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後編

「これでいいか? 必要ならこの家燃やしてもいいが」


「あ、はい。大丈夫です」


 座るおっさん、もとい魔王の指先にライターサイズの火が灯る。

 魔王だと言うなら、異世界から来たと言うなら魔法の一つでも見せてくれと言った結果こうなった。

 というか燃やしてもいいが、じゃねーよ。よくねえよ。賃貸だって言ってんだろうが。


「……マジで召喚したの?」


「ボクが君に嘘を吐いたことが一度でもあった?」


「……ないな」


 指に火を灯すくらい何かしらのトリックでできるんじゃないか。西園寺の問いかけに残っていた疑念は消し飛んだ。

 西園寺は俺に限らず嘘を吐かない。可愛い女の子が嫌いな男がいないくらい当たり前の話だ。

 ただ、そうなると一つ気になることができた。


「でもさ、なんで異世界召喚? しかも俺の家で」


 ちょっとした思い付きでできることじゃないくらいは俺にだって分かる。そもそも非現実的な話だ。西園寺が言ったんじゃなかったら中二病も大概にしろよと思っていたことだろう。

 でも、だからこそ気になる。何が西園寺にそんな非現実的で西園寺をもってしても一週間もの時間を必要とすることをやらせたのか。

 この間、講義中におすすめのファンタジー小説を紹介したときだって「へぇ。まぁ、気が向いたら読んでみるよ」みたいな絶対お前読む気ないだろって感じの興味ゼロなリアクションとってたのに。


「君こういうの好きだろ? だから喜ぶかなと思ったんだけど……」


「どっちかと言うと俺が異世界に行きたかった」


「君みたいな凡人が行ったら五分ともたずに死んでしまうと思うけど。それでも行きたい?」


「あ、いいです」


 たしかに。これといって何か光るものがあるわけでもない俺が剣と魔法のファンタジー世界になんて投げ出されたらたぶん五分どころか一分ももたずに死ぬ。ゴブリンとかにボコボコにされそう。

 というかこいつ俺の為にやってくれたのか。何それ嬉しいな。めちゃくちゃから回ってる感あるけど。


「ほら、せっかくだから何か話してみたらどうだい? 本物の異世界がどんな感じなのかとかさ」


「むっ、たしかにそれは気になる。えっと、魔王さん。魔王さんが住んでる世界ってどんな感じなんですか?」


 視線を向けると魔王はコップに入った麦茶に口をつけながら首を傾げた。


「どんな感じ? 随分と漠然とした質問だな」


「あ、えと……あ、例えば魔王さんがいるなら勇者とかもいるのかとか、あと魔王さんに部下とかいるのかとか」


「ふむ。勇者はいるぞ。それから俺の部下だと四天王とか」


「四天王!?」


 なにそれめっちゃわくわくする響きだなおい。


「四天王に興味があるのか?」


 無言で首を勢いよく縦に振る。すると魔王は顎に手を当て少し考える様な仕草を見せた。


「どうやらここは俺のいた世界とは別世界のようだしな。情報が漏れることもないだろう。いいぞ。話してやる」


「……!」


 本物の魔王に本物の四天王。やっぱりそれぞれに得意分野があったりする感じなんだろうか。炎とか氷とか。種族とかもきっと凄いんだろうなぁ……。吸血鬼とかいるかな。


「そうだな。まずは四天王最強の男から話そうか」


「四天王最強……吸血鬼とかですか?」


「ぬ? いや、四天王に吸血鬼はいるがあれは最弱だぞ」


「まじかよ」


 勝手な印象だけど吸血鬼って凄い種族だと思ってた。いや、他がもっと化け物レベルに強いのか。作品によっては最強種族の吸血鬼以上とかどんな強い奴だよ。

 思わず身を乗り出す。魔王はコホンと一つ咳ばらいをしてこちらを見やる。


「ゴキブリだな」


「……は?」


「だから、ゴキブリだ」


「……四天王最強のゴキブリ?」


「そうだ。奴は強いぞ。耐久力、スピード、パワー、どれをとっても俺と同格だ」


「魔王と同格のゴキブリとか嫌すぎる……」


 なにそれテラフォーマーズ?


「あの……二番目に強いのは……?」


「ネッコだな。あの愛らしさと毛並みと自由奔放な性格は四天王でも随一といって過言ではない。彼の者を敬意を示してお猫様と呼ぶ者も居るくらいだ」


「猫じゃねーか」


 四天王の半分虫と動物で占めんな。

 つーか、四天王のno.1とno.2が虫と動物ってどういうことだ。


「あの……四天王最弱の吸血鬼について教えて貰えますか?」


「む、三番目に強い者はいいのか?」


「……なんか、この流れだと馬とか出てきてもおかしくないですし」


「むっ! よく分かったな。ウーマの脚力は他の追随を許さんぞ。ちなみに二足歩行だ。惜しむらくは馬面であったことか」


「そりゃ馬だからね!」


「もし馬面でなければ四天王no.2の座は奴のものだっただろう」


「だろう、じゃない」


 四天王の半分動物じゃねーか。最強が虫の時点で酷い有様なのに三枠おかしな奴が埋めてんじゃねーか。魔族もうちょっと頑張れよ。


「さて、では四天王最弱の吸血鬼、ベンティ・アドショット・ヘーゼルナッツ・バニラアーモンド・キャラメル・エキストラホイップ・キャラメルソース・ランバチップ・チョコレートクリーム・フラペチーノについて語ろうか」


「スタバかよ」


「通称ベンキだ」


「もうそれベンティで良かったろ。なに? いじめられてんの?」


 よーく分かった。

 この異世界ろくでもないわ。

 どうにかしろよという意図を込めて西園寺を見る。

 するとこちらの視線の意図を察したのか西園寺は俺の顔を見ると微かに微笑んだ。


「ねぇ、ところでボクお腹すいたんだけど」


「自由か」


「むっ、別世界の飯か。楽しみだな」


「あれ? これ俺が作る感じ?」


 分かった。作るからそんな目で見るな。

 というかただでさえ材料一人分なのに。絶対俺の分ないじゃん。

 立ち上がる俺を見て西園寺が白々しく申し訳なさそうな顔をする。


「君にばかりやらせてしまって悪いね。そうだせっかくだから勇者の話を聞かせてもらおうよ」


「いや、どうせろくな勇者じゃないから別に」


「む、なんだ? 勇者の話が聞きたいのか? あれはかなりの強者だ。長年たったの一度も外に出ることなく家の中で鍛錬を重ね言葉を使わずとも意思を伝える「床ドン」をマスターした男だ」


「ただのニートじゃねーか!!」


 いや、ほんと聞きたくなかった。

元々はもっと色んな異世界の種族を召喚する連載の予定だったのですが書いてる時間ねーなって気づいてとりあえず魔王の話だけで投稿してみました。

読んでくれてありがとうございます(*´ー`*)

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