147話 パーティ内ランクについて
部屋に荷物を置いて、俺達の部屋にガオー達を呼ぶと、この街でどう動くかを決める事になった。
「次の目的地はシルベスターの墓でいいんだよな?この先の小国群にあったはずだが。」
「あぁ、でもさ、そんなに急いでるわけじゃないじゃん。俺達の拠点を探すこともしないとだから、この街の周辺も見てみたいんだよね。だから俺としては少しこの街に滞在して、冒険者ギルドの依頼をこなしつつ、拠点探しもしてみたいかなと思ってるんだ。」
「あ、それ賛成ー。一応私達って冒険者だもんね。ちゃんとギルドの仕事をしないと評価悪くなっちゃうよ。」
「そうですね。キレースを出てからですから1ヶ月くらい依頼を受けていないことになりますね。1ヶ月程度で印象が悪くなることはないでしょうが、依頼を受けられる時は受けておいたほうがいいと思います。」
「それじゃ、しばらく滞在していくつか依頼を受けてみよう。ついでにガオーも冒険者ギルドに登録しようぜ。」
「おうっ!実はもう登録してんだよ。ほれ。」
「お前、いつの間に・・・って星5つじゃねーかっ!なんで俺よりランク高いんだよ!?」
「お前ぇがアリア達の事を監視してた時に暇だったからな。いくつか依頼をこなしといたんだ。」
「ぐぬぬ、俺よりランクが高いのが気に入らない。」
「まぁまぁ、ガオーがそれだけ頑張ったって事でしょ。いちいちケチつけないの。」
「なーっはっはっはっ!その通りさ!ヨーヘーはもっと広い心を持つべきだね!あと少しで上級冒険者になるこのミーのように広い心をね!!」
そうだった。この魚にも俺はランクで負けてるんだった。まぁランクを上げる努力はしていなかった事は認めるが、マグロより下というのは面白くないな。
冒険者ランクの話になったから一応ここでそれぞれのランクをまとめておこう。
俺:星4つ
アリア:星4つ
タァマちゃん:星4つ
トリス:星5つ
マグロ:星6つ
ガオー:星5つ
星4~6に収まっているから、カテゴリでは全員中級冒険者になるんだよな。
中級の癖に上級の魔物とか狩ったりしてたりするが・・・
でも中級というのは妥当なランクなのかもしれない。
俺とアリアなんて魔法有りならかなり戦える自信はあるが、魔法がなければ一般人に毛が生えたようなレベルだろう。
トリスは弓の精密射撃の腕が凄い。トリス程の腕の持ち主は過去でも早々お目にかかれなかった。射程範囲も魔法矢を使うようになってから飛躍的に伸びたし、懸念される1発の威力も、この前試した爆矢等を使えば補える。攻撃能力に関しては中級から逸脱しまくっている気がするトリスだが、接近戦は得意ではないので、接近されるとキツイかもしれない。
タァマちゃんは敏捷性が半端無い。すぐに見失ってしまって、後衛にとっては天敵だろう。接近されたら詰んでしまう。しかしまだ子供なので、経験が足りない面もあるし、幼さゆえに力が強くないという欠点もある。懸念される攻撃力については切れ味のいい忍者刀を作ったのでそれを使うことで少しは補助になるだろう。
ガオー、こいつは申し分なく上級にランクすると思う。腐っても天獣王だ。あの乱世を生き抜いただけのことはある。攻撃、防御共にバランスがいいのだ。四天王はどっちかというと特化型。天獣王であったこいつはバランス型って感じだったな。このパーティにおいても特化型ぱかりのメンバーの中で唯一バランスのいいオールラウンダーだ。今は星5つだがすぐに上級に上がるのは間違いないだろうな。
マグロは典型的な特化型だ。言わなくてもわかるだろうが防御以外に期待してはいけない。本人は奥の手であるウォーターショットを使うことで攻撃力もあると思いこんでいるが、所詮は水鉄砲レベルであり、石を投げた方がマシだろう。そんな防御しかないマグロはソロだとサッパリだろうが、パーティでならタンクとして力を発揮できるだろう。
こんな感じで自己分析というか、パーティ分析してみたけど、ガオー以外一芸に関しては上級クラスの実力はあるんじゃないかと思うが、他の部分が足を引っ張っていると考えれば中級が妥当とも言えなくも無い。
実際上級冒険者ってどんな感じなんだろうか?
