1 新プロジェクト誕生!?
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虹野奏那は金持ちのボンボンである。
しかも男3人兄弟の末っ子で小さい頃から甘やかされて育ってきた。
優秀な兄二人と競い合うつもりで頑張ってきたが、学業は並、体力も並だった。
これといって打ち込めるものも見つからず、いつの間にか大学を卒業していた。
そして、大学の卒業式を終えた次の日、奏那は父に呼び出されていた。
「奏那。大学卒業おめでとう。約束通り、新プロジェクトを立ち上げる手続きをしたいのだが…」
そう、虹野家では兄二人が大学卒業と同時に新事業を始め、それが成功していたため、家族間で奏那にも卒業と同時に新たな事業を任せようという流れがあったのだ。
「何をするかは決まったのかい?」
奏那の頭の中は真っ白であった。
大学生活で何か新しい価値観を得られるかと期待していたが、勉強の内容も面白いと思えるものもなく、サークルも興味をそそられず、バイトに至ってはする必要がなかったので普通にしなかった。
いや、唯一面白いと思えるものは見つかった。
それは大学のゼミでのことだった。
哲学史ゼミは教授がちょろいことで有名で大人気だったため、抽選になり、敢えなく落選。
そして、代わりに入ったゼミがミュージカルのゼミだった。
そこでミュージカルに大ハマりした奏那は父からの質問に咄嗟に答えてしまった。
「僕…劇団を作ります!」
父は少しだけ驚いた表情をしたが、すぐにいつも通りのニコニコだが、家族以外が見たら圧のある顔になっていた。
「ほぉ…。虹野グループのエンタメ進出か。これは頼もしいな。わかった。4月までには人材を集め、環境を整えよう。楽しみに待っていなさい」
父の凄みに寒気を覚えたが、それはそれとして奏那はこれからの人生に楽しみを見出すのであった。
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「その流れでこの規模はおかしい」
奏那に正論を突きつけるのは紫雲 耀亮。28歳である。
耀亮は数年前までイケメン役者として成功していた。
しかし、顔だけが売りのような扱いをされていたのに疑問を感じ、本格的な舞台の芝居がしたいと事務所に懇願するもそれが原因で事務所と揉めてしまう。
それどころか、事務所の社長はスキャンダルをでっちあげクビにしてきたのだ。
そんな耀亮を救ったのが、奏那の兄である絢斗だった。
昨日まで絢斗の会社の専属モデルとして働いていたが、絢斗の父からの要請で奏那のサポートとして呼ばれたのだった。
そして耀亮がおかしいと言ったのは、現在耀亮と奏那がいる建物のことだった。
「この6階建てビル全部劇団のもの」
奏那からそう聞かされた時、耀亮は眩暈を覚えるのであった。
1階には小さな体育館ほどの1面が全て鏡のレッスンルームがあり、隣には小さいジム、そして大浴場も備わっている。
2階には事務員用のオフィスと、簡易的なスタジオがあり、収録やら録音もできそうだ。
3階から上は住宅スペースとなっており、事務員やスタッフが問題なく住み込めるようになっている。
劇団の名前すら決まっていないのに20名ほどの事務員が働いているのを見て
「マジか」
以外を言える人間はいないであろう。
何より一番恐ろしいのがこの状況を『当たり前だ』と言わんばかりの表情でご満悦気味の奏那である。
違う、そうじゃないと言いたくなる気持ちを抑える耀亮。とりあえず、この状況を飲み込むことにした。
一階のレッスンルームのすぐ近くの廊下にある自動販売機で飲み物を買った二人。
レッスンルームに入り、机を並べ、パイプ椅子に座り今後のことを相談することにした。
ちなみに耀亮は微糖コーヒー、奏那は炭酸ジュースである。
「それで、会社名とか劇団名はどうするんだ?お前が代表なんだろ?」
どこからかコップとストローを取り出しお上品にジュースを飲む奏那はずっと笑顔だ。
「劇団名は虹の島ドリームスです!かっこいいでしょ?ずっと考えてたんですよ!」
「ダッサ」
耀亮から思わずこぼれてしまった言葉に初めて奏那は表情を変えた。よほどショックだったようである。
「野球チームかなんかか?…いや、一周回って逆にありか?」
耀亮の言葉に表情がコロコロ変わる奏那である。
「虹の島ドリームス。わかった、それで行こう。会社名はどうするんだ?」
「あ、それは虹野エンターテイメントに決まってました」
そうだった。この目の前にいるのはその辺のポンコツボンボンではなく”あの”虹野家の末っ子なのだ。
変に姿勢を正してしまった耀亮に奏那は首をかしげるも、次の話題に移る。
「耀亮さんに劇団名を了承してもらったら、事務員さんに募集の広告を出してもらえますね」
「ちょっとまで、なんで俺の了承が必要なんだ?」
わざとらしく首を傾げる奏那。コイツは22歳の割にあざといな、と耀亮は思う。
「それは虹野エンターテイメントの責任者は僕ですけど、虹の島ドリームスの責任者が耀亮さんになるからです。よろしくお願いしますね、座長」
座長というポジション以上の重圧がかかった気がした耀亮でした。
とりあえずレッスンルームを活用してみようとレッスン着に着替え、ストレッチをする二人。
耀亮は黒いTシャツと紫のジャージズボン。
奏那は白と青と黄色の高級メーカーのジャージの上下セットだった。
ストレッチをしながらの会話は集める人員のことだった。
「奏那。募集かけるにしても必要な人員はわかるか?」
「脚本家さんと音響さんと照明さんですか?」
「あぁ、それにメイク担当と効果担当も欲しいな」
「効果?効果ってなんですか?」
「照明担当とも近いがプログラムで派手な色を出したり、あとは紙吹雪を用意したりとかな」
「ほぇ〜。それは欲しいですね!」
体を伸ばしながら、耀亮の話をキラキラした目で聞く奏那。
とりあえず舞台への情熱は本物らしい。
「耀亮さんの知り合いにそういう人材はいないんですか?」
「あぁ、メイク担当には心当たりがある。声をかけておこう」
「はい!よろしくお願いします!」
という和やかな会話が進んでいき、ストレッチが終わる頃に耀亮はようやくとある事に気づいた。
「そういえばなんでお前もレッスン着を着てるんだ?」
この問いに待ってましたと言わんばかりの今日イチの笑顔で
「それは僕も役者をするからです!」
と奏那は答えるのだった。
それを聞いた耀亮は今日イチ大きいため息をつくのであった。
明日に2話、明後日に3話を投稿いたします。
それ以降は第1・第3水曜日の投稿の予定です!




