序章
序章
何十年も前のこと――。
「鍵の管理者」と呼ばれる組織が秘密裏に立ち上げられた。創立時は、二人だった。
年数を重ねるごとに、人数も増えていった。
そんな中、創立者の一人が絶対に外に出してはいけない、「軸の鍵」を、持ち出してしまった。
組織内は慌てた。そして、もう一人の創立者を全員で問い詰めた。
「どうして、止めることができなかったのか」
「なぜこうなることを予測しなかった」
「責任をもってやめろ」
数々の言葉を浴びせている中、その言葉で全員が我に返った。彼を辞めさせることができないと、悟ったのだ。現段階でまとめ役は彼しかいない状況に加え、細かなことを何も知らないのだ。今まで創立者の二人に任せっきりだったのだ、無理もない。誰も代わりを務められない、それが分かった瞬間、誰も言葉を発しなくなった。
創立者もそれを分かっていた。今まで黙って皆の言うことを聞いていたが、静まり返った中で約束をした。「必ず、奴を捕まえる」と。そして、さらにこう告げた。
「奴を捕まえるために、外に出たい。だから、代理の者を立てさせてくれ」
これを聞いて全員が猛反対した。今しがた裏切られたばかりである。当然かもしれない。だが、彼は何度も説得した。何度も、何度も――。そして、ある物を置いていくことを提案したことによって、全員が渋々ではあったが、納得したのだった。
その後、すぐに全員で代理人を選んだ。全員、その者にすべてを託した、創立者を除いては。
それから毎日創立者は代理人に教え込んだ。そして、すべてを教えた創立者は、事件から一か月後に旅立った。全員、帰ってくることはないだろうと信じてやまなかった。
そして、現代――。
今もなお、続いている組織・「鍵の管理者」は、今日も今日とて戦っている。
物語の登場人物と、その力を借りて――。
「やっと見つけた。これ以上は、逃げられると困るんだ」
少年は真っ白な仮面――目と口の部分が空いているだけの白い仮面――を顔へつける。その仮面に手をかざせば、少年の姿はがらりと変わった。その姿は、物語の中に出てくる王子様のようであった。剣を抜き、それを構える。
「じゃあ、始めようか」
少年は地を軽やかに蹴った。
相対しているは、同じ物語の敵だ――。