118話 仲間を集めよう
なぜか荒ぶっていたガオーを去なしつつ、山を降りた俺達は銀狼と呼ばれる人物を探すべくウンバリの町に向かっていた。
ウンバリの場所はガオーが知っていたので道案内をお願いして進んでいるわけだが、さっきからガオーがうるさい。
「ちょぉぉおぉっ!!マジかぁぁぁぁ!!ホヮアァァァァアア!!」
と、こんな具合だ。
ふざけてないでちゃんと道案内してほしい。
ガオーがナビゲートを放棄しているが、出発前に大体の位置は教えて貰っている。地名や町の名前は変わってしまったが、山の名前なんかは変わっていなかった為に、セリア達との旅の知識が役に立った。使えないガオーに溜息をつきつつ、大体のあたりをつけて向かっているのだ。
「お?町が見えてきたぞ。あれがウンバリかな?ガオーどうなの?」
「のわぁぁぁぁぁ!!」
この野郎、人の話を聞かないとは一体どういう教育を受けてきたんだ。失礼にも程がある。
「おい、質問に答えないと落とすぞコラ。」
「まっ、待ってくれ!!手を離さないでくれぇぇぇえ!!頼むっ!何でも言う事を聞くからっ!!」
俺の声聞こえてるんじゃねーか。ガオーは必死になって俺にしがみ付いてきた。ちょっ、爪が痛ぇ!
「爪が痛ぇよ!やめろっ!お前ちょっと離せっ!」
「嫌だっ!!絶っっっ対に離さねぇ!!嫌だぁぁぁぁぁっ!!」
ごっついライオン(♂)にしがみ付かれても嬉しくない。というか、なぜコイツが今こんなに必死なのかというと、俺達は今空を飛んでいるからだ。高さは地表から大体1kmくらいだろうか?探し人は奴隷だし、いつ死んじゃうかわからないので、なるべく急ごうという話になり、フライで目的地まで飛行中なのだ。飛び立ってからというもの、ガオーはずっとこんな感じだ。5時間くらい飛んでいるのに元気なもんである。しかし、このままじゃ会話もうまく出来ないので、一旦地上に降りるとしよう。
「ゼェッゼェッゼェッ、土だ・・・土があるぅぅぅぅ!!」
「ねぇ?どうなの?あれがウンバリで当ってるの?」
「ゼェッ、ゼェッ、あ、あぁ、間違いねぇ。あれがウンバリだ。」
「そかそか、それじゃあさっそく行って銀狼さんを探しますかねー。」
フラフラしているガオーが付いてくる事を確認し、ウンバリの町に向かうのだった。
「ようこそ、ここはウンバリだよ。」
「あ、どうもー。ちょっと聞きたいんだけど、この町にセリアルの子孫っている?」
「ようこそ、ここはウンバリだよ。」
「あ、はい。」
「ようこそ、ここはウンバリだよ。」
「ねぇ?おちょくってんの?」
「ようこそ、ここはウンバリだよ。」
「・・・・・・」
なんなんだよこいつは!!メモリ増設した方がいいんじゃねーのか!!
「ガオー、早速この町が嫌いになったんだけど、どうすればいいかな?燃やしちゃってもいいかな?俺の本気見る?凄いの出来るよ?例えばこの場所に大きな湖を作ってやるとかなっ!!」
「落ち着け、俺達はコイツに構ってる余裕なんて無ぇ筈だ。見ての通りコイツから情報を引き出すのは無駄だと思う。話の出来る奴を探そうぜ。」
ガオーに宥められて、俺達はその場を離れた。離れる際にウェルカム野郎に石を投げておく事を忘れない。ちっ、外れたか。
「銀狼の情報だが、ここは獣人奴隷に聞くのが一番早ぇ。人族は駄目だ。あいつらは俺みたいな獣人には碌な事を教えちゃくれねぇ。」
「それはガオーだけだよね?俺は大丈夫なんだよね?」
「あ?あぁ、そうだったな。ヨーヘーは人族だった。」
「よし、それじゃあここから二手に別れようか。俺は人族を中心に聞いてみる事にするよ。他にも調べておきたい事があるしな。2時間後にまたここに集合ってことでいいか?」
「わかった。じゃぁ俺は銀狼を探してみる。見つけたら一緒に会いに行こうぜ。」
「あいあい、それじゃまた。」
一旦ガオーを別れた俺は、町行く人にセリアルの情報を聞きだした。
どうやらこの町にはセリアの子孫はいないようだ。念の為にセリアル教会に赴いてセリアルの事や、彼女の言い残した言葉等を詳しく聞いてみた。ヨーヘーという名前について言い伝えられている事があるかも確認したが、そんなものはないとの回答だった。その答えを聞いてとりあえず一安心する。少なくとも教会には碌でもない戒律はないと見ていいだろう。あの女のことだ。やると決めれば徹底的に広めるだろうから、末端の教会であっても教えとして伝わっていることだろう。まぁセリアル教事態がセリアとはほぼ関係ない団体だったはずだ。たしか、セリアの子供だか孫だかが関係しているという記憶がある。子供のだとしたらユリアちゃんかタリアちゃん、アリド君になるんだろうが、ユリアちゃんはないだろう。あの子は俺の味方だったしな。そうするとタリアちゃんかアリド君、又はこの2人の子供ってことになるのかな?まぁその人物が教会には伝えていないのだとすれば、セリアの血筋を継ぐ者に受け継いでいくような形で伝えられている可能性があるな。
調査対象がセリアの一族限定になった事に安堵した俺は、調査を一旦切り上げてガオーと合流することにした。
「よ、もう来てたのか。早かったな。」
「よ、じゃねーよっ!!早かった。じゃねーーよ!!お前ぇが遅ぇんだよ!!2時間後って言ったろ!?時間通りに来てみりゃ、お前ぇの姿が見えやしねぇ。別れてから何時間経ったか言ってみろ!」
「えっと・・・5時間くらい?」
「そうだ!俺はここで3時間も待つ羽目になったんだぞ!!遅れたからにはそれなりの理由があるんだろうな!?」
調査に夢中になってしまい、つい時間を忘れてしまった。ガオー怒ってるなぁ、なんて言えば許して貰えるだろうか。うまい言い訳を考えないといけない。お婆さんが横断歩道で困っていたというのはどうだろう。駄目だ、この世界に横断歩道が無い。電車が混んでいたというのは?これも駄目だ、電車は混んでいても遅れないし、この世界にはたぶん電車も無いだろう。では・・・これしかないな。きっと納得してくれるだろう。
「・・・てへっ☆」
ブチッ
何かが切れる音が聞こえた気がした。
「ガァァァァッ!!」
うおっ!危ねぇ!!コイツ噛み付こうとしやがった!!
