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47 当たるも八卦当たらぬも八卦

「私は手相顔相及び気の流れを読んで占いをする。手を出されよ」

 言われて手を差し出す。

 クリフォードは占いをしてもらうのは初めてだ。今後もそんな機会はないかもしれないと思うと、少し期待値が上がる。

「健康面に異常はなし。とても頑健な体をお持ちだ。運命は今は荒れておるがその内軌道に乗るだろう。今は辛抱のときと思われよ。

 とても強い気をお持ちである。身の内に神の火を宿しておられる。それが気となり全身を包んでいるのだ。

 その固く熱いお体をもってすれば女性を喜ばせること間違いなし。今は清い身のままであらせられるがいずれ本懐を遂げられる」

「なんの話してんの!?」

 途中まで真面目に聞いていたのに、話の舵をおかしな方向に曲げられたので大声で突っ込まざるを得ない。清六は隣で声を出して笑っている。

「私ももう少し若ければ」

「何でこの国の人、すぐそういう話すんの?」

「すぐ死ぬからですよ」

 ぼやきに軽い感じで返されて、その内容にはっとして言葉につまる。命を簡単に落としかねないからこそ、次世代を残すことに貪欲になるのだ。


「では、次はお前さんを」

 老婆は清六の手をとる。クリフォードの占いは切り上げられてしまった。

「近い内に結婚するね」

「はいはい」

 清六はおもしろくなさそうに適当に相づちを打つ。

「占い師ってのはとりあえず結婚するっていっときゃ大概当たるんだから、楽なお商売ですな」

「聞こえるよ」

 清六が声量を落とすことなく毒をはくので、たしなめる。

 だが清六も老婆も気にした風ではなかった。老婆に金を渡してやってる。清六はもうさっさと占いを切り上げたいらしい。


「ただいま戻りました」

 千佐が帰ってきた。

「あなたは」

「おや、お嬢さん。久しぶりだね」

 老婆を見て、千佐は息を飲んだ。

「知ってるのか?」

「はい。子供の頃にこの人に会いました」

「ご立派に成長なされた。よい修行をされたようですな。素晴らしい気が満ちておる。お兄さんがたはご壮健か?」

「兄は……」

 千佐は言葉をつまらせる。


「上の兄は死にました。下の兄は、今は」

 そこから先の言葉が中々出ない。老婆はうんうんと頷いている。

「あのとき、非常に申し上げにくくて彼らのことは伏せさせてもらった。上の兄上には残念ながら早世の相が出てらっしゃった。下の兄上は善悪どちらにもとれる相が出てらした。聖人になるのかはたまた魔王になるのか、そんな不安定な相が」

「魔王とかぴったりじゃないですか」

 清六が混ぜっ返すが、千佐は神妙に話を聞いている。

「そなたはそのまま、自身の務めを果たされよ。それがそのまま活路となるであろう。それでは道中お気をつけて」

 老婆は去っていった。千佐は一礼をして彼女を見送った。



「あの人は私の顔を見るなり、この娘は巫女にするべしと母に強く訴えたのだ」

「ええ、それを信じたんですか?」

 老婆の背を見ながら語る千佐の言葉に清六は怪訝そうに言う。

「母はそのときは信じてはいなかったが、その後病床の折りに心変わりされたのか、巫女にしようと言い出したのだ。それで私は修行に出された。それが母の遺言になったので」

「じゃあ、あのお婆さんは結構すごい人なのか?」

 クリフォードが問うと千佐は向き直って頷いた。

「力は本物でしょう。それを常に使っているかはわかりませんが」



「じゃあ、清六結婚するの?」

「するわけないでしょ」

 嫌そうにぼやいている。千佐は目を瞬かせた。

「それは……あの人がすると言ったら、するのでは」

「いやいや、信じないでくださいよ。見たでしょ、俺に対してあんな適当な物言い」

「大分素が出てるぞお前」

 表情から口調から露骨に嫌そうなので、千佐は指摘する。相当結婚したくないらしい。

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