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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
天獣王編
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117話 ぼくのかんがえたさいきょうの・・・

次の日、ベッドから身を起こしたが顔色が優れない。


「ふぅ・・・あれからユリアちゃんのことを色々考えてて、あんまり眠れなかったな・・・。」


気にならないという方がおかしな話である。俺の事を慕ってくれていたユリアちゃんだ。俺も実の娘のように可愛がっていたしな。ユリアちゃんは小さい頃から、将来は俺のお嫁さんになってくれるとよく言っていたし、俺に相応しいレディになる為に頑張っていた良い子だった。そんなユリアちゃんを微笑ましく思ったし、俺も最高の愛情を注いでいたつもりだ。大きくなってからも俺のお嫁さんになるという子供の頃の目標を曲げる事は無かった。アリアという恋人がいると伝えた時も、それでも構わないと一歩も引かずに、俺を慕い続けていたのには焦ったけどな。あの子はとても一途な子だったのだ。そういう点ではセリアとユグドの性格をよく受け継いでいると思う。そんな子に別れの挨拶もせずに俺は姿を消してしまったのだ。絶対に俺を探すに違いない。

セリアの手紙には俺を追いかけたと書いてあったけど、怪我なんかはしていないだろうか?病気とかになっていないだろうか?無事でいてくれてただろうか?別れてから600年近く経ってしまっているから生きている事は・・・ないだろう。

・・・幸せな人生を過ごしてくれたらいいな。

ユリアちゃんについては今更もうどうしようもない。わかってはいるんだけど、やるせない気持ちで一杯になる。


気持ちの整理をつける為に、布団に包まって色々考えている内にまた眠ってしまったらしい。

軽く風呂に入ってサッパリしてからマジカルハウスの外に出ると、地面に横になっていたガオーがムクリと起き上がった。


「よぉ・・・やっと起きたのかよ。待ちくたびれたぜ。」


地面に寝ていて体は痛くないんだろうか?そもそもなんでこいつは地面に寝転がってるんだ?マジカルハウスの中に入ってくればいいのに。

いや待て、俺は昨日ユリアちゃんの事で頭がいっぱいで、休んでから頑張ろうとだけ告げて1人で引っ込んでしまったんだったな。となると、ガオーはマジカルハウスの中に入らずに休むしかなかったのだろう。なんか悪いことしてしまったな。


「あぁ悪いね。腹は空いてないか?」


「大丈夫だ・・・って言いてぇところだが、実は腹ペコだ。まぁ空腹には慣れてるからどってこたぁねぇけどな。」


「ん、それじゃこれから飯作るから、この袋の中に入れよ。少し時間かかるから風呂・・・水場があるから体洗ってきな。」


怪訝そうな顔をしたガオーの背中を押して、マジカルハウスの中に押し込むと、俺は朝食の準備をすることにした。

マジカルハウスの中に入ったガオーは「なんじゃこりゃ!?」と驚いている。

ふふふ、俺の自慢の家だ。存分に驚くがいい。出来れば案内してあげたいところだが、俺は朝食の用意をしなければいけない。

なので、ガオーを風呂場へ案内だけして、朝食を作り始めた。

風呂場から「なんじゃこりゃーーーっ!?」いう声が聞こえてきたので、してやったりな気分になりつつも敢えてスルーで料理を作り続ける。


朝食が出来上がった頃に、タイミングよくガオーが風呂からあがってきたので、食卓に料理を並べた。今日のご飯はウィンナーとオムレツだ。朝食だしな。焼き魚にしようかとも思ったんだが、ライオンだし、肉がいいだろうと思ってウィンナーにしたんだ。


ガオーは主にウィンナーをよく食べる。やっぱり思ったとおりライオンっぽいので、肉食なんだろう。でも米も食べてるから肉オンリーってわけでもなさそうだな。そういや昨日もラーメンを何杯も食ってたな。


朝食を食べながら、今後の予定について話をすることにした。


「俺の目標である国造りだけどよ。まず戦闘力の高い奴が欲しいんだよな。なんだかんだ言っても、今俺達に一番必要なのは武力だからな!」


「ん?力でねじ伏せていくつもりなの?」


「おうよっ!生き物ってのは強ぇ奴に従うもんだろ?つまり一番強ぇ奴が世界の王になれるわけだ。」


の、脳筋め・・・


「力だけじゃ解決できないこともあるでしょうよ。」


「そうか?大体の事は力で解決できると思うけどなっ!」


うーん、まぁ言いたいことはわかるよ。地球だって皆が大人しくしてるのは警察や軍隊という存在がチラつくからだろうし。ペンは剣よりも強いという言葉があるけど、それも結局はそのペンによって剣を動かす力があるからだろう。

でもなぁ、平和な日本育ちの俺としてはあんまり認めたくない理論なんだよなぁ。


「他を寄せ付けない圧倒的な戦力でもって恐怖政治国家にでもするつもりなのか?」


「おっと、勘違いするなよ?俺は俺の庇護下にある奴等を力で押さえつけるつもりはねぇよ?それじゃ主人が変わっただけで奴隷と同じだからな。俺が牽制し、力で押さえつけたいのは、獣人を迫害する奴等に対してだ。俺達が圧倒的な力を持ってれば迂闊な行動なんてできねぇだろ?」


