」

おー、どんどん紙に転写されていく。

1分程で200枚の写真が出来上がった。高速プリンタもビックリの速度だな。

あとは俺の中の魔記録を消すかー。これちゃんと魔結晶にバックアップが取れてるか不安になる。消す前に何度か魔結晶を確認してしまった。


「ヨーヘー何してるの?」


「あぁ、チーズって魔法で俺が見ている風景を魔力に変換して保存できる魔法なんだけど、アリアも見れるようにそれを紙に転写しておこうと思ってね。」


「へー、面白そう。・・・ん?ヨーヘーがたまにチーズチーズ言ってたのってそれだったの?」


「うん、そうだよ。写真って言ってね、思い出を残す事でこんなこともあったねーって楽しめるものなんだ。」


「あ、これミイ師匠だ。なんていうかやっぱりミイラだよね・・・。実物はなんとか慣れたけど、写真で見るとやっぱり怖いなぁ。」


「ミイ師匠はホラーだね・・・これは子供には見せられない。」


「あ、これは旅立ちの時だね。こっちは初めて野営した時かなー?やだっ!寝顔なんて撮らないでよーーー」


「ふ、油断するのがいけないのだ。てか、自分が見えているものだけって範囲だから当たり前だけど、俺がいない・・・これはちょっと寂しいな。」


これは微妙にへこむな。視覚を飛ばせる魔法を作るか。『サードアイ』って名前でいいだろう。

新しい魔法の構想を考えているとアリアが静かになっていることに気付いた。


「ん、どうしたの?なんか気になる写真でもあった?」


アリアが笑顔で振り返る。気のせいだろうか?目が笑ってない気がする。


「ヨーヘー。ちょっと話があります。」


あれ!?敬語!?ちょっ!なんだ!?何を見た!?

アリアは1枚の写真をビリビリと破いている。俺は何を撮った・・・?

破られた写真の一部が床に落ちたので手にとって確認してみる。

えーっと、これは・・・洗濯機だよな?ということは脱衣所か?

撮られた順に並べられてたから、アリアがまだ見てない写真の束の一番上を見る限り、時期的に初めて魔法の袋(家)を使った時あたりかな?

その時に何かアリアの機嫌を損ねるようなことあったっけ?怒られるようなこと・・・変な起こし方した時か?いや、それはもう許して貰ってるし、今になって怒る事じゃない気がする。あとは・・・はっ!?

俺が何かに気付いた顔をしたのを確認したアリアは一言だけ言い放った。


「正座」


ふふふ、思い当たる事がありまくる。ちゃんと確認しておけばよかったぜ!

さぁ、恐怖の説教タイムの始まりだ。


「チーズという呪文を聞いた時に何か引っかかるものがあったんですよ。最初はたまにヨーヘーがチーズチーズ言ってるからそれのことかなと思っていたのですが、この写真を見て思い出したんです。」


そうい言って、ズタズタに切り裂かれた写真を風魔法で更に細切れにする。


「あの時、ヨーヘーは言いましたよね。「タオル、ここに置いておくね。冷蔵庫に牛乳とかチーズとか入ってるから湯冷ましにどうぞ。」と。」

ダラダラダラダラ。

冷や汗が止まらない。

完璧にあの時のことだ。タオルを作成して脱衣所に行った時に裸のアリアと遭遇してしまった不幸で幸せなうっふんイベントの時だろう。これはごまかしが効かない。だって証拠・・・はもうすでに細切れになっているが、アリアに見られてしまっている。ここで誤魔化したら舌を抜かれてしまうに違いない。


「よ、よく覚えていますね・・・」


「誰がしゃべっていいと言いましたか?」


「ごめんなさい。」


「あの後もう一度お風呂に入った後、冷蔵庫を見たのですが、牛乳とコーヒー牛乳しか入っていませんでした。あの時はコーヒー牛乳の事をチーズというのかと思っていたのですが、今ならコーヒー牛乳もチーズもわかります。では、なぜあの時のヨーヘーは冷蔵庫に入ってもいないチーズを薦めてきたのでしょう?」


ダラダラダラダラダラダラダラダラ。

もはや冷や汗が滝のようだ。弁明がしたい。いや、真相は下心丸出しなので弁明なんて出来ないのだが、謝るくらいはしたい!でも発言が許可されていない。どうしよう。


「答えはこの写真だったわけですね。」


今日俺は死ぬのかもしれない。


「何か弁明しますか?」


弁明のチャンスがきた。ここで選択を間違えると大変な事になると俺の危険察知が最大警告を出している。慎重に、慎重に言葉を選ぶんだ。


「・・・き」


「き?」


「綺麗だったから・・・アリアがあまりにも綺麗だったから!だからつい出来心で撮ってしまったんです!最低な事をした事は謝ります!でも凄く綺麗だったから!!」


「なっ!?」


正直にぶちまける事にしました。何の言い訳をしても詰む未来しか見えなかったので。あとはアリアの判決を待つだけだ。思ったことを話したんだ。思い残す事は・・・ない!でも絶交だけは勘弁してほしいなぁ。その時は死ぬ気になって謝ろう。

