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05 神々の信徒

 武器を持って主役の為の道を壇上目指して進むスーとサンから、参列者達は席から立ち上がって距離を取ろうとする。


 国王と王太子は壁際に下がる。壇上に上がって来た近衛兵達が国王達の前に並ぶと、マル達に向かって剣を構えた。立ち上がらずに何故か這いながら侯爵も、近衛兵達の後に回り込む。


 スーとサンも壇上に上がってバツの左右に、バツの半歩前に並んだ。


 大神官長は壇上中央でバツ達と対峙し、副神官長は大神官長の後に立っている。副神官長はマルに対しては威勢が良かったが、バツが来てからは腰が引けていた。


「こちらの二人は誰なの?バツは知ってるのよね?」

「誰なのですって?」


 マルの言葉にスーが振り向く。


「助けに来たのにあたしの事、覚えてないなんて失礼よね」

「巫女様は俺の事、覚えてないのか・・・」


 サンも眉を顰めてマルを振り向いた。

 バツは大神官長や近衛達の様子から目を離さずに、マルに答える。


「女の方は神々の槍スー。男の方は神々の盾サン」

「スー?もしかしてバツに負けてた、あのスー?」

「ヒトの事をなんて覚え方してるのよ?バツに負けたのなんて、子供の頃だけでしょ?」

「巫女様?俺の事は?」

「ごめんなさい。でもサンさんとは初めましてよね?」

「バツと一緒に会った事あるのに・・・」

「バツと一緒じゃ、サンはマルの目に入らなかったんでしょ?」

「俺、あの頃もバツより大きかったぜ?」

「そう言う問題じゃないのよ」

「お前達!神聖な大聖堂に武器を持ち込むなんて!なんと罰当たりな!」

「そこの兵も剣を構えてるじゃない?」


 大神官長の言葉にスーがそう返した。しかし大神官長がスーに言い返す。


「この者達が武器を持つ事は、愛と美と豊穣を司る女神に許しを得ている!」

「だから、マルがその神の恩恵はなくなったって言ってたの、理解出来なかった?それとも聞いてなかったの?扉のところにいたあたしにも聞こえたけど、もしかして耳が遠いの?」

「遠くても年相応だろ?仕方ないじゃないか」


 大神官長に対するスーの言葉に、サンはフォローの言葉を着け足すと、大神官長に慈愛を込めた微笑みを向けた。


「こいつは根は良いやつなんだけど、ついキツい事ばかり言っちまうんだ。まあ、許してやってくれよ、爺さん」

「爺さん?!私を爺さんだと!」

「あ、ゴメン。婆さんだったか?」

「なんだと!」

「年寄りの性別には興味ないもんだから、悪かった」

「お前達、待て」


 大神官長が顔を真っ赤にして、サンを怒鳴ろうとしたところを国王が止めた。


「マレニリアは先程、王太子との婚約誓約書にサインをしたではないか?」

「はい」


 マルが国王の言葉に肯くと、肯かれた国王は困った。


「いや、はいではなくてだな?つまりマレニリアは王太子の婚約者となった訳だ」

「はい」

「いや、はいと言うが、ではつまりこのバツと言う男は、マレニリアの元の婚約者と言う事か?」

「あ、いえいえ。そこから分からない感じですか?」


 マルの言い方に、この場の多くの者達がイラッとする。


「大神官長でも副神官長でも、説明します?」

「説明?何をだ?」


 大神官長は眉間に凄く深い皺を作りながら、マルに訊いた。マルは小首を傾げる。


「あれ?大神官長も分かってない感じですか?それは困ったわね」

「だから何の事だ?!」

「それ、部外者の私が説明しても良いですか?」

「だから!それとはなんだ?!」


 大神官長が一歩前に出たので、サンが盾を大神官長に向けてマルの正面に出て、バツがマルをまた背に隠してマルも一緒に半歩下がらせた。

 バツの背中からまた、マルが顔を覗かせる。


「そこの王太子と婚約したのは、愛と美と豊穣を司る女神の信徒マレニリアです。しかしバツと婚約しているのは私です」


 マルの言葉に「はあ?!」と大神官長は声を低く出し始めて、語尾は上げる。

 副神官長は小声で「何を言ってるんだ?」と呟いた。

 王太子は「お前、とうとうおかしくなったのか?」とマルを不気味そうに見る。

 王太子の「おかしくなった」の言葉に、魂が壊れた事を想像した大神官長は反射的に副神官長を振り返り、それを受けて副神官長は体を竦ませた。


「そうすると、お前は誰だ?」


 国王の言葉にマルは微笑みを浮かべる。


「マルですが?」


 そのマルの名乗りに、また大勢がイラッとする。


「マル。要らない煽りは()めといてよ」

「え?煽ってなんかないよ?でもスーのは要る煽りなの?」

「あたしは一切、煽ってなんかないでしょ?」

「大神官長に耳が遠いって言ったのは違うの?」

「さっきのあたしの発言なら、理解出来ないって方が煽りじゃないの?煽りじゃないけど。それにその後のサンの方が煽ってるし」

「俺?煽ってなんてないだろう?爺さんって言ったのは、ただ間違えただけだぞ?」

「いや、お前達、ちょっと待つんだ」


 国王が話を止めたが、バツが「そうだぞ」と受けた。


「そんな話は後にして、引き上げるぞ」

「いや、だから待つんだ」

「でもバツ?分かってなさそうだから、説明しなくちゃでしょ?」

「何言ってんのよマル。こいつらに説明してもしなくても、もう変わんないんじゃない?」

「確かに説明しても分からないかも知れないな。けど、この国王はまだ話が分かりそうだから、分かる様に伝えておけば後腐れ無いんじゃないか?権力者なんだろうし」

「いや、お前達、良いから待つんだ。そしてもう一度言う」


 国王はマルを指差した。


「お前は誰だ?まずそれを答えよ。お前は誰だ?」


 マルも自分を指差す。


「私はマルです。あ!ああ、ああ。神々の巫女ですよ?」

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