第九話 止まった時計の真実
タイトル回収回です。
主人公が自分自身と向き合います。
黒の女王の顔は、俺だった。
正確には、大学時代の俺。
裏切られた日のまま止まった俺。
女王は言う。
「置いていくのか」
その声は震えていた。
「傷ついた俺を。惨めだった俺を。誰にも選ばれなかった俺を」
胸が痛んだ。
こいつは敵じゃない。
俺が閉じ込めてきた、過去の俺だ。
机の上にあった懐中時計。
元恋人にもらった時計。
裏切られた日から止まったままの時計。
本当は壊れていたんじゃない。
俺が止めていた。
進んでしまえば、幸せだった記憶まで過去になる。
だから俺は、壊れた時間に住み続けた。
「俺は、お前を消したいわけじゃない」
黒の女王が睨む。
「なら、なぜ進む」
「進みたいからだ」
俺は一歩近づく。
「お前が痛かったことは、なかったことにしない」
また一歩。
「裏切られて苦しかったことも、許せなかったことも、全部俺だ」
黒の女王の目から涙が落ちた。
「じゃあ、俺はどうすればいい」
俺は手を差し出した。
「一緒に来い」
黒い薔薇が白く変わっていく。
ミオが静かに見守っている。
ラビが懐中時計を開く。
針は十一時五十九分。
俺は時計に触れた。
「過去は消えない。でも、俺はもうそこに住まない」
カチリ。
針が動いた。
十二時。
鐘が鳴る。
黒の女王の姿が崩れ、幼い俺のような影になった。
俺はその影を抱きしめた。
「よく、生きてたな」
影は泣きながら消えた。
いや、消えたんじゃない。
俺の中に戻った。
時計塔が白く輝く。
これで終わった。
そう思った瞬間、塔の外から巨大な黒い手が伸びてきた。
ラビの顔色が変わる。
「まずい。黒の女王を失った物語の残骸だ」
「まだ敵がいるのかよ!」
「人生は最終回前が一番きつい!」
黒い手がミオを掴もうとする。
俺は走った。
レイは過去の自分を受け入れました。
次回、最終決戦です。
次話
第十話 恋は遅刻すると負ける




