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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
145/172

142話 和解

お待たせしました。

30分もするとマグロも落ち着き、俺の体力も回復してきたので、今度はアリア達と合流する為の行動をすることにする。

正直もうテレポートは嫌なので、俺が使える唯一の召喚魔法で運んでもらうとしよう。


「ゥゥゥゥゥウィノッチィィィィィッッッ!!ご飯の時間だよぉぉぉぉぉぉっ!!!」


10分経過


「お、きたきた。」


・・・・・ドドドドドドドド┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ッッッ


この後のパターンはわかっている!毎回呼ぶたびに跳ね飛ばされる俺じゃないぜっ!!

止まる気配のないイノッチを観察し、タイミングを見極める。そして俺に当る前にフライで空へと退避した。

マグロが下で絶望に染まった顔で俺を見ている。

許せ、今はそれどころではないのだ。


そして気になるイノッチはというと・・・

何故か俺の目の前にいた。

な、なにぃぃぃぃぃっ!!?なぜそこにいるっ!?

ば、バカなっ・・・イノッチが飛んだだとぉぉぉうっ!?

そして空中で回避する事が出来なかった俺は、イノッチのフライングアタックをダイレクトに喰らい、漫画の様に空のお星さまとなるのだった。




イノッチに馬車を引いて貰い、移動する事2時間。

俺はアリア達と合流することができた。

できたのだが・・・


「わっ、ネリルちゃん凄ーい!今剣が4本に見えたよー。」


「ふふふ、これも修行の賜物だ。」


「シュネーリルの剣は大した腕だぜ。過去で出会ってたら俺様の軍に迎えたいレベルだな。」


「そんな・・・妾など天獣王様に比べればまだまだ未熟です。・・・それと妾のことはネリルとお呼びください。」


「謙遜するこたぁねぇよ!実際大したもんなんだからよっ。それとネリルって言えばいいんか?だったら俺様の事もガオウって呼んでくれ。天獣王なんて呼ばれてたのは遥か昔のことだかんな。」


「ガオウ様・・・恐悦至極に御座います。」


「がっはっはっ!そんなに畏まんなって!ちゃんと呼んでくれる奴ってのは嬉しいもんよ。ヨーヘーとアリアなんてガオーって言うんだぜ?なんか微妙に違うんだよな。ったく人の名前はちゃんと呼べってんだよなー。」


「ご、ごめんね。なんかそっちで慣れちゃって。」


「がっはっはっ、まぁ今更だし、構うこたぁねぇよ!がっはっはっ!」


ていうか、お前がそれを言うな。お前だってヨーヘーって言うじゃねーか。正しくは洋平だっつの。ヨウヘイわかるか?ほら言ってみろ。


「まぁそんなことよりもネリルさんの髪ですが、とても綺麗ですよね。どんな手入れをしているのか教えてもらってもいいですか?」


「あぁこれか?これはだな・・・」


何これ・・・?3時間くらい目を離してる内になんでこんなに溶け込んでるの?凄く入って行き辛いんだけど・・・。

俺はこの中に入れるのか?さっき結構嫌われてたっぽいしなぁ。

登場したことで空気が壊れるのは嫌だなぁ。

マグロ・・・ハブられ者同士、俺と一緒に旅に出るか?


「お兄ちゃんっ!」


俺が木陰で疎外感を感じていると、俺の気配を察知したのか、マイエンジェルタァマちゃんが俺に気付いて駆け寄ってきてくれた。


「あ、ヨーヘー。戻ってきたの?おかえりー。」


「トロさんを見つけられたみたいですね。イノッチさんも一緒ですか。」


「おうっ、戻ったか。ヨーヘーよ。なんか腹減っちまったから飯にしようぜ。」


「・・・・・・」


くっ、やはり皇女様には警戒されている。

俺が登場したら表情が若干引きつったのを俺は見逃さなかった。

ふぅ、仕方ないな。さっき別れた時に比べて大分落ち着いてくれたみたいだし、こっちの話を聞いてくれるくらいはしてくれるだろう。


俺はこれ以上警戒させないようにゆっくりと皇女様に近づいていき、3mくらいの距離まで行ったところで行動を起こした。


「さっきはどうもすいませんでしたーーーーーっ!!」


それはそれは綺麗な土下座だった。体の中心に線を引いたら綺麗な線対称になっているはずだ。改心の土下座と言っても過言ではない。


そのまま謝り続けること10分。


「もうよい。お主の気持ちはわかった。先程ガオウ様達からお主のことを聞いて悪い者ではないということは理解しておる。それに先程の一戦は妾から仕掛けたもの。それで無様に敗北しておいてお主に謝らせるというのも格好がつかんでな。」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「それに先程は見苦しい姿を見せてしまった。その・・・出来れば忘れて欲しい。恐怖心が高まってしまうとあのような醜態を晒してしまうことがあるのだ。妾に兄上がいるのは知っているだろうか?実はな、その兄上は幼少の頃より稽古と言っては妾を打ちのめされていたのだ。兄上は加減せずに圧倒的な力の差を見せ付けてくるのでな。妾はそれが怖くて怖くて仕方が無かった。今でも抗えぬ力を目の前にすると身がすくんでしまう。兄上との稽古以外ではあの醜態は見せぬ物と思っていたのだが、お主の人外な強さを前に恐怖心が呼び起こされてしまったのだ。それよりもお主はなぜ士官せぬのだ?それ程の力があれば帝国であっても英雄になれるだろうに。その気があるなら妾が口添えしてやってもよいぞ。」


