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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
151/172

148話 残り物の依頼

翌日、朝食を食べた俺達はハルバーレの冒険者ギルドにやってきていた。

あ、マグロについては飲んでいたらいきなり絡まれた(マグロ談)という話だったので、七輪の計は無しになりました。

大方酒に酔ったマグロが「なーっはっはっはっ!なーっはっはっはっ!」という感じで騒いでいたのが癇に障った感じなんだろう。

さて、マグロの話はこれくらいにして、今は冒険者ギルドだ。

依頼板の前は冒険者達で溢れかえっていて、どんな依頼があるのか見るのに苦労しそうだ。

やっとのことで依頼板まで辿り着けたので、貼られている依頼を確認する。

いくつか取られてしまっているが、中級の依頼で確認できた依頼は以下の通り。


[採取]シェルタートルの甲羅5個

[採取]ドリアードの蔓10個

[採取]魔水晶2個又は魔結晶200個

[採取]音妖精

[運搬]シャラーダ

[護衛]帝都ロムスカ

[護衛]小国群ラドミス

[調査]カパブの森未踏破地域の調査

[調査]キクケ湖の生態調査

[討伐]アーミージャッカル

[討伐]コカトリス

[討伐]ボムスライム

[討伐]キリングエイプ

[討伐]ジェネラルスケルトン

[討伐]グリードマウス


これはどうなんだろう?はずれしか残ってないんじゃないだろうか?

討伐系の依頼に関して言えば、上級に片足つっこんでいるような魔物ばかり。アーミージャッカルは4~6匹の群れで行動している。ブレードリカオンのように10匹以上で襲ってくるわけではないが、個体の強さで言えばブレードリカオンよりも強い。


コカトリスはあのコカトリスだ。石化攻撃をしてくるあれだけど、石化光線とかは使ってこない。狩り終わった獲物を石化して保存する特徴を持っているので、戦闘中に石化されるようなことはないと考えていい。ただ、耳を塞ぎたくなるハウリングを使ってくるので、注意が必要だ。


ボムスライムは衝撃を加えると爆発するスライムだ。ただ足が遅いので、遠距離攻撃があれば討伐に難しい魔物ではないので、討伐依頼に残っている魔物の中では最弱だ。「中級魔物の面汚しよ」である。加えて、爆発と同時に素材はもちろん魔結晶も砕け散るので、収入面で旨味のない事が不人気の理由だろう。


キリングエイプはタァマちゃんのような戦闘スタイル猿だ。敏捷性が高く、死角に回り込んで攻撃してくる厄介な奴だ。ガオーみたいなパワータイプにとっては天敵だな。


ジェネラルスケルトンは骸骨の魔物であるが、こいつの場合、他のスケルトンを率いているのでむやみに突っ込むと袋叩きになるだろう。


グリードマウス、こいつは移動がかなりゆっくりだが、射程内に入った獲物をなんでも食べる悪食っぷりだ。以前こいつに襲われた村が壊滅したことがあるので村食いとも言われている。緊急依頼になってもおかしくはないはずなんだけど、中級の依頼としてあるということは、今の所被害の少ないところにいるのだろう。それに成長すればするほど倒しやすくなるしな。理由としてはなんでも食べるが、許容量を越えると勝手に消滅するのだ。発生して人知れず消えていくグリードマウスも少なくないだろう。

そんな理由から無理して倒す必要もないので、一定のラインを超えるまでは進路がどこに向くか様子見ということなのだろう。


採取系はシェルタートルの甲羅にドリアードの蔓、魔水晶に音妖精?

最初の3つはわかるけど、音妖精ってなんだ?


「トリス、この音妖精の採取ってあるんだけど、音妖精って何?」


「妖精というのは精霊の亜種でして、実体化した個体になります。その中でも音妖精というのは風の精霊の眷属でして、綺麗な音を奏でることができる妖精ですね。」


「ふーん?それって捕まえていい物なの?」


「いいわけないじゃないですか。音妖精は風の精霊の子供のようなものです。子供を攫われて怒らない親がいると思いますか?なんでこんな依頼が冒険者ギルドで堂々と掲示されているのかを疑問に思いますよ。精霊と縁のある者なら絶対に受けない依頼ですね。」


そんなリスクがあるのにも関わらず手に入れたいと思ってる奴がいるってことだよな。音妖精になにかあるんだろうか?


まぁそれは置いておいて、護衛や運搬依頼はこの街に滞在している限りは受けないから見なくてもいいだろう。

となると、採取か討伐か調査を受けるしかないな。


「はいっはーい!」


「はいアリア。何か受けたい依頼があった?」


「私はこれ!このジェネラルスケルトンの討伐だけは受けたくないです!もし受けるなら留守番するから!絶対に留守番するからっ!!」


相変わらずアンデット・ゴースト系はダメなんですね。神聖魔法師なんだからちょっとは克服しなさいよ。

そんなことを思っている間に、横から手が伸びてきてジェネラルスケルトンの依頼用紙が依頼板から抜き取られた。


「悪いな。これは俺達が貰うぜ。」


腕の持ち主を確認すると、してやったりと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべている俺よりも年上そうなお兄さんがこちらを見ていた。

してやられていないのだが、なんで勝ち誇られているのだろうか?


