第20話 Yes!!
拙い作品ですが、読んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
僕は叫んだ。歓喜のあまり、人目も憚らず叫んだ。
「Yes!! Yes!!」
それも無理はない。だってガチャで引いた能力があまりにもWelcomeな能力だったからだ。目の前で地元の中学生が洋風に喜ぶのを見た乙姫命は心なしか引いていた。
それに気付いた僕の頭には気恥ずかしさという名の厄介者が立ち上ってきたがその一方、反対側に佇む我が足はそんなことは露とも知らず、ただただ既に限界を迎えていた。何故限界を迎えていたのか、その話は今より6時間前に遡る。
丁度お百度参りを終えた後、僕は乙姫命からいわゆるガチャ石を一個付与された。そして10連ガチャにはこれが10個必要らしい。ということはキャンペーンガチャを引くにはあと9個必要ということになる。ふざけるな。
僕は迷った。このまま単発ガチャを引いて一か八か狙い通りの能力が手に入るのを神に祈るか。(目の前に居るが)それとも膝に残業させるか。
迷った挙げ句、僕は膝に時間外労働を命じた。それを聞いた瞬間、膝は膝から崩れ落ちた。
苦しい決断だった。しかし、オソレダブリドリの二の舞に僕はなりたくなかったのだ。ヤツは単発ガチャだったせいで望み通りの能力が手に入らなかった。そしてそれに絶望し、最終的にウンコの神に呪われてしまった。
ここで下手に賭けに出て、役に立たないクソみたいな能力を手にしてしまったら、僕だって感情的になり乙姫命にリセマラを要求してしまうことにだってなりかねない。その結果乙姫命の怒りを買い、呪われる。その可能性を恐れた僕は限界突破を合言葉に膝と二人三脚で残り9回のお百度参りを何とかやり遂げたのだった。
そしてようやく僕達は10連ガチャを引く運びとなる。するとよくあるガチャの演出映像みたいなものが境内にあった55型4Kテレビに流れ出した。それはウォシュレットのノズルから発射された水が、ターゲットに直撃すると水しぶきが画面一杯に舞い上がり、その中から能力のイラストが顔を出す、というような演出だった。そしてそれと同時に乙姫命の簡潔な解説が入る。それのおかげで僕はすぐにどんな能力かを理解できた。
1つ目はこんな能力だった。お尻が冷たくなったとき、全神経をお尻に集中させることにより自力で温められる、というものだった。外れだ。
因みにランクはRだった。レアではないだろ、と内心思ったが、どうやら東東神社ではRが最低ランクみたいだ。なるほど、と僕は顎を二、三度縦に振り納得した。
2つ目はちょっと良かった。標的の汚れた部分をこちらが発射した水で勢いよく洗い流せるというものだった。乙姫命によると、汚れた部分というのは何も物体的なものだけでなく相手の荒んだ心、そういったものも対象になるとのことだ。それは良い、使えるかもしれない。
どうやって発射するのか気になった僕は乙姫命に確認した。乙姫命はこう返してきた。
「貴方の腰にぶら下げているそのノズルからです。恐らくまだカバーも外していないであろうその粗末なノズルです」
僕のズボンにできた、すぐ近所の山みたいに標高の低いその膨らみを目に、乙姫命はそう告げたのだ。初めて見せた冷淡な面持ちで。
これは……使うことはないな……。話を聞いた僕は下を向きため息をついた。勿論、使うことがないというのは、どうせ僕は生涯独身確定だろうからとか、ノズルに対する絶望や皮肉を込めたようなそういう意味ではない。
だってそうだろう。今の僕がどうであれ、まだ中学生だ。これからいくらだって垢抜ける機会はある。僕には膨大な時間とチャンスがあるんだ。中学生ってそういうもんだろう……! もう中学生ではない。まだ中学生なのだ。
それをさもこの先、このノズルを一生使用することがないと今の時点で断定するのはあまりにも早計な話だ。自立機能をこんなにも備えた可能性の塊みたいなノズルなのに……!
――少々興奮し過ぎてしまったが、僕が言いたかったのはまあ、あくまでこの能力を使うにはリスクが大きすぎる、僕は現在14歳。捕まるかもしれない、だから使わないだろうっていう話ってことだ。ふう。
そんなこんなで引いた能力が段々明らかになっていったが、これといって役に立ちそうな能力には出会えず僕は落胆していた。7個目の能力が来るまでは。
そのときはふいに訪れた。七回目の見慣れた肛門洗浄演出を僕は五回目ぐらいから苦渋の表情で見つめていたが(一回目から苦渋の表情しろ! と思うだろうがこれはあくまで全然良い能力が来なかったことに対する反応だ)、七回目の演出が終わると同時にそれは驚きへ変わった。とうとう来たのだURが。とはいってもUR一回確定ガチャなので遅かれ早かれ起こることではあったが。
水しぶきが光り輝きいつもと違う音が鳴り響いたことによりそれがUR演出であることを理解した。そうして登場した能力の解説を聞いた僕は驚愕することになった。
口から流水音を発している間、ウンコの神の呪いを無効化できる能力。これがこの能力の詳細だった。
「ピンポイントすぎるだろ!!」
瞬速でツッコミを入れる僕に乙姫命はこう訊いてくる。
「外れですか?」
僕はこう返した。
「大当たりです! 大だけに!!」
……とうとうこの時がきた。待ちに待った救済への活路が開くこの瞬間が。下ネタやめてください! みたいな顔をする乙姫命をよそに、期待以上のドンピシャ能力を引き当てた僕は、体の底から湧き上がる喜びを抑えることが出来なかった。
「Yes!! Yes!!」
短編の連載形式です。不定期更新となります。
この度はお読みいただき、ありがとうございました。