どうやら俺はトラウマを刺激してしまったらしい。

皇女様はトラウマを感じると幼児退行してしまうようだ。この事を知っているのは近しい人物だけだという。

人間どこに爆弾があるかわからないね。

それと、この皇女様の台詞から、もしかして帝国軍に誘われているのだろうか?

もしそうならしっかりと俺の考えを伝えておく必要があるな。


「軍に入ったら人殺しを強要されるじゃないか。人殺しを躊躇する精神は過去に捨ててきたけど、あくまでも俺や大切な人達に危害を加える奴限定にしたいんだ。自分から戦争に参加しておいて、殺されそうになったから相手を殺すってのは出来ればしたくない。」


「ふむ・・・、ガオウ様から話を聞いておったから、そうではないかとは思っていたが・・・。そういうことなら仕方ないか。ついでにこれも聞いておいたほうがいいか。実はさっきから気になっていたのだが・・・」


「ん、何かな?お詫びも兼ねて特殊魔法について意外なら大体答えるよ。」


「そこにいるのは・・・もしかしてベヒモスか?」


「あー、彼はイノッチさ!可愛いだろう。俺の弟みたいなヤンチャボーイさ!」


「そうか、イノッチと申すのか。・・・って、名前を聞いているのではない!」


「うん、ベヒモスだね。まだ子供みたいだけど、成長期みたいでどんどんでっかくなっていくなー。」


「ブヒュー!」


「・・・そ、その、危なくないのか?妾の知っているベヒモスとは殺戮の暴君等と呼ばれていて、破壊の代名詞なのだが・・・。」


「あっはっはー、大丈夫大丈夫。スッゲー危ないから!さっきも吹っ飛ばされたんだよね。危うく星になりかけたぜっ!まぁイノッチからしたらジャレてるだけだから死なないように加減はしてくれているんじゃないかなーと思ってるんだけど!」


「あ、危ないのか。それは大丈夫といっていいのか?」


「大丈夫だって思っておけば大丈夫なのさ。ダメな時は何をやってもどうせ手遅れだしね。イノッチはいい子だから安心していいと思うよ。被害にあってるのってほとんど俺だし・・・。タァマちゃんなんて背中に乗って遊んでるくらいだしね。」


「そ、そうか。」


若干打ち解けられたかな?皆のフォローに感謝したい。今回俺の対応も悪かったのは自覚しているので、しっかり反省するとしよう。

ガオーがメシメシとうるさいので、昼食を作る事にした。食事の為に馬車に移動し、俺とアリアはマジカルハウスで料理を作る事にする。皇女様が馬車内に入った時に驚いた事は割愛しよう。「これがあれば戦場で・・・」とかブツブツ言っていたが、そうやってすぐに軍事利用を考えるのはどうなんだろう。軍を預かる者としては正しいのかもしれないが、少しは肩の力を抜いた方がいいと思う。




昼食の献立はハンバーグだ。ハンバーグになった理由はガオーが肉肉とうるさかったからである。タァマちゃんも密かにカレーコールしてたけど、今日は我慢してもらった。まぁ夕飯はカレーかなぁ?カレー風味の料理でも許してくれるかもしれない。


