白ヒゲ仙人と黒ヒゲ仙人
深い山奥の草地で立派なアゴヒゲを生やした二人の仙人が太く長い杖を手に持って向かい合っている。
「今日はお互いの法術の力比べをしようじゃないか」
「そうじゃな。では三回勝負にしよう」
まず、黒ヒゲ仙人が、おうっ、という掛け声とともに杖を一振りすると、大きな雷鳴がとどろき激しい雨が降り出した。
「どうだ、わしの力をみたか」
次に、白ヒゲ仙人が持っていた杖を、そりゃ、という掛け声とともに一振りすると、雨は止み黒雲が去り、太陽の光が燦燦と降り注いだ。
「実に良い天気じゃ。はっ、はっ、はっ。わしの勝ちじゃな」
「いや、引き分けだ。次の勝負だ」
黒ヒゲ仙人が天に向かって、おうっ、と杖を突き上げると、巨大な龍が勢いよく天から舞い降りてきた。
「わしの力を見るが良い」
黒ヒゲ仙人は得意げに龍を見上げた。
白ヒゲ仙人が、そりゃ、と杖で地面を突くと、その龍は地面に落ちてミミズに姿を変えた。
「ミミズは土を豊かにする大切な生き物じゃ。今回もわしの勝ちじゃな」
白ヒゲ仙人はほほ笑んだ。
「いや、まだ互角だ。次で決着をつけよう」
黒ヒゲ仙人が、おうっ、と大声を出しながら杖をグルグルと振り回すと、巨大な竜巻が起こり目の前に立っていた白ヒゲ仙人を襲った。
竜巻が収まった後に白ヒゲ仙人の姿が消えていることを確認した黒ヒゲ仙人は、大きく息を吸い込み、はっ、はっ、はっ、と声を上げて笑った。
「これで勝負あったな!」
黒ヒゲ仙人は満足げに叫んだ。
「いや、まだじゃよ」
白ヒゲ仙人の落ち着いた声を聞いて、黒ヒゲ仙人は慌てて周囲を見回したが、姿を見つけることができない。
「お前さんの背中じゃよ」と言いながら、白ヒゲ仙人が前に回って姿を見せた。
「あるから見えるのか、見えるからあるのか」という謎めいた言葉を発した後で、白ヒゲ仙人が、そりゃ、という声と共に杖をグルグル振り回すと、黒ヒゲ仙人の前にもう一人の白ヒゲ仙人が現われた。
もう一度、そりゃ、と声を上げると、さらに一人増えて三人となった。
その後も、そりゃ、そりゃ、そりゃ、と掛け声をかけ続け、その度に白ヒゲ仙人の数が増えていき、やがて黒ヒゲ仙人を何重にも取り囲むほどに膨れ上がった。
押し潰されそうになり息苦しくなった黒ヒゲ仙人は怖くなって叫んだ。
「いったいどこまで増えるんだ!」
白ヒゲ仙人がにっこりと笑いながら答えた。
「千人じゃ」