星7つ以上の上級冒険者といえば、ハングーリさんとゲンダッツさんくらいしか会った事がないかもしれない。
中級冒険者の実力についてはオーク討伐の時に見ているからなんとなくわかるんだけど、上級がみんなガオーみたいな奴ばっかりだとしたらちょっと怖いな。
ランクの話は結局冒険者ギルドから打診がない限り上がらないので、考えすぎるのはやめにして、これからの直近の方針としては、少しこの街に滞在して、冒険者ギルドの依頼をこなす事に決まった。
方針も決まったので、一旦解散し、夕飯まで自由行動となった。
今は15時くらいなので、夕飯までは4時間くらい時間がある。
アリアとトリスは荷物の整理をするらしいので、タァマちゃんと一緒に散歩に行く事にした。
ガオーとマグロも誘おうとしたんだけど、すでに部屋にいなかったのだ。
ハルバーレの街をタァマちゃんと手を繋いでゆっくりと散策する。
途中で見つけた屋台で肉串を買って食べ歩きしたり、広場にある水場で水の掛け合いをしたり、小物屋さんでタァマちゃんに似合う髪飾りを買ってあげたりと、中々充実した時間が過ごせたのはうれしかった。
何よりとても楽しそうなタァマちゃんを見れたのが一番の喜びだ。
2人してニコニコ上機嫌で歩いていると、酒場っぽい店の前を通りかかった時に、陶器が割れるような音と共に、店の入口から人影が吹き飛んできた。
危なく当たりそうになったので、吹き飛んできた人影に向かってバリアを張る。
直後、ムギュという効果音が聞こえてきそうな勢いでバリアにぶつかった人はそのまま地面に崩れ落ちた。
まったく、イキナリ飛び出してくるなんて危ないじゃないか。
こいつは自分の意思で吹き飛んできたわけではないだろう。恐らく店の中にこいつを吹き飛ばした輩がいるのは間違いない。
大方酒に酔って喧嘩でもしたんだろうな。
俺が店の入口を見ていると、中から1人の男が現れた。
「あぁ?なんだぁ?兄ちゃんそいつの知り合いかぁ?」
こいつも恐らく酔っ払っているんだろう。まだ夕方だというのに顔が真っ赤である。そしてこちらに敵意むき出しで威嚇してくる。
酔っ払いに付き合っても面倒なだけだな。適当にあしらおう。
「いや、全然知りません。いきなりこいつが吹っ飛んできたもんだから何かと思っただけですよ。」
「そんなっ!?酷いじゃないか!ミーとヨーヘーは大切なパーティメンバーじゃないかっ!」
「こいつはそう言ってるが?」
「酔っ払いの戯言じゃないですか?」
「ヨーヘー!それは余りにも酷いじゃないかっ!ミーとは親友と言ってもいい間柄だろう!?」
うるさい黙れ。俺達を巻き込むな。ホントお前は酒が絡むとトラブルしか起こさないな。飲むなとは言わないが、他人を巻き込むような飲み方をするな。
「あぁん?何か文句がありそうな顔してやがんな。よし、兄ちゃんにも世の中の厳しさってのをわからせてやるよ。」
男は肩を回しながらこちらに近付いてくる。
これだから酔っ払いは・・・こっちが面倒を避けようとしてるのに態々絡んでくる。
文句ありそうな顔?あるに決まってんだろ。タァマちゃんとの幸せな一時に水をさされたんだぞ。気分が良かったから穏便に済ませてやろうと思ったが、ここまで絡まれると不快感の方が上回ってくる。
「おらぁ、歯ぁ食いしばれぇ!」
「『バインド』」
今にも殴り掛かってきそうな男を特殊魔法で拘束して動けなくする。
なんかギャーギャー騒いでいるが、聞く耳は持たない。魔力をかなり込めたアイスランスを男の真上に出現させた。直径3m、長さ10mはある氷の槍だ。
野次馬からどよめきが起こり始めたが、男は未だにアイスランスの存在に気付かずに喚いていた。
俺はわかりやすいモーションをして男の注意が真上に行くように仕向けた。
「・・・は?なんだぁありっっっ!?」
「おい、喧嘩売る相手はちゃんと選ぶようにしろよ?そうじゃないとこんな風に儚く命を散らす事になるからな。」
俺は魔法の制御を解放した。すると重力に引っ張られた氷の槍は男目掛けて落下を始める。
「ひっ、ひぃぃぃぃっ!?た、助っっ」
勿論男は動けない。バインドで拘束しているからな。
迫り来る巨大な氷の槍の圧倒的存在感を前に萎縮してしまい、なんとも情けない顔になっている。そりゃそうだ、俺だってあいつの様な状況なら同じ反応をするだろう。
さすがに殺すつもりはないので、アイスランスが男にぶつかる直前に男の真上に直径50cmのイレイズを出現させる。
数瞬後、イレイズに消されなかった部分のアイスランスが重い音を立てながら地面に突き刺さった。
人が氷柱に潰されたように見えた野次馬達から息を呑む声が多数聞こえた。
安心してほしい、殺してなんていない。いくらなんでもちょっと気に入らないから殺すとかいう短絡的思考はしていませんよ。イレイズでアイスランスに空洞を作って逃がしてあげてますよ。酔っ払い男は傷すら負っていないはずだ。たぶん。
ほら、良く見ると氷の中に元気な男の姿が見えるでしょ?あれ、何故かピクリとも動かないな・・・。当ってないよな?え?マジで?慌てて氷柱の中の魔力を確認すると、ちゃんと魔力を感じ取ることができた。死んでたら魔力は出ないから生きているということだ。どうやら恐怖のあまりに気絶してしまったようだ。ショック死じゃなくてよかった。
このまま氷像にしてしまうのも可哀想なので、氷柱を消し去ってやると、鼻につく異臭が漂い始めた。
異臭の発生源は絡んできた男からだ。どうやら彼は洩らしてしまったらしい・・・でっかい方を。
絡んできた相手に対してそこまで面倒はみれないので、男をその場に残して退散することにする。カブレちゃう前に目覚めないと後が大変だぞと心の中で忠告だけはしておいた。
さて、帰ったら楽しい楽しいお説教の時間だ。一応マグロからも事情は聞いてやるが、マグロに非があった場合はでかい七輪を作ってその上で正座の刑だな。




