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えーーー!!バルデウス様は天界の王子様ってこと!?
私もお父様もお母様も、驚きすぎて何も言えず固まってしまった。
だって、天使様にお会いするって言うだけでもすごく稀なことで、すごく貴重な体験なのに、
なんと目の前にいらっしゃるのはその天使様のなかでも王族であり王太子様なのだ……
私なんてこの国、ニヴリムの国王様にだってお会いしたことないのに――。
確かに、ムニアン様はバルデウス様の側近、とおっしゃっていたし、バルデウス様の方が立場的に高位の方だとは分かっていたのだけれど。
「まさか王子様だったなんて……!
バルデウス殿下とお呼びしなくてはいけませんね。
それにしてもすごいです!だからなのでしょうか、天界の結界を破ってしまうくらいの強さをお持ちなのは。
私はとてもすごい方を目の前にしているのですね!」
思わず手を祈るように組むと目の前に座るバルデウス様に尊敬の眼差しを向ける。
「あー。いや、王太子なんていったって天使は長生きだからまだしばらくは王位は継がないし、そんなすごいものじゃないさ。
それにほら、これから私はイーリッカの護衛として過ごすわけだろう?
だから殿下なんて呼んでいたらおかしいじゃないか。
慣れるためにも今から呼び方を改めておこう。
うーん、まあ、地界では私の名前は特に知られていないから名前はそのままでも良いかもしれないが……
よし!私のことはバルと呼ぶと良い。
ついでにムニアンのことは……ニアにしよう!愛称で呼ばれるなんてほぼ初めてだな。
いいね、旅がどんどん楽しみになってくる。」
バルデウス様は美しくきらきらした笑顔で、なんとも楽しそうにそうおっしゃった。
ムニアン様はそれを見て苦笑いを浮かべるものの諦めた様にため息をついていた。
え、ムニアン様、バルデウス様を止めないの?
……私、お二人を様なしの愛称でお呼びするってこと??
さすがにそれはまずいのでは、と焦って私は慌てて口を開いた。
「えっと……た、確かに殿下と呼んでいたら旅の間は目立ってしまって良くないかもしれませんね。
うーん、護衛に様をつけていたらだめでしょうか?
わ、私、天界の王子様を愛称で呼ぶなんて……恐れ多いのと、緊張と、あと少し嬉しいのとでどうしたら良いのかわかりません!」
最終的には困ってしまって天使様やお父様、お母様などをきょろきょろと何度も見て助けを求めた。
だって!私には判断できないわ、こんな重大なこと!
「バルデウス様はまた人を困らせるようなことを……。
ですが実際、旅の間は愛称で呼ぶ方がまだ自然ではありますね。
イーリッカ嬢、よろしければ我々のことは愛称で呼んで下さい。」
ムニアン様が困っている私対して、上手く話しを誘導してくださった。
こう言ってもらえればなんとか、愛称で呼んでも大丈夫なような気がする……本当かな!?
「そうですね――そういっていただけるのでしたらイーリカ。ぜひ愛称で呼ばせてもらいなさい。
ただし、目上の方に対する節度を持った対応を忘れないようにしなさい。
天使様方も、イーリッカと親しい護衛騎士ということでしたらイーリッカに対して敬語や様付けはしなくても良いと思います。
イーリッカは良く騎士の訓練場を使用しているので実際当家の騎士たちとも親しい間柄ですので。」
お父様が素晴らしい妥協案を出してくれた!
確かに、天使様たちから様付けや敬語で話されたら私、演技だと分かっていたとしても落ち着かないと思うもの。
「ほう、イーリッカは騎士たちと訓練しているのか?」
バルデウス様はお父様の発言に頷きながら私に質問をしてきた。
「ええ、そうなのです。個人的に一人で魔法の練習をすることもありますし、時々訓練に混ぜてもらうこともあります。
私、将来はイクイリオンを目指しているので!」
私はバルデウス様に勢いよく返事をした。
そう!皆の憧れ、中央都市イクイリオンで働くこと!
その中でも私は、治癒魔法が使えるので、魔法士を目指しているのだ。
私は――と言うよりも、世の女性が一度は夢見る魔法士……私も例に漏れず、絶賛憧れ中なのだ。
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