第三十一話「いっちゃん、仕事と高校を辞める」
昭和二十九年夏。
一年三ヶ月ぶりに伯母さんに家に戻ったいっちゃんの心は、ぽっかり穴が空いたようになっていました。
昭和二十九年夏。
一年少し働いた私は、弱った心臓のせいで、伯母さんのうちで療養していた。
伯母さんは、病気になって帰ってきた私を不憫に思ったのか、
「女の子にそんな教養なんかいるもんか、体壊すまで頑張らんでええ。仕事をせんでもここで家事をやりながら体を治しゃあええんじゃ。全部やめてしまえ」
と強い口調で言い出した。こうなると、伯母はもう止まらない。自分の思い通りになるまで、言い続ける。
「そがぁに大したことぁ、ないんよ。会社が大袈裟に言うとるだけじゃけえ、もうだいぶ、ようなってきたし、もう少ししたら、会社へ帰ろうと思うとるんよ」
私は必死で伯母を説得しようとした。
「そがぁなこと言うて。ここにおるんが嫌なんか?」
「嫌じゃなあよ。嫌じゃったら、帰ってこん。ここがええけぇ、帰ってきたんよ」
「へじゃ、もう会社に行かんでもええ。ここで花嫁修行すりゃあいいんじゃ」
「いや、でも……」
「よし、もう決まりじゃ。わしが会社に言うちゃる」
「伯母さん、やめて。わかった。私が会社に連絡する」
「ほうか。わかってくれたんか。じゃあ、ここでゆっくり休んどき」
「……わかった」
私は病気のこともあって、それ以上、強く言うことができなかった。
こうして私は、会社と高校を辞めることになった。
はっきり退職が決まった時、
(ああ、これで教師になる夢も終わりか……)
私は目標が何もなくなってしまい、気力がなくなってしまった。
それからしばらくは、ぼーっと伯母さんの家で暮らした。
そして一年近く経った昭和三十年六月の雨の日、成羽の俊雄伯父さんから、私宛に手紙がきた。
(なんだろう?)
と思って読んでみると、そこには……。
(つづく)
「夢が終わった」
そう確信した瞬間の、何とも言えない虚脱感。
俊雄伯父さんからの手紙が、いっちゃんを新たな道に導くのでしょうか?
明日もお楽しみに。




