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29 終わり良ければ……?2

「あんたらには迷惑掛けたな」

「いやいや」

「勝手に巻き込んだのに、化け物まで退治してもらって……礼をしたいが、いかんせん貧しいもんで返せるものが何もなくて」

「お気になさらず」

 昨日あれだけ高圧的に出られた百姓達に態度を翻される。

 とりあえず穏便に済まそうとクリフォードは刺激しないように相づちを打つ。


「金なら、儂が出そう」

 武士の一人が申し出る。

「結構で」

「では実費をいただきましょう!」

 とっさに断ろうとしたところを、清六がさっと割って入る。


「まずはこの地に来るまでにかかった旅費ですね。宿泊が2泊、食事代がこれだけ、使用した矢や武器など諸々合わせて、この位になります」

 立て板に水のごとく、つらつらと淀みなく並べ立てていく。口を挟む隙もないので、クリフォードは黙っているしかない。


「支払おう」

「ありがとうございます」

 この男がいないとクリフォード達の旅は成立しないのでは? と改めて把握する。



「とりあえず一旦家に帰りましょうね」

「お前に言っておくことがある」

 クリフォード達は百姓達と別れて帰路についた。

 ところで、千佐が不機嫌そうに切り出した。

「私たちはここに来るまでに2泊もしてないし、矢もそんなに使ってないし、食事だって昨晩と今朝にしか食べてない」

 千佐に睨み付けられるが、清六はにこにこと笑っている。

「だって、我々がどこから来たかは、ばれるわけにはいかないですし、迷惑料もいただきたいですから」

「そのちょろまかして得た金、懐に入れるつもりか!? 叔父上にきちんと報告せねば承知せんぞ!」

「クリフ様、助けてください」

「無理かな」

 二人ともしっかりしてるな、とクリフォードはずれたことを思った。



 再び村外れの道祖神のところまで戻ってきた。

「これ、本当に悪いものを防いでくれてるのかもな」

「そうかもしれませんねー」

「信じることが肝要なんです。鰯の頭も信心からとも言いますし」

 千佐の言葉に、クリフォードは千佐のこれまでの言動を振り返る。

 この子は、勝手気ままに動いているようで実は自分の信念に基づいて動いているのかもしれない。

 何かに導かれるように、彼女の行動をきっかけに解決へと都合よく事が進んでいる気がしてならない。

 しかし、かといって彼女に対して妄信的になるのも、危険な気がする。


「あの化け物、何で一揆なんて起こそうとしたんですかね」

「混乱を起こして心身を消耗させて、大量に取り憑かせようと企んだのかな」

「じゃあ、あの池にいた化け物燃やしといて正解でしたね」

「あ」

 清六に言われて、全部繋がってたことにようやく気づく。


「ところで、クリフ様は不殺の信念でもお持ちなんですか?」

「そういう訳じゃないんだが、この国の刀が切れすぎて怖いんだよ。大体、そこまで切れ味を求める意味が分からないんだ。どうせ血が回ったら切れ味なんて落ちるのに」

 クリフォードの言葉に、二人はきょとんとしている。まあ、わからないよな、と苦笑した。


「だって、切れないと首を持って帰れないじゃないですか」

「……首?」

 告げられた言葉に、逆にクリフォードが呆気にとられる。

「戦場で誰が戦果を上げたか査定しなきゃいけないじゃないですか」

「首って、この首か?」

 自分の首を指差して聞くと、そうだと頷かれる。

「首が無理なら鼻とか耳とか削いで持って帰らないと」

「は、鼻……」

 クリフォードは急に自分が価値観の違う異界に居ることを自覚した。


 彼らは親しくなれば優しく接してくれて、礼儀も正しく、彼らなりの文化も持っている。頭も良くて、優れた技術もある。


 それなのに、どうしようもなく蛮族であった。


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