「こ、これはっ!!」


皇女様のフォークが止まらない。相当気に入ってくれたみたいだな。もうハンバーグ5個目だし。見た目以上に食べる人なんだね。


タァマちゃんとマグロも対抗してハイペースで胃袋に収めている。タァマちゃんはそろそろやめようか。あんまり食べるとお腹壊しちゃうからね。

そんな中、圧倒的力量さを見せ付けているのがガオーである。

こいつはもう17個目だ。お前はちょっと遠慮って言葉を覚えた方がいい。お前が1分置きにお替りする度に追加のハンバーグを焼く俺やアリアの身にもなって欲しい。

クローンで増やしてもいいんだが、料理はなるべくクローン抜きで作りたいし、アリアも楽しそうにしてるから毎回焼いているのだ。

同時に5個ずつ焼いているのに1分で全部食うってどんだけだよ。ちゃんと噛んで食えよ。ハンバーグは飲み物じゃねーんだぞ。

こんなこともあろうかと、あらかじめ焼く前のハンバーグは50個程用意してある。

あとは焼くだけでいい状態なんだが、ガオーのペースを見るに、もしかしたら足りなくなってしまうかもしれない。

ガオー20個、皇女様、マグロが5個、タァマちゃん4個、俺、アリア、トリスが1個なので、残り13個だ。足りる気がしないな。俺もあと1個くらい食べたいし。


昼食を終え、馬車内で食休み兼寛ぎタイムを堪能している各々に向かい、俺は今後の方針を伝える為に言葉を発した。


「皆、これからなんだけど、まずは皇女様を帝国に送っていってあげないといけないと思うんだ。」


「ネリルでよいぞ。お主は帝国民でも部下でもないのだから敬称もいらぬ。はんばーぐの礼だ。あれは実に美味であった。」


「そう?じゃあ俺もヨウヘイって呼んでくれると嬉しいな。」


「うむ、ヨーヘーだな。ではそのように呼ぶとしよう。」


「・・・うん、いいけどね。わかってたし。正しい発音については諦めたよ。それでね、ネリルを送っていかないといけないわけだけど、解決しなくてはいけない問題があります。」


「解決しなくてはいけない問題?」


「そう・・・それは。」


「それは?」


「ここはどこだろうか?」


「「「「「・・・・・・」」」」」


「いや、適当にテレポートで飛んじゃったじゃん?まぁそこまではよかったんだよ。見えるところにしか飛べないんだから、そこに向かって飛べばいいだけだからね。でもさ、さっき昼食を食べてる時にイノッチが適当に爆走しちゃってさ、正直ここがどこなのかわからないんだよね。試しに300mじゃないや、3ムール飛び上がってみたんだけど、木しか見えないでやんの。そこでネリルに聞きたいんだけど、この辺の地域って帝国領?」


「いや、妾もよくわからぬ。シャラーダより北と東は帝国領だが、南と西は他国だな。」


ならばまだ帝国領という考えでいいのかな?俺がテレポートで飛んだ先は東方面だ。南にはガルーダル山脈があるから、イノッチが向かっている方向は東ということになるな。


「しかし、東側も7メールも行けば小国群に入ってしまうだろうな。」


ふむ。テレポートで飛んだ距離は勘だけど大体30kmくらいだと思う。そうすると小国群に入るまで40kmといったところか。まぁまっすぐ東に向かっているわけでもない。イノッチの気分次第で北に向かっている時もあったからさすがにまだ小国群には入っていないだろう。近くに帝国領の街があればいいんだけどなぁ。


「ねぇ、ネリルちゃんも私達と一緒に冒険しましょうよ。」


「魅力的な誘いだが、妾にも守るべき民達がいるのでな。すまないが帝国を離れるわけにはいかぬのだ。」


「そっか・・・、残念。」


「護衛達も心配しているだろうしな。それに妾が戻らねば皇女誘拐犯として帝国から追われることになってしまうぞ。だから妾は早めに帝国軍に戻った方がいいのだ。妾との友情もそこまでというわけではなかろう?気兼ねなく会話を楽しめたのは妾にとっても得難い時間であったぞ。」


「ネリルちゃん・・・。」


「まぁそんなわけでトリス、ここから一番近い帝国領の街ってどこかな?」


「現在地もわかってないのにわかるはずないじゃないですか。」


「そこはほら、エルフの不思議パワーとかで森に聞いてみるとか?」


「ヨーヘーはエルフをなんだと思っているんですか?木と会話が出来るとでも?」


「ほ、ほら、精霊に聞いてみるとかできないかなーって。」


「精霊に力を借りることはありますが、意思疎通が出来るエルフなんてほんの一握りです。」


むぅ・・・、仕方ない。街が見えるまでフライで上昇して街を探してみるかぁ。


「それじゃ、ちょっと空から街を探してくるよ。イノッチー!ちょっとだけ止まって待っててくれるかな?いい?絶対に置いていかないでよ?絶対だよ?フリじゃないからね?」


イノッチが停止したのを確認すると、俺はフライで上空に向かって飛び上がった。

正直さっき300mから確認した時に見えなかったので、それ以上高く上がっても視力の関係で見つけられるか微妙なんだよな。まぁホークアイを使って探せばいいのだけど、望遠した分探しづらいんだよなぁ。ほら、望遠鏡とかを覗いた時に対象物を見つけるのに苦労するじゃん?あの状態ですよ。


1km上空まで上昇し、注意深く街を探す事20分。

森の中に街っぽいものを発見する事が出来た。

周辺に道とか見えないんだけど、ちゃんと街として機能しているのか不安になるな。しかし現在地を知るのは重要な事なので、向かってみる事にする。

そのまま地上に向かい、飛び上がった場所に着地すると・・・

そこにはいるはずのイノッチの姿が見えなかった。


「あんなに動かないでって・・・言ったのにっ!」


俺はその場で力なく膝をつき、頭を下げるのだった。

今週の前半は猛暑日が続きましたね。いきなり暑くなったもんだから凄くダルかったです。

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