「何しやがる!危ねぇだろうが!」
「うるせぇっ!この3時間で溜まったイライラを発散させやがれっ!」
ワーギャーワーギャー
その喧嘩を止めてくれたのは町の警備をしている兵士だった。
「そこの奴隷!人族に牙を向けるとは何のつもりだっ!」
「やべっ!」
一気に冷静になった俺達はその場から一目散に逃げ出した。
追っ手を振り切って路地裏に入り込んだ俺達は、壁に寄りかかって呼吸を整えていた。
「ゼェゼェ、それでどうだ?銀狼について何かわかったか?」
あ、ヤベ。銀狼について調べるの忘れてた。セリア関係の情報収集に偏ってしまったな。これは正直に話したら怒られそうだ。
「はぁはぁ、いや、有力な情報は得られなかった。(セリアについては)かなり粘り強く情報収集したんだけどな。そっちは何かわかった?」
「そうか・・・やはり人族は獣人のことなんてどうでもいいのかもな。こっちは銀狼を見つけたぜ。そいつと話してみて、奴隷から解放してくれるなら手を貸してくれると約束してくれた。」
「そうか、んじゃ早速行くかね。」
なんとか誤魔化せたみたいだ。
ガオーの案内で連れてこられた場所は大きな屋敷だった。たぶんこの町で一番大きい屋敷だろう。
「ここに銀狼がいるんだ。裏から中に入れる場所があるから、日が沈んだら中に侵入しようぜ。」
日没まであと30分くらいだろう。それまで身を潜めて暗くなるのを待つことにした。インビジブルを使えば待つ必要は無いとも考えたが、こういう潜入ミッションも面白そうなので、ガオーの指示に従っておいた。
辺りが暗くなったので、裏手から屋敷の敷地内に侵入した俺達は、銀狼がいるであろう奴隷小屋に向かっていた。
「なぁ、ところでその手に持っている箱はなんなんだ?」
「ん?これか?これはダンボールといってな。潜入には欠かせないアイテムなんだ。こいつの性能はというと、見張りが巡回していたとしても、これを被っていれば見つからないという優れものだ。」
「そういう魔道具なのか?そんなのが置いてあったら違和感しかないと思うんだが・・・。」
「お前は何もわかっていないな。これはそういう物なんだよ。」
「はぁ、まぁいいや。しっ、ちょっと待て・・・」
屋敷の角の部分でガオーが止まり、屋敷の壁から頭だけ出して、俺からは死角になっていて見えない場所を確認していた。すると確認が終わったのか、ガオーがこちらに振り返り、指を2本立ててピースサインをしてきた。ふぅ、こんな時に・・・仕方ないから俺もガオーに飛びっきりの笑顔付きのピースして応えると、ペシッという暴力と共に俺の耳元に顔を寄せて囁いてきた。
「(この状況でお前に愛想振りまくわけねぇだろっ!?違ぇーよっ!見張りが2人いるって事だよ!)」
だったらそう言えばいいのに・・・、
ぶたれた事にちょっと不貞腐れながら、俺もサードアイで視覚を飛ばして周りを確認する。
すると見張りの2人はこちらには気付かずに、段々離れていくのがわかった。2人は話に夢中になっているらしく、あんまり周囲を警戒していないようだ。なんとなくチャンスっぽいので、その隙を突いて、奴隷小屋の前まで一気に移動すると、奴隷小屋の中に複数の気配があることを感じ取れた。一応周囲に注意しながら、俺とガオーは奴隷小屋に身を滑り込ませた。
猫の日更新に間に合いました。222にあわせたかったので、投稿時間もたぶん22時22分です!にゃー
追記、22時23分でした・・・一生の不覚!!orz




