無限バイアス/ちょっと地上へ
無限バイアス
魔法裁縫店で手に入れた、バイアステープを貼る。竜の鱗を並べて、空飛び虎の抜け毛を編んだ帯を、房飾りみたいにつける。
「お姉ちゃん、それ学芸会の衣装?」
「演劇って言ってくれる? 遊びじゃないの」
「貴族のお嬢さんの遊びでしょ」
妹は肩をそびやかした。
「お姉ちゃん、成績だけで入った特待生なんだから、のめり込まないでよ」
「楽しいのに」
貴族が多い学問所を選んだのは、勉強のこともあるが、本当は、先端の芸術が見られるから。
「お姉ちゃん、くれぐれも注意してね? 私達が竜ってばれたら、すぐ退治されちゃうんだから」
「分かってる」
初日にくしゃみして竜になり、お嬢さん達に隠して貰ったことも、内緒だ。
*
ちょっと地上へ
室内は嵐の後のようだった。
「何度言ったら分かるんだ! 君の遊びは、僕らのものとは違うんだ」
大声を出す。けれど通じない。低い、長い声が、室内の空気を震わせる。
「大声を出さないでくれ、賃貸なんだ!」
「タヒロさん!」
がたがたと玄関のドアが揺れる。大家だ。
納戸に押し込めて、
「絶対喋るな。せめて小鳥のフリをしろ」
ぴるると鳴く鼻先で、納戸を閉める。
玄関を開けたが最後、大家は一気に屋内に入り込み、納戸を開けてしまった。
「天使じゃないか。天然記念物だよ」
猛禽の羽。美しい人面。全体的に人の二倍大きい。
「怪我が治ったら逃しますから」
ペット不可の賃貸だが、大家は天使を見逃してくれた。
遊びはふちどり。
第四十二回のお題「遊ぶ」#Twitter300字ss @Tw300ss




