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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
140/172

137話 鳥人集落での夜

お待たせしました。

よろしくお願いします。

族長の計らいで寝床として空き家を2棟貸して貰った。小さな小屋だったので4人入ると手狭になるからと2棟借りたのだ空き家になっていたこともあって、かなり埃っぽかったが、窓や扉を全開に開けた上で鳥人の皆さんがバッサバッサ。

するとあら不思議、埃なんかが外に出て行くじゃありませんか。鳥人式掃除術は見ていて結構面白かった。


寝床にどうぞと用意された場所は床に柔らかい草が敷かれ、そこに羽毛を被せた物だった。この羽毛がどこから用意された物なのかは気にしないようにしよう。

試しに寝てみると、体を包み込むように沈み込んで、とてもふかふかだった。

どういう技術なのかは知らないが、羽毛がむき出しになっているのにこれらの羽毛はまとまっていて、例えダイブしたとしても散らばることは無い。これなら寝ている間に羽毛が口の中に入って、ペッペッってならずに済みそうだ。


小屋には3人ずつに別れて使用する事にした。このパーティは都合が良いことに男3人、女3人の構成だったからあまりゴネる事はなかった。唯一ゴネたのはタァマちゃん・・・ではなくアリアだった。曰く、俺と一緒が良いと。嬉しい事を言ってくれるね。俺もアリアと一緒の方が良い。でもそうなると誰かがマグロとガオーという濃いメンバーと一緒に寝ないといけないのだ。タァマちゃんの場合はマグロの緊張がMAXになって体調を崩しかねないし、何よりロリコン疑惑が発生した王様と同じ空間にするのはちょっと許容できない。トリスならそういった問題はないだろうが、なんか面白くないのに加え、年頃のお嬢さんを男共と寝かせるのってどうなのってことで却下。つまり、アリアには我慢してもらうということになったのだ。

マジカルハウス使えばいいじゃんって話なんだろうが、折角小屋を用意してもらったのにそんな真似をするのは失礼だからね。

そんなわけで、それぞれの小屋に移動した俺達は寝る準備をしているところである。


「・・・なんつーか、ムサイな。」


「一番ムサイお前が言うな。無駄に筋肉つけやがって。」


「おいおい、この逞しく強靭な肉体に惚れた奴等が、俺様に付いてきて奴隷解放に繋がったんだぜ?この筋肉は見た奴等に勇気を与えんだよ。」


「ハッ、なにが勇気だ。戦いすらせずに虫如きに尻尾巻いて逃げるような奴に勇気なんて貰えるわけないだろ。姑息な手で逃げやがって、天獣王が聞いて呆れるぜ。」


「あっ!そういえばお前ぇ俺様の意識を刈り取りやがっただろっ!」


「なーはっはっはっ!ガオウよ、ヨーヘーを許してやってほしい。さすがに悪いと感じたのか、意識の無くなったキミが後で腹が空かぬようにと料理を食べさせてあげてたのだよ。優しい奴じゃないか。」


「・・・ちょ、おい魚。今の話は本当か?ヨーヘーは俺様に何を食わせたんだ?肉だよな?俺様が食ってた肉のことだよな?」


「むぅ、魚ではない、トロだ。どうしてミーの仲間達はトリス以外は名前を憶えてくれないのだ・・・。ヨーヘーが食べさせていたのはあの美味だった料理の数々さ。あまりに詰め込むからミーの分が無くなるんじゃないかとヒヤヒヤしたもんだよ。」


「うぉおぃっ!!お前ぇふざけンッ・・・オゥエェェェェエッ」


「うわっ!汚ねぇ!!お前こんなとこで吐くんじゃねーよ!あ・・・見たくないっ。吐瀉物を見たくないっ!お前ちゃんと消化しとけよっ!!」


「ヨーヘーうるさい!何時だと思ってるの!?静かに寝ないと迷惑でしょ!」


「あ、すいません。って、なんでアリアがここにいるんだ!?」


「た、たまたまよっ!ちょっと散歩してたら通りかかっただけよ。」


「じゃあなんで枕を持ってて、尚且つ俺の寝床に入ってくるの?」


「ちょっと疲れちゃったから休もうかと思って。」


「帰りなさいっ!今すぐトリス達の所に帰りなさい!」


「ヤダーーーーッ!」


「ヨーヘー、ここにアリアが来ていませんか?」


「オェッオェッ、オェェェェエ!!」


なかなかにカオスな状況であった。

その後はトリスにアリアを回収してもらい、ガオーも顔色を悪くして気絶するように眠ったので、俺も明日に備えて眠ったわけだが。

皆が寝静まった夜中の事。


「ンンンッグゴォォォォッ、ンンンッグゴォォォォッ、キリキリキリ、ンンンッグゴォォォォッ」


「カァァァァグッ、カァァァァグッ、・・・あっ!あぁっ!?タ、タァマさまっお許しを!お許し・・・カァァァァグッ」


うるせぇ・・・。

なんなんだこいつ等は。特にマグロは何の夢見てるんだ。

さっき眠ったときはこのBGMが無かったから寝る事が出来たが、こんな状況の中もう1度寝ることなんて無理だ。つーか、この空間にいるだけでも俺の安眠が妨害されている気分になってなんかイライラする。気分転換にちょっと外を散歩でもしてくるかな。

