第二十一話「いっちゃん、中学生になる」
伯母の家で暮らし始めて三年。
昭和二十五年の春、いっちゃんは中学生になりました。
——それは「自分の人生が動き出した」と感じた最初の春でした。
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主題歌
「ポートレート」
真新しい制服
桜が笑顔で出迎える
まだ幼い足どりで
頼りないけど
ポートレートに 写った瞳は
強くまっすぐな想い
未来を目指し 歩いてく
今の自分を 切り取った一秒
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伯母はコノブという名前だった。
コノブ伯母には旦那の福一さん(そう、私を九州まで迎えにきてくれた伯父さんである)と三人の息子がいた。
私の母が六人の子どもを産んで、みんな女の子だったのに対し、母の姉は三人の男の子をきっちり産んでいたのである。
長男の正夫は私より7歳上。歳が上すぎてあまり話すことはなかった。
三男の良造は一つ年下だったが、ヤンチャでよくイタズラもされたので、私はあまり好きにはなれなかった。しかし、一つ年上の次男の善昭君とは不思議と仲良く話せた。
当時としては男児を出産すればその家の嫁として認めてもらえるといった風潮があったので、伯母は母に向かって、
「アヤ子は男の子を産まんかったけぇ、つまらん」
とよく言っていた。
私は、この気性の激しい伯母の家で、炊事洗濯から畑、田んぼの手伝いと全てのことを教わった。
その生活が三年も続けば、大抵のことは一人でできるようになった。
そして、昭和二十五年。
桜の咲く今日、私は中学一年生になった。
入学式の後、教室に入ると、同じ小学校からきた同級生もいたが、他の学校から来た子が半分以上いたので、私は少し緊張した。
担任の男の先生も数学担当でとても厳しそうだった。
先生から、最初なのでみんな自己紹介をするように言われ、生徒が順番に自分を紹介した。
私は、自分が放浪してたことや実の家族と一緒にいないことなどはあまり話したくなかったので、当たり障りのない自己紹介をした。
ホームルームが終わって、解散になった後、違う小学校から来た同級生の女の子に声をかけられた。
「上山さん、ずっと放浪してたんだって?」
「え? なんで知っとるん?」
「上山さんと同じ小学校から来た子に聞いたんよ」
「そうよ。それが悪いん?」
「悪うはないけど、自己紹介で気取って喋ってたから、ほんまのこと、言ったらええのにって思っただけよ」
「なに〜い!」
私は自分の生い立ちを揶揄われたと思って、その子に飛びついた。
「何するん、離してぇや」
その子は逃げ出した。
校庭の横に山が張り出しており、追いかけてくる私に慌てた彼女はその山の急斜面を登り始めた。
私は後ろから、駆け上がって、その子の手を捕まえ、そのまま急斜面から引きずり落とした。
そう、一人で生きていくことばかり考えてきた私は、かなりのがんぼ(きかん坊)だったのだ。
(つづく)
いつの間にか、「がんぼ」 になっていた、いっちゃん。
新しい学校生活は、波乱の幕開け。
果たしてどうなることやら。
明日もお楽しみに。