アリアを見ると俺の発言で彼女は真っ赤になっているが顔はまだ怒っているようだ。


「そ、そんなこと言ってもごまかされないんだからね!」


「本当に!本当に綺麗だったんだ!出来る事ならずっと見ていたかった!」


「さらっと変態な発言しないでっ!」


「マジで綺麗でした!もうこの世の物とは思えな「黙りなさい」・・・はい。」


「まったく・・・もうしょうがないなぁ。」


「アリア?」


まさか許してくれるのか?許して貰えるような空気じゃなかったのに!?動揺からか敬語じゃなくなってるし。もしかしたら今回の看病で相殺ということにしてくれるのだろうか?

アリアは自分の道具袋をゴソゴソ弄っている。この道具袋は魔法の袋ではなく、完全にアリアのよく使う私物入れだ。

彼女が道具袋から取り出したのは棒の様な物だった。


「あのぅ・・・?アリアさん?その鈍器のような物はなんでしょうか?」


「これは力の無い人でも振れる軽い棒ですよ。」


あ、敬語に戻った。


「な、なんでトゲトゲが付いているんですか?」


「このように軽い棒なので重量が足りません。それを補う為に振り下ろした際に効果的にダメージを与える為ですね。」


アリアは軽く棒を振って見せてくれる。軽快な素振りだ。野球ボールが当れば外野フライになりそうなスイングだ。


「そ、それをどうするんですか?」


「私には1人だけ友達がいるんですが、その友達が私を怒らせたのでこの棒を使って反省してもらおうと思うんです。」


「そ、その友達はとても、凄く、これまでにないくらいに超絶に猛省してると思うんです。許してあげるのも友情かと思う次第でありますがががが。」


「許すのも友情ですが、間違った事を正してあげるのも友情です。私は後者を選びます。」


「そそそそそれで殴られたらとても痛いかと存じ上げます!血とか確実に出るんじゃないかと!!」


「大丈夫。こう見えても私ヒールは得意なんです。それに安心してください。ちゃんと峰打ちにしますよ。」


「そそそそそそそそその鈍器には峰に当る部分がどこだかわからないのですが!!」


「いっぱいあるじゃないですか。峰と言うのは頂ですから周囲よりも高くなっている所です。つまりここですよ。」


そう言ってアリアは鈍器に付いたたくさんのトゲトゲを指差す。


「いやぁぁぁあぁあああ!!!殺されるぅぅぅ!!助けてぇぇぇぇ!!!」


「人聞きの悪い。『ヒール』するって言ってるじゃないですか。死んだりなんてしませんよ。」


「ぼっちだったヤツに他人への力加減がわかるとは思えな「黙りなさい」・・・はい」


「ぼっちって言いましたね?私だって好きでお一人様をこじらせてたわけじゃないんですよ?ちょっとミスしてしまっただけじゃないですか。それなのに延々と延々と・・・。大体あの人達はいつもいつもネチネチと・・・」


10年分の愚痴が始まってしまった。今までのストレスを吐き出すように言葉に力が入っている。

いかん。この流れで折檻されるとアリアをイジメてたアホ貴族達の分まで俺の体で清算されてしまう可能性が高い。

アリアはまだブツブツ言っている。時折鈍器を素早く振ってビュンっていう風切り音が鳴っている。

逃げる・・・か?ソローっとその場から離れようとすると


「まぁそんなことはいいんです!」


「ひぃ!!」


そんな言葉と共に俺の目の前を鈍器がビュンと通過した。


「今となってはあの人達にも感謝してるんですよ?あの人達がいたから今の私があるし、ヨーヘーという大切な友達も出来ましたから!」


嬉しい事を言ってくれるが状況が状況だけに素直に喜べない。


「話がそれましたね。そうです。私は大切な友達の間違いを正さないといけないのでした。」


鈍器の様な物のグリップを握りやすい様に握り直すアリアさんがニコニコしながら近付いてくる。


「お、お慈悲をー!お慈悲をー!!あ、あ、あぁ・・・あゎゎわ・・・」


ぎゃぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ・・・・・・




気が付いたら夜だった。

さっきまでのことを思い出し、体が震える。

アリアを怒らせたらダメだな。絶対。

もうこんな酷い目には遭いたくないので、次からはバレないようにする!

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