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トリガー

 放課後、来夢の叔父の家に宗田がやってきた。来夢の様子と制服の上着を返すためだ。


 「来夢、いるか?俺だ」


 インターホン越しに宗田を確認し、恐る恐る顔を出す来夢。バイブマンではない。元の来夢の姿だ。


 「もう、直っちまったのか。つまんねえの……。ってか強えなぁ。それに空まで飛ぶのかよ。無敵じゃん、ホントのヒーローだぜ、ありゃ。ただしあのビジュアルじゃなきゃな」


 「何しに来たんだよ」


 「何ってお前の制服返しに来てやったんだよ!その言い草なんだ。それにお前の心配だってしてんだよ」


 「すまねえ」


 来夢は殊勝に頭を下げた。宗田は鼻からフンスと息を吐きながら、カバンから皺くちゃになった制服を取り出した。何か言いたげな来夢に向かって一言放つ。


 「何だよ。しようがないだろう?あん時はそうするしかなかったんだから。それにしても随分早く戻れるようになったな」


 「叔父さんのおかげでな。リバースインジェクション改良してくれて六時間くらいで戻れるようになった。もう暫く改良出来れば二三時間で元に戻れるらしい」


 「お前の叔父さん何モンだよ。超優秀だな」


 「優秀すぎる自分が怖いよ」


 「うわっ」


 鷹が来夢の後ろから現れる。あまりの突然の登場に来夢までも驚いた。


 「驚かしたな……、スマン。ま、中に入れ。誰が聞いているとも限らんからな。――来夢のオヤジが生前、俺にその役目を託していたんだ、まさかこんなに早く役に立つとは……。それともう一つ。来夢の変身トリガーなんだが、こいつの中にある怒りや誰かを救いたいという熱い気持ち。それによりこいつの中にあるエナジーが高まる事まではわかった。……あと一つ、爆発的にワンステージ上がる何か、その何かが分からないんだ。宗田君、君何か知らないか?」


 玄関からリビングに行く間、まくし立てる鷹。それを腕組みしながら静かに聞いていた宗田は口を開いた。


 「そういえば、来夢のヤツあの時、女子のパンチラ、ガン見してやがったな……」


 「してねえよ!たまたま目に入ったから、目を逸らしたろ?見ちゃいけないって」




 「そうかぁ?結構なガン見だったぜ?捲ったり覗いたわけじゃねえだろう、不可抗力なんだから仕方ないじゃねえか、――が、しかしだ。あり得ない不可抗力だからこそ価値あんだよなラッキースケベは」


「お前のそう言う考えがいけねえんだよ。犯罪者予備軍がっ」


「何だよ、えーかっこしいがー。だったらチラ見もすんじゃねえよ。女の味方みたいな顔しやがって。ぜーったいそれがトリガーだ、断言してやんよ、100%間違いない」


 二人の罵り合いを尻目に鷹は来夢の頭や身体に器具を装着していく。そのまま研究室へ。理路整然とされた部屋の中にある椅子に半ば強制的に座らされる来夢。


 かくしてトリガーの研究は始まった。


 数時間後、日は暮れ、宗田の説の正しさは証明された。来夢の変身トリガーの重要な部分、それはエロであった。


 「みーろ、俺の言ったとおりじゃねえか。きれいごと抜かしたってお前も所詮オスなんだよ。わかったか」


 「……」


 ぐうの音も出ない来夢。鷹は二人の会話には興味なしといった感じで更に分析を進めていく。不確かな要素が多すぎてまだ確定するには早すぎると感じたからだ。


 来夢のトリガーについての研究は数日間に渡って行われた。来夢は学校にも行かしてもらえず缶詰。宗田は放課後になると学校から直行してデータ集め。助手として来夢のデータを集めていく。


 「ついに、分かった!」


 鷹が興奮気味に椅子から立ち上がる。来夢一人だけがウンザリした表情をしている。学校はおろかバイトにすらもいけない日々。これからの事を思うと正直暗い気持ちになる。


 頭がバイブであるばかりか変身トリガーまでエロが必要とは。


 これでは変態の烙印を押されてしまったに等しい。プライドは粉々に砕け散った。人生で死にたいと思った事はこれまで何度もあったが別の意味でこんな感情に襲われるとは思ってもいなかった。


 はしゃぐ二人を尻目に抜け殻のような目で変身トリガーの解説を聞く来夢。


 「いいか、来夢。お前の変身トリガーに必要なエロは大雑把に言ってチラリズムのようなエロだ!直接的にどうのこうのというエロや行為ではない。従って紳士淑女たる大人が嗜むような動画では変身トリガーになり得ない。偶然目にするラッキースケベ。そんなものが丁度いいようだ」


 熱弁する鷹の横で笑いをかみ殺している宗田。堪えようとはしているものの息は漏れるし、肩は震えている。


 来夢は今すぐにでも張り倒してやりたい衝動に駆られる。


 「テメェ、覚えてろ?人を変態みたいに……。お前だってこの間言ってたじゃねえか。一皮剥けば一緒だって」


 「確かに言ったよ?でも、ヒーローがお前……っパンチラで変身なんて……。狼男じやあるまいし。飢えた野獣じゃねえか」


 とうとう宗田の口からクククという笑い声が漏れる。その瞬間ライムの目から生気は失われた。死ぬほど辛い思いをした挙げ句、報われなかった人生。


 憧れのヒーローへの変身が叶ったかと思えば好きな幼なじみからはその姿をキモいと罵られ、人々には罵倒され、しかも己が愚劣で卑怯とまで言ったエロ行為でのみ変身できるとあればもはやこれ以上の屈辱はあるだろうか。


 追い打ちをかけるように目の前の友は侮蔑の笑い声を上げている。消えてしまいたい、スッとそんな気持ちが頭を過った。


 


 


 

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