107話 セリアを探せ
「身分証を提示しろ。」
いかにも兵士やってますというような装備のマチョメンに、街に入ろうとする俺達の行く手を阻まれた。
「野営中に賊に襲われてな。荷物を取られてしまった。その中に身分証もあったんだが。」
「そうか、それは災難だったな。では名前と出身を言ってくれ。それと入街税で50ハッヘ必要だ。」
「名前はユグドだ。そいつはヨーヘー。出身はキレースだ。あとすまんが金も荷物と一緒に盗られてしまったから、今手元に金がないんだ。」
「金が無いか・・・まぁ今回は仕方ない。それとキレース?キレースとはどこだ?」
「ロイト王国のキレースだ。」
「ロイト王国?なんだそれは?」
ユグド・・・こいつはバカなんだろうか?ロイト王国は千年前には無かったはずだ。それを言ってもわかるわけがない。平安京で東京から来ましたーって言ってるようなもんだ。てかここ本当に千年前なんだろうか?聞いてみるか。
「あの、すいません。今日って何年の何月何日でしたっけ?」
「む?1192年1月13日だが?」
良い国ね。・・・1192年!?え?何?これ過去じゃなくて未来に来ちゃったんじゃないか!?あれユグドさん?すげー汗かいてるけど!?
ということはアリアに会う為には過去に行かないといけないって事かよ!・・・この時代が未来だとするとアリア達はもう・・・死んで・・・いやいやいや!まだ未来と決まったわけじゃない!この門番がボケてる可能性もある!
「どうした?顔が真っ青だぞ?」
「あ、あの・・本当に1192年で合ってます?セリアルドール暦1192年?」
「なんだ?お前等外人さんか?変な暦を使ってるんだな?セリアルドール暦なんていうのか。そんなの聞いた事もないぜ。相当な田舎国家からやってきたんだな。いいか?セリアルドール暦が今何年なのかは知らんが、この国じゃルドール暦ってのを使ってるんだ。それで今はルドール暦1192年ってわけだ。」
お、脅かすなよぉぉぉ。てかルドール暦の1192年っていつになるんだ?
ユグドを見るとあからさまに安心した表情をしているからたぶん千年前には来てるんだろう。まぁよく考えたら、さっきサーチでセリアさんを見つけてるんだから、過去だろうが未来だろうがユグドの探し人はここにいることは証明されているんだから、ユグドがそんなに焦る必要はないよな。
「しゃーない、通っていいぞ。悪人には見えないしな。その代わり街に入ったら役所に行ってすぐに身分証を作れよ。これは登録料に必要な金だ。稼いだら返してくれればいい。期待しないで待ってるから。」
門番さんすげーいい人だった。門番としてその対応はどうかと思うが今の俺達からすればラッキーだ。それとさっき悪人には見えないとか言ってたけどそこのユグドは数え切れないくらい人殺してますよー。大犯罪者ですよー。俺だって貴族殴ったからたぶん犯罪者だろうけどね!
それと都合の良い事にこの時代の金も手に入ったしな。現物さえあればクローンでたちまち金持ちよ。くくく。
「なんかお前悪い顔してんな?犯罪者じゃないだろうな?」
「えっ?ち、違います違います!ほ、ほら盗賊に襲われて碌に眠れなかったから疲れてるんですよ!」
「そうか?まぁいい。おい!お前等!この2人を役所まで案内しろ!身元不明者だから役所で身分証作るまでは見張ってろよ。」
あ、やっぱり監視つきますか。まぁそうですよね。
3人の兵士に連れられて街の中を歩いている。町並みは道は石畳で建物は一般的に木製だ。しかし文明が発達してるのかキレースに比べてもしっかりした造りであり、当たり前のように色々な魔道具を目にする。しばらく町並みを観察しつつ歩いていると一際大きな建物に向かっている事がわかった。この建物は木材と石材を組み合わせて造られたしっかりした建物だ。たぶんあれが役所なんだろう。その予想は当っていたらしく、兵士に連れられてその建物の中に入ることになった。
中はオフィスみたいになっていた。なんというか日本の役所みたいな感じ。カウンターに受付の人がいて、その後ろで色んな人が働いている。
俺達は仲をキョロキョロ見回しつつカウンターの1つに連れられていく。
「身元不明者を連れてきた。あとは引き継いでいいだろうか?」
「はい、ご苦労様です。お引き継ぎ致します。」
頼むと言った兵士達は俺達を残して役所の入口付近まで行き、こちらを見ながら待機している。
「ルーメンス市役所へようこそ。お二人は身分証の発行でよろしかったでしょうか?」
「はい、お願いします。」
その後、名前や出身地等の簡単な質問を終えて問題が無かったので外国人用の身分証を発行してもらえた。
外国人用の身分証は10日以上滞在する場合は10日を越える前に更新しないと不法滞在で捕まるらしい。定住する場合は申請が必要らしい。
まぁそれはともかく無事に身分証を手に入れたわけだ。監視役の兵士さん達は俺達が身分証を手に入れた時点で帰っていった。
俺達は今2人でルーメンスの街を歩いている。
「さて、これからどうするかね?」
「セリアを探す。この街にいるんだろう?もう1度探してみ・・・ちょっと待て。お前何を食っている?」
「ん?この串焼きか?さっきそこの露店で買ったんだ。何の肉かは知らんけど、結構イケルぞ。」
「買ったって・・・金はどうしたんだ?あの門番がくれた金は身分証発行料でピッタリ使ったはずだが?」
「あぁ、その金を魔法で増やしたんだよ。」
「ふ、増やした?ど、どういうことだ?」
「ほら、ここにさっきの金があるだろう?これを・・・『クローン』・・・ほらな。」
「なっ!お前それっ・・・特殊魔法だろ!俺も研究していたがまだ完成してない魔法だぞ!むぅ、実際に見ると反則級じゃないかっ!教えろ!俺にもそれを教えろっ!」
「えー、この魔法はあんまり広めない方がいいってアリアに言われたしなぁ。」
「いいだろ!?誰にも教えないから!なっ!教えてくれよ!俺もその串焼きが食いたい!」
「んー、前向きに検討するよ。ほれ、この金やるから買ってこいよ。」
「なんか教える気のない返答が気に入らないが、後で絶対教えろよ!?代わりに俺も俺が知ってる知識や魔法を教えてやるから!」
「んむ、善処する。」
「絶対だからな!」
俺から金を受け取ったユグドは俺と同じ串焼きを買いに露店まで走っていった。
串焼きを頬張りながら並んで歩く男2人。ワイルドだねぇ。
「んでさ、さっき言ってたルドール暦1192年って結局いつなの?」
「ルドール暦1192年はセリアルドール0年と一緒だ。セリアの手紙に書いてあった。」
「おぉー、ってことはこの時代にはセリアル様もいるわけだ。会えるなら会ってみたいなぁ。アリアはご先祖様に心酔してたからなぁ。再会した時に良い土産話になりそうだぜ。会えたらサインとかもらえるかな?会えたら頼んでみよーっと。ついでに写真も撮ってやろう。」
「ん?セリアルに会いたいのか?安心しろ、確実に会える。なんと言っても俺が探してるのはセリアルだからな。」
「はぁ?お前が探してるのってセリアさんだろ?セリアル様探してどうするんだよ。」
「そのセリアル様が俺の探しているセリアだからだ。」
「はぁぁぁぁっ!?」




