兄の思い
お久しぶりです。
兄の視点です。
私はあの子の兄だ。
あの子、私の妹はとても魔力が強く、将来を期待されていたが、身体が弱く、それ以上に心が脆かった。
本当に、心が脆かったのかは、今でも分からない。
ただ、心が本当に脆かったら、幼少期から続く病に心が負けていただろう。
だとすると、あの子は強かったのだろうか。
あの子の訃報が入ったとき。
「ああ、来てしまったか」
そう感じただけで、涙は出なかった。
あの子の生命を握った精霊王に、刃向かう勇気は私にはない。ただ、あの子の行く末を後ろから遠くで見つめるだけ。
なんと、最低な兄であったか。
慰める言葉も、あの子にとっては薬の一つにもならない。あのドクズとの恋をやめ、他の人にしろ。と言っても、あの子は耳も貸さない。
あの子にとっての唯一は、ドクズだったのだろう。
だから、結局は私が何を言っても、あの子のドクズへの気持ちは変わることがなかった。
あの子の一番は、私たち家族でも、あの子自身でもなく、あのドクズ。
生命を落としても、魂を精霊王たちに握られても、あの子の至上はドクズで、その為の対価は怖くなかったのだろう。
ただ、ドクズといたいが為に、あの子の長らえた生命は一瞬にして消えてしまった。
ゴーン、と葬送の鐘の音が聞こえた。
囲む棺桶に、あの子がいないことわ私は知っている。あの子はもう、人間の世界にはいないのだろうか。
あの子は、精霊王のもとへ行けたのだろうか。
あの子が精霊王のもとで、楽しく幸せになってくれるなら、感謝を捧げよう。
前を向けば、ドクズが涙を流し、憔悴していた。
頬が痩け、無数の涙の跡がこびり付いている。空になった瞳で棺桶を見つめている姿に、不謹慎だが嗤ってしまう。
「ざまぁみろ」
と。
私はあの子と精霊王の契約を知っている。
だから、あの子が結婚二年後に死ぬことも、悟っていた。
ドクズが、あの子を愛さないことを知っていたから。
ドクズにとってのあの子は、都合のいい道具だ。自己肯定感を高める為の、都合のいい道具。
今までずっと、都合のいいようにあの子を使ってきたことを、私は知っている。
だからこそ、
「ざまぁみろ」
と、口を動かすのだ。
あの子を救えなかった最低な兄は、ただ後悔しながら、ドクズを嗤う。
どうか、あの子が精霊として、幸せにやっめいることを祈りながら。
感謝します、精霊王様。
どんな形であれ、あの子と少しの時間を長く過ごせたのだから。
怨みます、あの子の元旦那よ。
あの子が長く生きたかもしれない未来を、潰したのだから。
ありがとうございました。
これにて、本当に完結です。
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是非、ご覧ください。