俺は2人を起こさないように踏みつけながら小屋を後にした。


辺りは集落の皆さんも寝静まったのか、明かりはついていない。しかし、でかいお月様が出ているので、そんなに暗くは無かった。


「そんで?アリアはそこで何やってるの?」


俺達の小屋の外で壁に体重を預けて座るアリアを見つける。


「えっ!?あ、ヨーヘー?き、奇遇ね。こんなところで会うなんて。」


全然奇遇じゃない。その言い訳は苦しいと思うんだよ。


「眠れないの?」


「・・・うん、やっぱり私、ヨーヘーがいないとダメみたい。ごめんね?迷惑だよね。」


「迷惑じゃないよ。アリアに必要とされているのは素直に嬉しいからね。」


「ありがとう。もう1人じゃない。怖くないってわかってるつもりなんだけど、心の奥で安心出来ないんだと思う。トリス達を信用してないって訳じゃないんだけどなぁ。」


「そっか。俺はアリアが傍にいてくれる理由になるなら、その体質も喜ばしいと思っちゃったり。」


「ふふっ、実は私も。ヨーヘーとずっと一緒にいられる理由になるかな?」


「理由なんてなくてもずっと一緒にいるけどね。さて、ここうるさいから、ちょっと散歩しない?」


「あー、凄いよね、あの2人。特にマグロの寝言には驚いちゃった。何の夢見てるんだろう?笑ったと思ったら急に怯えだしたりするんだもん。ちょっと心配になっちゃったよ。」


アリアはいつからここにいたんだろう?あいつ笑ったりとかもしてたのか。その情報は俺も知らなかったぜ・・・。




俺達はお互いの手を繋いて散歩をしていた。婚約者なんだから当たり前の事と思いながらも、まだちょっと緊張する。アリアが時折ギュッと力を籠めたりしてくるので余計意識してしまう。

散歩を始めてから30分位経っただろうか。休憩がてら座りやすそうな岩に腰掛けた俺達だったが、不意にアリアが俺の肩に頭を乗せてきた。甘えんぼさんめと思い、話しかけようとすると。


「スゥー、スゥー」


あれっ!?寝ちゃった!?アリアさん?アリアさーん。俺この体勢だと辛いんだけど!?ちょっ、頭だけじゃなく体重まで預けてっ!?脱力し過ぎじゃありませんかーーーー!?

このままだとつっかえ棒にしている両腕がきっと痺れちゃうよ!このまま夜明けまでとかじゃないよね!?10分くらいで起きるよね!?ちょっと目を瞑ってるだけだよね!?おーーーい!







チュンチュン、チュンチュン

太陽が昇り、小鳥達が囀っている。静かだった夜の終わりを告げているようだ。

若干肌に冷たい朝特有の空気が身体を撫で、緩んでいる気を引き締めてくれる。なんて清清しい朝だろうか。

それぞれの家からは生活している者達が動き出す気配を感じ、グロスティアの一日が動き出したと実感させられる。

俺はこの動き出す時間がとても好きだ。


「ヨーヘー、もう起きていたんですか?」


そう、とても好きなのだ。人が動き出す時間が。待ち焦がれていたと言ってもいい。


「おはよう、トリスも早いね。」


「はい、おはようございます。アリアはまだ寝てるんですか?」


やっと来てくれた俺にとっての救世主。


「トリス、挨拶は終わりだ。お願いします。助けてください。もう、もう腕の感覚がないんです。アリアが起きてくれないの。」


「いつからその状態なんです?」


「うぅ・・・5時間くらいかなぁ?」


「え!?そんなに前からここにいたんですか!?目が覚めたときにアリアがいなかったからおかしいなとは思ってたのですが・・・」


「はぁ、アリア、起きてくださーいっ!朝ですよーっ」


「うみゅぅ・・・あと8時間~」


「それは寝過ぎです!あっ、ヨーヘー!?気絶しないでくださいっ!今すぐ起こしますからっ!ほらっ起きてくださいっ!」


優しさは 心の鎖 朝模様    洋平




気が付くといつの間にか小屋の寝床に運ばれていた。アリアとトリスが運んでくれたんだろうか?若干腕が痛むので、夢だったということはないだろう。


「あ、ヨーヘー。起きました?」


「おはようトリス。俺どれくらい寝てた?」


「あれから3時間くらいですよ。まだ朝と言ってもいい時間です。朝食食べますか?アリアが作ってくれたものが取っておいてありますよ。」


「うん、ありがとう。頂くよ。」


「ではアリアに持ってこさせますね。」


トリスが出て行くと、程なくしてアリアが料理を片手に姿を見せた。


「ヨーヘー、昨日はごめんね。」


「アリアは疲れはない?」


「うん、おかげさまで体調良好だよ。はい、これ食べて。」


「ありがとう。お?これはステーキ?珍しく朝からちょっと重いの作ったね。」


「あはは、ガオーがどうしても肉が食べたいって言うから作ってあげたの。多めに焼いたんだけど、ガオーってばお腹が空いてたみたいで凄い食べるのよ。ヨーヘーの分が無くなっちゃっうかと思ったよ。」


「ふーん、・・・うん、美味しいね。味付けも調度いいよ。」


「本当?ふふっ良かったぁ。」


それにしてもあの野郎。俺が寝てるからって朝から肉を要求するとは太ぇ野郎だ。肉食系の獣人だしやっぱり肉が好きなんだろうが、朝からは無いだろ朝からは。

あ~、そういえば昨日食った物全部吐いてたっけなー。そりゃ腹も減るか。今回は俺の責任もちょっとはありそうなので不問にしといてやるか。

それにしてもアリアの料理の腕はどんどん上がっていくな。俺もうかうかしれられない。料理の腕でアリアに抜かれてしまったら厨房に立たせて貰えなくなるかもしれない。それは俺にとって避けねばならない未来だ。俺もアリアに負けないように日々精進しなくちゃいけないな。

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