獣人を迫害する奴等・・・か。まぁガオーは獣人だから獣人視点になるのはあたりまえか。この時代の獣人がどんな扱いか見てないからなんとも言えないけど、人族との立場を入れ替えたいっていうなら協力を考える必要があるな。


「最初に言っておくけど、その力でもって逆に人族を迫害したり、奴隷にしたりして立場を入れ替えようっていうなら俺は協力しないからな。この時代の案内役なら別にガオーじゃなくてもいいわけだし。」


「は?何言ってんだ?人族を奴隷に?そんなことしたら今度は人族側に俺みたいなのが出てきちまうだろ?そんなの負の連鎖になるだけだっつーの。獣人だけを優遇するつもりはねぇよ。人族にだってお前ぇみてぇに良い奴がいるのを知ったし、獣人族にだって殺したくなるような奴がいることもあるからな!種族で差別するつもりはねぇさ。・・・まぁ、ちょっとは獣人を贔屓しちまうかもしれねぇが、そこは俺が獣人だってことで少しは目を瞑ってほしいけどな!」


ガオーがそういう考えなら大丈夫か。ちょっとくらいの贔屓なら人としてしょうがないよな。むしろその辺を正直に話してくれて逆に安心した。俺だって世界中の人が困っている時に、俺にそれを助ける力があった場合、日本人をちょっとは優先しちゃうと思うしな。同族をちょっと贔屓してしまうのは仕方ないだろう。


「オーケー。そういうことなら協力しよう。まずは強い奴を集めるって言ってたけど、アテはあるの?」


「おうよっ!目を付けてる奴等がいるんだ。まず狼族だな。こいつらは頭も良いし、連携なんかもうまいから、味方になればかなりの戦力になる。中でもウンバリの町にいる『銀狼』って呼ばれてる奴が飛び抜けてるらしいから、是非とも仲間にしてぇな。あとは象族の奴等がスゲー力持ってるし、魔族も強ぇらしいからこいつ等も味方にしてぇ。そうだ、蜥蜴族の奴等も捨てがたいな!あとは制空権も取りてぇから飛べる種族がいると便利だよな!だからまずこいつらを優先的に解放していきてぇんだ。それと・・・」


ガオーがよくしゃべる。ぼくのかんがえたさいきょうのぐんだんって感じでとても熱く語っている。奴隷時代にストレス発散に妄想していた構成なんだろう。聞いてなくてもよさそうな感じだから、そっちの計画はガオーに任せるとして、俺の身の振り方について考えよう。

ガオーには協力する。まぁこれはいいだろう。長い事セリア達と旅をしていて、わかったことがある。それは俺って結構強いってことだ。あの時代でも魔法に関して言えば、俺やユグドのような魔法を使える奴はいなかった。俺やアリアはミイ師匠から魔法を教えて貰ったけど、ユグドの奴は独学らしい。あいつは天才という奴なんだろう。ミイ師匠は誰から教わったんだろう?ユグドと同じ様な考え方だったから、もしかしたらユグドの弟子だったりしてな。・・・あれ?なんか引っ掛かる。まさかな。まぁこれは後で確認すればいいだけのことだ。

つまり何が言いたいかというと、俺は魔法師としてなら世界トップレベルの実力だということなのだ。身体能力は飛びぬけているわけじゃないので、最強というわけではないけどね。魔法ならば遅れを取るという事はあまりないと思うのだ。新魔法もいくつか開発したしな。「ざ・わぁるど」がいい例だ。あのチート級の魔法をいくつか用意してある。強力なだけあって、ホイホイ使えるようなものでもないが・・・。

そんなわけで魔法に関しては自身があるので、俺がガオーに協力することで、奴の力になる事は間違いないだろう。ディスペルで奴隷紋も消せることがわかってるしな。

まぁ成り行きに任せてやっていくことになるんだろうなぁ。ガオーのことはまぁ風任せな感じでやるとして、俺にとって最もやらなくてはならない事。それはセリアのアホが子孫になんて伝えているかを確認することだ。あ、なんか寒気が・・・ごめんなさいアホじゃないです。すっごい美人です!マジ女神様ー!

碌でもない家訓については、時間が経過し過ぎていることもあり、今更焦っても仕方の無いことだから、行く先々で情報を集めて行く事になるだろう。そして俺に不都合な家訓や教えがあったら、その存在を確実に潰す。なぁに、タイムリミットはあと400年もあるんだ。それまでにはなんとかなるだろう。・・・あまり子孫が多くないといいなぁ。信者には伝えてないよね?・・・ねぇセリアわかってる?俺とアリアがラブラブしてなかったら、ユグドはたぶん過去に戻れてないんだからね!!その辺の事をちゃんと理解して、碌でもない家訓とか教義とか、俺に対する嫌がらせとかしてるんじゃねーぞ!?


「・・・っていう感じで計画してるんだよ。」


「え?あ、うん。それでいいんじゃないかな?」


いつの間にかガオーの話も終わっていたようだ。


「・・・お前今の話聞いてた?」


ギクッ


「あ、当たり前だろっ!飯食い終わったらさっそく出発するぞっ!えーっと最初はなんだっけ?あ、そうだ狐族の解放だったっけ?もふもふ楽しみだなぁ~。」


「違ぇーよっ!『銀狼』だよっ!何聞いてたんだよお前ぇぇぇぇ!!!」


「おー、なんか強そうな名前だな。んでどこにいんの?」


「ちくしょぉぉぉぉぉおおっ!!」


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