「どうぞー!どんどん倒しちゃってね!絶対に1匹も残しちゃダメだから!!失敗とかしたらセリアル様の加護が無くなるんだからね!」


アリアはというと、そんなお兄さんの手を握り、凄い笑顔でブンブン腕を振りながら念入りに討伐の応援をしていた。そんなに嫌ですか。まぁ嫌がるだろうと思ってたから受けるつもりはなかったんだけどね。


「絶対だからね!失敗して私達に依頼が回ってくるようなことがないように徹底的にやっつけてね!」


お兄さんはというと、アリアに手を握られてなんか顔が紅潮している。おい、変な気を起こすなよ?アリアは俺のだ。


「お、おうっ!なんならあんたも一緒にくるか?あんたか、可愛いからな、お、俺が守ってやるぜ?」


「絶っっっ対嫌っっっ!!なんで私が行かないといけないの!?それはあなた達だけで討伐するの!仮に討伐できなくて逃げ帰るとしても、絶対に私達に助けを求めたらダメなんだからね!!」


アリア必死過ぎるだろう。

お兄さんは見事に玉砕してしまい、「が、頑張るよ」という力無い言葉を残して去って行ってしまった。アリアが拒絶したのは依頼に対してであって、お兄さんを拒絶したわけじゃないと思うのでそんなに落ち込まないでほしい。


さて、そうなると残った依頼の中で簡単そうなのはボムスライムかな?とりあえず他の人に取られないようにボムスライムの依頼用紙を引きはがす。ただこれだけだとガオー、マグロ、タァマちゃんの前衛組がやることがなくなってしまうので、もう1つくらい受けておこう。

キリングエイプはガオーとは相性が悪そうなのでコカトリスにするか。

2枚の依頼用紙を手に空いてそうな受付に並び、順番を待つ。


「次の方どうぞー。」


待つこと10分、俺達の順番になったようだ。


「これとこれをお願いします。はいギルドカード。」


「はい、お預かりします。コカトリスとボムスライムですね。皆さんのランクは・・・はい、問題ありません。受付しますね。わっ、過去に色んな魔物の討伐記録がありますね。リザードウォーリアにブレードリカオン、エルダートロントもですか。素材や魔結晶の査定、買取はあちらの窓口になります~。」


ちなみに俺は過去の世界でもっと沢山の魔物を討伐したりしていたのだが、冒険者ギルドカードは魔法の袋の中に収納していたので、記録は残っていないようだ。なんとなく今の時代に戻ったら問題になりそうだったからしまっておいたんだよね。


「あの、一つ伺いたいことがあるのですけれども。」


受付嬢が手続きを進めていると、トリスが受付嬢に質問を投げかけた。


「音妖精の採取という依頼なんですが、冒険者ギルド側はその依頼を出すことによる影響をきちんと認識しておられるのでしょうか?」


「あー、音妖精ですか。あの依頼主ってゴルスタ帝国なんです。ゴルスタに所属している当ギルドとしましては、拒否しづらいと言いますか・・・。」


「国からの依頼ですか・・・。音妖精が何をされているのかはわかりませんか?」


「はい、そうなんです。私共も音妖精を捕まえて国に引き渡せとしか言われていないので、どのような扱いをされているのかはわからないんです。申し訳ありません。」


しばし沈黙が流れる。


「はいっ、受付が完了しました。気を付けてくださいね!」


受付嬢は重くなった空気を打ち払うかのように声を張り上げて受付完了を告げてきた。

俺達もそれぞれギルドカードを受け取って、冒険者ギルドを後にすることにする。

トリスはまだ納得してないようだが、これ以上情報を引き出せないとわかったのか、渋々と着いてきた。



「トリス、音妖精についてはゴルスタが関わっている時点で俺達に出来る事はかなり限られちゃうよ。俺達だけでゴルスタに喧嘩売るわけにもいかないし・・・」


「そう・・・ですね。でも何をされているのかを調べられる範囲で調べたいです。まぁ、それは今後情報収集するとして、今は依頼ですね。ボムスライムはキクケ湖周辺に生息しているようです。最近数が多くなっているらしいですね。見つけたボススライムは全て討伐してほしいとのこと。コカトリスは南にある岩山にて目撃情報があるみたいですね。家畜が頻繁に襲われるようになったので討伐依頼が出されたみたいです。」


キクケ湖と岩山か。微妙に方角が違うな。岩山が南にあるのに対して、キクケ湖は北東だ。優先順位が高そうなのはコカトリスだよな。岩山から行ってみるか。


「コカトリスから先に討伐しちゃおうか。今日中に終わらなかったらボムスライムは明日に変更して、ついでにキクケ湖の生態調査も受けちゃおうぜ。」


それがいいですね。むしろ今日は時間が余ったとしてもコカトリスだけにして、キクケ湖調査も一緒にやってしまう方が効率がいいかもしれません。」


「ねぇ、私達って今日出遅れたよね?目ぼしい依頼はほとんど無くなってたけど、なんでコカトリスは残ってたのかな?見た感じそんなに討伐が難しい魔物じゃないよね?」


「それはコカトリスから取れる素材があまり高値で売れないからです。羽毛も土のような地味な色をしていますし、喉奥から取れる液袋に入っている石化液も討伐してしまうと生成されないからか、採取できる量が少量です。冒険者には不人気の魔物なんですよ。」


「なるほど、そういう理由かぁ。成功報酬分しか収入が見込めないのね。」


よし、コカトリスから狩ると決まったわけだから、畜産農家の為に岩山に行ってチャチャッとやっつけますかね。


健康診断で採血されたんですけど、スゲー痛かったです。

去年はそんなことなかったんですが、看護師にも当りハズレがあるんですかね?

ベテランそうなおばちゃんだったんだけどなぁ。

慣れてる分、雑になるんでしょうか?

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