77 コンビネーションを知らない人達
「俺の銃は弾丸の種類を変えれば連射や広範囲攻撃なんかもできるんだ」
「へえ」
連携して倒そうにも、互いの力量を知らない。どんな攻撃ができるのか、を教え合う必要があった。
「最大出力で撃ってみてくれないか」
「やだよ!」
クリフォードの願いは即答で断られた。
「最大出力って、それ切り札じゃん。こんなとこで無駄撃ちしたくないよ」
「それもそうか」
レオの訴えにクリフォードはすぐに納得した。
「じゃあ、俺が最大で撃ってみるからそれを見て判断してくれ」
「いや、わかってないな!?」
クリフォードはレオに切り札を撃たせないために自分が撃つと言う。レオはそもそも切り札を使うなと言っている。
言うが早いか、クリフォードは攻撃を済ませている。
「あー! もう!」
説得する余裕すらなく勝手にことが進んでいる。最大出力の魔法を食らった魔物はひとたまりもなく崩れ去った。
「魔物が弱くて助かったな」
「あんたの強さがおかしいよ! て言うか、行動がおかしい!」
強力な威力の魔法とそれを惜しげもなく使う姿勢の両方を突っ込まれる。
「何でそんな無茶するの? この後も魔物退治するんだよね!?」
「魔力を使い切ると魔力の総量が上がるから、なるべくぎりぎりまで使い切るようにしている」
「魔法を使えない俺から見ても、自殺行為だってわかるよ! うっかり倒れたらどうするの? 倒れたあんた運ぶの俺?」
「そうか。一人のときにする」
「いや、もっとダメ! 一人のときにぶっ倒れたら、死ぬだけだから! あんた、帰りを待つ人とかいないの?」
千佐や清六、ガウェインの人々などを思い出して気まずくなり、むっつりと黙ってしまう。
「何をそんなに捨て鉢になる必要があるんだよ。生き急いでんの? 死に急いでんの?」
死に急いでると言われて、はたと気づく。
クリフォードがこんなことをしだしたのは、倒れてから。その切っ掛けは偽エレノアとの戦闘だ。
整理がついたつもりでいた。でも、まだ囚われている。
千佐のところへ帰るつもりでいるのに。
「協力して倒すって話だったよね」
「そうだな」
「これって協力してるって言えるのかな」
出逢う魔物に対し、交互に攻撃をしてみようと言う話になった。
大体一撃で倒してしまうので、協力している感覚は薄い。
「あ……こちらです」
「ありがとう」
案内する小鈴に礼を言うと、ほわっと頬を染めて嬉しそうに笑う。何か変だな、とクリフォードは思う。
「顔がいい人はすぐこういうことになるからなー」
レオがぼやくが、クリフォードにはそのぼやきが解せない。
レオの容姿は人を妬むようなものではない。少年らしさがまだ残っていてやんちゃそうな勝ち気な目付きだが、顔立ちは甘く整っていて女性の母性本能をくすぐってモテそうである。
「……レオの方じゃないのか」
「いーや、違うね。俺は結界でも張られてるのかってくらい、モテたことないから」
自信を持って言うようなことだろうか。
「聞けばわかる」
「え」
レオは小鈴に向き直る。
「なあ、お嬢さん。この人のことどう思う」
クリフォードを指差しながらズバリと直接的な質問をする。小鈴はもじもじと着物をもてあそびながら、視線を斜めにしてはにかむ。
「……不動明王様」
「はい?」
「大日如来様の化身で普段は穏和なのに邪悪なものには厳しくて、背には炎を背負ってらして手には火を纏った倶利伽羅剣を持ってらして、人々を救うまでその場を動かないんです」
「え? なんか思ってたのと違う……」
「あー、このパターン」
「慣れてんの? この感じ」
慣れているわけではないが、神様扱いは初めてではないクリフォードだった。
「そろそろです」
案内をしていた小鈴が言って指差した先に不穏な影が見える。魔物であることに間違いない。
「今度のは一撃では倒せなさそうだ」
レオが言う通り、遠目にも大きいのが見てとれる。その魔物の影に数人の人影が見える。
「戦闘中か。助太刀していいよな」
「むしろ、早く助けるべきだろう」
歩みを小走りに変える。小鈴には適当なところで身を隠すように言い含める。
「多分、あいつは大きいから四肢を切り落としてもバラバラになった先で動くと思うんだ」
魔物は遠目に大きな泥人形のように見えた。あれは動物を模して作った姿と言えるのか、疑問である。
「遠くから頭と足を狙って一旦動きを止めよう。そこを俺が二つに切断するから割れた片方を引き受けてくれ」
「了解」
ようやく連携らしいことができそうである。




