閑話 たんたん探索狸さん
髑髏を倒した翌日、ここを出発する前にもう少し探索しようと言う話になった。
「あの淡河で会った男が迷い込んだ入り口を見つけたいんだ」
魔物に直接さらわれたのかもしれないが、淡河でのように誘い込まれたのかもしれない。その辺の話を聞いとくべきだったが、失念していたので聞けていない。
なので、その疑問を解消するべく、もう少し探索したいと相談した。
「では、聞き込みしながら探索しますか」
須磨の人里と浜の背後に広がる山を行く。
聞き込みでは、魔物の話は聞けたが行方不明が相次いでいると言う話はなかった。
「たまたまさらわれたと見た方が自然ですね」
「そうか」
心配が杞憂に終わってほっとする。あの淡河にあった罠のような入り口を放置したままにしてると、また被害が出てしまうだろう。
淡河の地の入り口は付近の住人に協力者を作って、様子を定期的に探ってもらっている。
「須磨は昔は流刑地だったそうです」
「えー! どの辺が?」
「京から見れば田舎なんですよ」
「……そんなん言ったらどこでも流刑地になるなあ」
「ほどよく田舎で不測の事態が起きれば京に戻りやすい、そんな土地です」
「ん?」
「偉い人が反省させられるために送られるというか……」
「ほとぼりが冷めるまで過ごす場所ですね」
「ああ、なるほど」
厳罰をするわけにもいかないほどのやんごとない人間を一時的に隔離するための場所なのだ。ある意味守られるための場所とも言える。
「それが戦場に変わってしまうのか」
「ここから近い福原を京に代わる首都にしようとした武人がいましてね」
そんな話をしながら、山を歩く。
がさり、と草葉が動いたのでそちらに意識を向ける。現れたのは、小さな動物だった。
「なんだこの動物」
「狸をご存じない?」
「狸って言うのか。犬っぽいけど、ちょっと不思議な見た目をしてるな」
小動物は怯えたようにビクビクとしながら様子を伺っている。一目散に逃げない辺り、そんなに臆病な気性ではなさそうだ。
「かわいいな」
「かわいいですか?」
不思議そうに返されて首をかしげる。
「こいつら、畑を荒らしますから」
「そうか」
害獣ならば厭われても仕方がない。
「狸は賢いんですよ。昔から、人を化かすと言われてます」
「へえ」
面白い話だとクリフォードは思う。
「こいつらの肉、臭いんですよね。あんまり美味しくない」
「これ食べんのぉ!?」
味の感想を聞かされて、突き落とされた気分になる。
「だから、食べても美味しくないって話です」
「美味しくなかったです」
「ええええぇ」
さすがに衝撃が大きい。
「そちらの国は野性動物食べないんですか」
「食べるけど……」
そういわれると、動揺している自分がおかしい気がしてくる。ビクビクと怯える狸を見ると、こちらを捕食者として見ている気がしてくる。
「かわいいのにな……」
「我々も食べたくて食べた訳じゃないんですよ。食べるものがなくて食べたんですから」
「美味しくなかったなぁー」
二人のぼやきが真に迫っているので、クリフォードもうなずく。
「我々は生きてるだけで罪深いんですよ。何かの生き物を殺傷して食べないと生きていけないんですから」
「そうだね……」
「というわけで、今日の晩御飯はなにが食べたいですか」
「話の繋ぎとしては、こう……釈然としない」




