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第19話 トンネルの出口

拙い作品ですが、読んでいただけると幸いです。


 よろしくお願いします。

 東東ひがしあずま神社は野俱祖のぐそ神社の真下にある。

 真下とはどういうことか。聞いた人はそう思うだろう。だがそのまま言葉通りの意味だというより他ない。それはどういうことかというと、何と東東ひがしあずま神社は野俱祖のぐそ神社の地下に存在しているということなのだ。

 野倶祖のぐそ神社本殿裏の中心辺りに地下洞への入口は存在する。お尻で例えるなら丁度肛門の辺りだ。地下に続く階段を降りると、そこにはまるで便器の様な楕円型の空間が拡がり、まず珍しい形をした鳥居が訪問者を出迎える。そしてその奥の方に東東ひがしあずま神社の本殿はたたずんでいる。便器で例えるなら丁度ウォシュレットが付いてる辺りだ。

 話によると、野俱祖のぐそ神社の撒き散らしたモノを下で全て受け止めるイメージで地下に建てられたらしい。このことから分かるのは、野俱祖のぐそ神社の方が古いということだろう。

 

 さて、そんなことを考えている内にとうとう百回目のお参りだ。11月ということもあり、あれだけ汗をかいた後でも……いやむしろ汗をかいたことが尚更拍車をかけているのだろう。じっとしているとさすがに肌寒さを感じる。僕は少し身震いをしながら本殿の前に立ち、最後のお賽銭を投げ入れた。そしてもう熟練の域に達した僕は川の水が穏やかに流れるかの如く、鈴鳴らし、二礼二拍手、願掛け、一礼と続けた。

 (さあ……どうなる……!?)

 僕はこの後何かが起こるのを心のどこかで期待しながら身構えた。

 すると突然、ジャーーーーーーーーーーーーッ!! と水が流れる様な音がした。僕は慌てて辺りを見渡したが、ただただキツネにつままれた様な顔をするしかなかった。何故ならどこにも水気みずけの一滴すら感じられなかったのだ。いや流石にそれは盛り過ぎで所々湿り気みたいなものは感じられたが、それはジャーーーーーーッ!! っと音がするようなものでは当然なかったという話だ。

 辺りをキョロキョロ見回した後再び正面へ向き直ると、驚いたことに何とそこには羽衣を着た天女の様な出で立ちの若い婦人が立っていた。

 「誰!?」

 ビックリした僕は思わずそう叫んだ。

 「乙姫命オトヒメノミコトです」

 その返答に僕は感付いた。

 「便器の神様! ひょっとして便器の神様ですね!?」

 僕は食いぎみに質問する。

 「違います」

 想定外の答えが返ってきた。これで便器の神様でなければ一体何だというのだ。すると僕の心を見透かしたかの様に乙姫命はこう答えた。

 「ウォシュレットの神です」

 「乙姫だけに!? で、でも……この神社ができたのっていつ頃……」

 「寛弘七年、西暦でいうと1010年です」

 「おかしいよ! ウォシュレットないでしょ!」

 「私は中途採用なのです」

 「神に中途採用あるの!?」

 こうしたやり取りが幾ばくか続いた後、僕はふと我に返った。そうだ。そういえばこんな不毛な争いをしている場合ではないのだ。この忌まわしい呪いを解かなくてはならない。その為にここまでやって来てお百度参りまでしたのだから。意を決した僕は向こうの話を遮るかの様に本題を切り出した。

 「そういえば乙姫命様。こちら、ガチャはやっておいででしょうか?」

 それを聞いた乙姫命の表情が一変する。はあ? 急に何を言い出すんだコイツ。とでも言わんばかりの表情だ。

 しまった。変な人だと思われた! 僕は迂闊に訊いてしまったことを後悔した。今まさに胸の奥で産声を上げた恥ずかしさが頭のてっぺんまでどんどんヨチヨチ歩きしてくる。

 もう歩くのかよ! 成長早すぎだろ! などと心の中でツッコみ、必死に恥ずかしさを紛らわそうとしている自分がいることに気付く。余計恥ずかしくなってきた。

 その時だった。さっきまで怪訝な顔をしていた乙姫命が口を開いたのだ。

 「え? 何故ご存じなんですか? 確かにガチャは丁度今、参拝者累計381人突破記念感謝祭10連ガチャUR確定キャンペーン中ではありますが」 

 

 大々的じゃないか。まさかここまで本格的にやってるとは思いもしなかった。というかさっきの顔は何で知っているのかという疑問の表情だったわけか。そっちか。なるほど。にしても運が良かった。ガチャを実施するだけでは飽き足らず、まさかキャンペーン中とは。というかやけに中途半端な数の突破記念だな。まさか381……参拝(381)と掛けているのだろうか? そもそも累計参拝者数381人って少なすぎやしないか?創建1000年以上経ってるんじゃないのか? いつから数え始めたのかは知らないがそんな参拝者数ではやってけない気がするけどな。

 などなど色々気になる点はあったがいちいちそれらを気にしている時間はない。僕はもう全て水に流すことにした。便器だけに。

 「今、この神社の経営状態を心配したでしょう? ふふふ、顔に書いてありましたよ」

 「逆流してきた!!」

 僕は思わず叫んだ。

 「何の話です?」

 逆流させた乙姫命が聞き返してくる。

 「いえ、こっちの話です! どうか気にしないで下さい」

 僕は慌ててその場を取り繕った。乙姫命は怪訝な表情を浮かべながらも、幸運なことにそれ以上深く訊いてくることはなかった。

 危ない危ない……それにしてもビックリした。まさかこの便器詰まっていたとは……いや、それは物の例えだが、まさか乙姫命が話を蒸し返してくるとは思いもよらなかった。油断していた。気を付けよう。迂闊な発言が乙姫命の機嫌を損ねる可能性もあるからな。ウンコの神様が良い例だ。僕は頭の中で質問を厳選し、最も今の僕に必要なことを訊いてみることにした。

 「あの、先ほどおっしゃられたガチャのキャンペーンで気になる部分があったのですが」

 「はい。何なりとどうぞ。お答えしますよ」

 乙姫命が神対応してくる。

 「10連ガチャUR確定というのは具体的にどういうことでしょうか?」

 「それはですね、今10連ガチャを引くと1つはUR能力が確定で手に入るというものです」

 UR能力……今まで八方塞がりだと思っていた道が、その言葉を聞いて一気に開けた気がした。

短編の連載形式です。不定期更新となります。


 この度はお読みいただき、ありがとうございました。

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