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いっちゃん(第二部)  作者: Thomas C. Knitter


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第二十六話「いっちゃん、はじめて給料をもらう」

昭和二十八年。

工場の作業着に身を包んだいっちゃんの新しい生活が始まりました。

昭和二十八年。

私は、無事に就職試験に合格し、広島県の北部にあるG社の製糸工場で働くことになった。

ほんとはT社に就職したかったが、「片親はダメ」と門前払いされたとき、悔しいというより、「これが私の運命なのだ」と思って前に進むこにした。いや、それしか道はなかった。


G社で最初に配属されたのは、繭を供給する仕事だった。繭箱を一輪車のような台車に積み、繭糸をほどく作業者たちにひたすら配って歩く。一日に七~八キロは歩くと言われたが、体力だけは人並み以上に自信があったので、へこたれずに働いた。

朝の工場は、湿気と熱気と繭の匂いがまじり合い、まるで大きな生き物の腹の中で働いているようだった。汗をかきながら繭箱を運ぶ私は、ふと伯母に叱られながら畑や家の仕事をしていた子どもの頃を思い出していた。

――あの頃の重い桶より、こっちのほうがずっと楽じゃ。

厳しく育てられた日々が、こんな形で役に立つとは思いもしなかった。


こうして一ヶ月が経ち、初めて給料をもらった。

これまでひたすら働いて生きてきたが、その報酬としてお金をもらったことはなかった。私は工場の人と一緒に給料袋を受け取った時は何とも思わなかったが、後で袋の中の現金を見た時、ちょっと感動にも似た気持ちになった。


大した額ではなかったが、このお金の一部を伯母に送ることにした。

お礼状に「私が初めてもらったお給料です。少しだけ送ります」と書いて送金した。

伯母からの返事が来て、

「ありがとう。じゃが給料も少ないんじゃから無理するな。体に気をつけるように」

といったことが書かれていた。

私は、伯母から認められた気がして、少し大人になった気分になった。

「これからは自分で稼いで生きる」

と心に誓った。


(つづく)

自分の汗と時間と引き換えに手にした、初めての給料袋。

その中に並ぶ現金の重みは、これまでのどんな言葉よりも、いっちゃんに「生きている実感」を与えてくれたのかもしれません。

さあ、自分でお金を稼げるようになったいっちゃん。

次はどんな「楽しみ」を見つけるのでしょうか。


明日もお楽しみに。

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