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黎明の葦  作者: 白想玲夢
第4章 観測者の条件

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26/41

防壁

 切らないと決めた瞬間。


   *


 前提が変わる。


   *


 “守る”必要が生まれる。


   *


 だが。


   *


 何を?


   *


 どこを?


   *


『……無理だろ』


   *


 同僚が低く言う。


   *


『思考そのものに触られてるなら』


   *


『防ぎようがない』


   *


 正しい。


   *


 正しすぎる。


   *


 だから。


   *


 使えない。


   *


『全部は守らない』


   *


『は?』


   *


『無理だから』


   *


 一拍。


   *


『捨てる』


   *


 沈黙。


   *


『……何を?』


   *


『外側』


   *


 言葉にする。


   *


『見られてる部分』


   *


 同僚が眉をひそめる。


   *


『それって……』


   *


『いい』


   *


 遮る。


   *


『どうせ全部見られてる』


   *


 一拍。


   *


『なら、そこは捨てていい』


   *


 思考の表層。


   *


 演出している部分。


   *


 そこはもう、防御対象じゃない。


   *


『……じゃあ中は?』


   *


『分ける』


   *


 一拍。


   *


『さらに奥に作る』


   *


 同僚が黙る。


   *


 理解が追いつかない。


   *


 だが。


   *


 構造は単純だ。


   *


『二層じゃ足りない』


   *


『三層にする』


   *


 上。


   *


 見せる層。


   *


 中。


   *


 使う層。


   *


 そして。


   *


 下。


   *


 “触らせない層”。


   *


『……そんなの出来るのか?』


   *


『分からない』


   *


『でも』


   *


 一拍。


   *


『やるしかない』


   *


 思考を組み替える。


   *


 今までの二重構造を壊す。


   *


 再構築する。


   *


 深く。


   *


 もっと深く。


   *


 意識の奥へ。


   *


 ノイズを切る。


   *


 余計な分岐を削る。


   *


 純度を上げる。


   *


 そこに。


   *


 “核”を置く。


   *


『……何してる?』


   *


 同僚の声が遠い。


   *


 答えない。


   *


 今は、言語化できない。


   *


 ただ。


   *


 感覚だけがある。


   *


 深く。


   *


 沈む。


   *


 その底に。


   *


 触れられない場所を作る。


   *


 ――ここは渡さない。


   *


 その意志だけを残す。


   *


『……できた』


   *


 小さく呟く。


   *


『何が?』


   *


『分からない』


   *


『は?』


   *


『でも、ある』


   *


 確信だけがある。


   *


 構造として。


   *


 成立している。


   *


『……お前、顔やばいぞ』


   *


 同僚が引いた声で言う。


   *


 無視する。


   *


 ログを開く。


   *


 E-3。


   *


 応答は続いている。


   *


 相手も、止まっていない。


   *


 なら。


   *


 試す。


   *


『いく』


   *


 応答を組む。


   *


 今までと同じように。


   *


 偽装する。


   *


 混ぜる。


   *


 だが。


   *


 奥には触れさせない。


   *


 境界を、意識する。


   *


 越えさせない。


   *


 そのまま。


   *


 送る。


   *


 数秒。


   *


 応答が返る。


   *


 ――遅い。


   *


 今までよりも。


   *


 明らかに。


   *


『……増えた』


   *


 同僚が呟く。


   *


『遅延』


   *


『ああ』


   *


 それだけじゃない。


   *


 ログの構造。


   *


 微細な揺れ。


   *


 不規則な変化。


   *


『……探してる』


   *


『何を?』


   *


『奥』


   *


 一拍。


   *


『見えない部分を』


   *


 同僚が息を呑む。


   *


『……マジかよ』


   *


 だが。


   *


 届いていない。


   *


 少なくとも。


   *


 まだ。


   *


 “核”には触れていない。


   *


『……効いてる』


   *


 小さく呟く。


   *


 今度は、本当に。


   *


 こちらの手応えだ。


   *


『でもさ』


   *


 同僚が言う。


   *


『これ、時間の問題じゃない?』


   *


 一拍。


   *


『その奥も、そのうち読まれる』


   *


 正しい。


   *


 いずれは。


   *


 突破される。


   *


 このままでは。


   *


『……だから』


   *


 視線を上げる。


   *


『固定しない』


   *


『は?』


   *


『動かす』


   *


 一拍。


   *


『場所を変える』


   *


 同僚が固まる。


   *


『……逃げるってこと?』


   *


『違う』


   *


 首を振る。


   *


『揺らす』


   *


 防御じゃない。


   *


 回避でもない。


   *


 定義を壊す。


   *


 位置を固定しない。


   *


 “どこにあるか分からない状態”にする。


   *


『……それ』


   *


『何?』


   *


『もう防御じゃなくない?』


   *


 一瞬、考える。


   *


 確かに。


   *


 これは。


   *


『……攻撃だな』


   *


 一拍。


   *


『認識に対する』


   *


 上司が、ゆっくり笑う。


   *


『やっとそこまで来たか』


   *


 軽い声。


   *


 だが。


   *


 どこか満足そうだった。


   *


『……次、どうする?』


   *


 同僚が聞く。


   *


 少しだけ、興奮が混じっている。


   *


 恐怖と、好奇心。


   *


 その境界。


   *


『決まってる』


   *


 ログを見る。


   *


 相手は、まだ探している。


   *


 見えないものを。


   *


 なら。


   *


『もっと見せる』


   *


 一拍。


   *


『偽物を』


   *


 画面の向こう。


   *


 見えない相手。


   *


 そいつは今。


   *


 “見えない何か”を追っている。


   *


 なら。


   *


 そこに。


   *


 いくらでも置ける。


   *


 偽の核を。


   *


 いくつでも。


   *


 重ねて。


   *


 分散して。


   *


 どれが本物か分からないように。


   *


 その瞬間。


   *


 理解する。


   *


 これはもう。


   *


 防御じゃない。


   *


 “迷路”だ。


   *


 相手を閉じ込めるための。

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