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第六十四話 強烈! 守護の像!!

「いッ……!」


 精霊さんの念で、慌てて足を止めた私。

 その鼻先を、スッと剣の切っ先が落ちて行った。

 巨大な石の剣はそのまま床へと達し、石畳を叩き割る。

 たちまち、伝わってきた衝撃によって体が浮いた!

 ――あ、危なかったッ!!

 もし精霊さんの声が無かったら、今頃は私の頭がカチ割られていた!

 背筋がヒヤッとして、全身の筋肉がブルルッと震えた。

 何が起こったのかと見上げてみれば、そこには――


「ちッ! 最後の守護者ってわけか! 気づかなかったわ!」

『どうやら、起動して初めて魔力を出すみたいなのですよ!』


 台座の上に立つ、麗しの戦乙女。

 目鼻立ちのハッキリとした顔立ちは凛々しく、眼が冴えるほど美しい。

 プロポーションも抜群で、下着みたいな恰好をしているのが目に毒だ。

 こんな女戦士がギルドに居たら、あっという間に人だかりができるだろうなー。

 身長が私の三倍ほどもあって、さらに体が石で出来ていなければだけどね。

 製作者のこだわりなんだろうけど、なかなかいいセンスしてるじゃない!


 床にめり込んだ剣を回収すると、台座から降りる石像。

 重量感たっぷりの石で出来ているせいか、動きは比較的遅めだ。

 この隙に手早くエコーを放つと、すぐさま数値を確認する。


「……2600! 誰だか知らないけど、とんでもないもの作ってくれたじゃないッ!」

『あのラーゼンよりも圧倒的に強いのです!? か、勝てるのですか!』

「大丈夫、あの時に比べれば差は小さいわ! ただ――」


 言い終わらないうちに、敵の攻撃が飛んできた。

 大振りな剣を飛びのいてかわすと、すかさず返しの一撃を放つ。


「地に縛られし翼、紅をもってこれを穿つ。ファイアーランスッ!!」


 魔法剣を除いては、私の出せる最大の攻撃。

 それをあえて、顔ではなく指先を目がけてはなった。

 予想外の場所への一撃に、反応の遅れた石像は避けることが出来なかった。

 紅い軌跡が、正確に指を射抜く。

 バコンッと発破のような音が響くと同時に、石が粉末となってまき散らされた。

 よし、完璧ッ!

 剣の重さを支え切れなくなった石像は、そのまま床へと取り落としてしまう。

 だが――


「やっぱりね!」

『再生していくのです!!』


 粉々になった石が、再び元の場所へと戻っていく。

 あっという間に指は再生され、石像は再び剣を構えた。

 予想はしてたけど、実際に見るとイライラする光景ね……!


「これじゃキリがない!」

『シース、どうするのです!?』

「どうするもなにも……!」


 魔法剣を叩き込めば、敵を粉砕できる可能性はある。

 でもこいつの再生能力じゃ、あっという間に復活して終わりだ。

 この手のガーディアンにはたいてい魔石を使ったコアがあるから、そこさえ破壊できればチャンスはあるんだけど……!

 どこにそれがあるのか、皆目見当がつかないッ!!


「精霊さん、あいつの身体に魔力が集まってるところとかない?」

『ダメなのですー、上手く隠されているのですよ!』

「ええい……賭けるしかないわね! 精霊さん、この剣を通じて魔力を物に込められる?」

『出来るのですよー! 先を触れさせてくれれば、可能なのです!』

「よし……! じゃあまずは、地に縛られし翼、紅をもってこれを穿つ。ファイアーランスッ!」


 今度は、敵の身体のど真ん中を狙って放つ。

 紅の槍が、振り上げられた剣の下を通って腹を穿った。

 粉砕!

 派手な爆音が轟き、もともとくびれていた腰がさらにえぐれた。

 やがて砕けた石の身体が欠片となって、いくつも吹き飛んでくる。

 そのうち一番大きなものを、私は剣で地面に叩きつけて固定した。


「これに魔力を込めるわよ!」

『え!?』

「早く!」

『分かったのですよ! シースも、剣に魔力を!』

「オッケー! 了解ッ!!」


 魔法剣でも放つかのように、剣に膨大な魔力を流し込んでいく。

 さらに魔力は切っ先から石へと、勢いよく流れ込んでいった。

 何の変哲もなかった石が、蓄えられた魔力によって光を帯び始める。

 そして――


「いっけェ!!」


 石を押さえつけていた剣を、素早く持ち上げる。

 解放。

 動きを制限されていた石は、役目を思い出したかのように石像の方へと飛んで行った。

 そしてそれが身体の一部として戻った瞬間――石像の全身に火花が走る。

 彼女――見た目が女だから、こう呼ぶとしよう――はその場で大きく悶えると、狂ったようにのたうち始める。

 さながら、赤ん坊が癇癪でも起こしたかのようである。


「やった!!」

『ど、どういうことなのです!? 壊れちゃったのですか!?』

「壊れたんじゃなくて、壊したのよ! 石像が再生するには、魔力がどうしても必要でしょ? だから、おそらくこいつの身体にはコアから全身へ魔力を行き渡らせるための通路みたいなものがあるのよ。そこへいきなり、すっごい量の魔力をぶち込んだから容量オーバーでぶっ壊れたってわけ!」

『おおッ!』

「急ぐわよ! 早く結界の中からお宝を出さなきゃ!」


 急がないと、異変に気づいたデュラハンがここまで降りてきちゃうかもしれない!

 私は機能停止した石像に後ろ髪をひかれながらも、魔石をあきらめてすぐさま結界の方へと走り出す。

 やがてその縁にたどり着くと、内側に仕舞い込まれた財宝の数々が目に飛び込んできた。

 

「ほえー……! こりゃ凄いわ。武器だけじゃなくて、金貨とかも山になってるじゃない!」

『十年ぐらいは、遊んで暮らせそうなのですよ!』

「十年どころじゃないわ! 百年よッ!! それも豪遊できるわ!!」


 うず高く積まれた金貨の山。

 そこに突き刺さる数えきれないほどの武具。

 その神々しいまでに煌びやかな光景に、息を飲まずにはいられない。

 さすがは伝説の町オルドレン、武具以外にも宝をどっさりため込んでいたようだ。

 タナトスが執拗なまでに隠したくなるのも、これを見ちゃったらよくわかる。

 こんなの、下手すりゃ世界が敵になるレベルね。


「……さてと。中へ入りましょうか」


 私は結界の内部に向かって、ゆっくりと一歩を踏み出したのだった――。


シースはお宝を手に入れられるのか、どうか!

次回にご期待ください!

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