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人間不信で引きこもっていた俺、買い物帰りにアリスみたいな彼女と白兎に出会って人生が変わった件  作者: Yama


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第一話 止まった時計と白兎

はじめまして。

これは、人生を諦めた青年が、少し不思議な少女と白兎に出会い、もう一度歩き出す物語です。

雨の音だけが、部屋を満たしていた。


カーテンは閉め切られ、昼か夜かも分からない。

机の上には、止まったままの懐中時計。


あの日から、俺の時間は止まっている。


親友だと思っていた男に、恋人を奪われた。

謝罪はあった。

けれど、そこには涙も後悔もなかった。


「悪いな、レイ。でも好きになったんだから仕方ないだろ?」


仕方ない。

その言葉ひとつで、俺の四年間は終わった。


以来、俺は世界から降りた。


朝霧レイ、二十六歳。

無職。引きこもり。人間不信。

履歴書に書けるものは何もなく、書けないものだけが増えていく。


冷蔵庫が空になったので、俺は仕方なく外に出た。


夕暮れのスーパー帰り。

横断歩道の前で、信号が変わるのを待っていた。


その時、風が吹いた。


白いスカートが揺れる。

銀色の髪が、夕焼けをすくったように光る。


振り向いた先に、彼女がいた。


アリスみたいな少女だった。


赤い瞳が、まっすぐ俺を見る。

その瞬間、世界の音が消えた。


彼女は小さく首を傾げる。


「……迷子?」


いきなりだった。


「いや、どちらかと言えば人生で迷子です」


なぜ正直に答えたのか、自分でも分からない。


その時、足元を白い何かが走り抜けた。


うさぎだった。


ただし、ベストを着ていた。

しかも懐中時計を持っていた。


「まずいまずい、遅れる!」


喋った。


俺は疲れているらしい。


白兎は俺を見上げ、きっぱりと言った。


「君、恋が始まる時間だよ」


「病院ってどこですかね」


「君のじゃない。世界のだ」


次の瞬間、横断歩道がトランプ模様に変わった。

空には巨大な時計。

信号機は薔薇になり、電柱の上で猫が笑っていた。


少女が俺の手を掴む。


温かかった。


「行こう、レイ」


「俺、名乗ったっけ?」


「物語は、だいたい知ってるものから始まるの」


路地の奥から、黒い鎧の兵士たちが現れる。

胸にはスペードの紋章。

目は血のように赤い。


白兎が叫んだ。


「走れ、レイ! 恋と締切は待ってくれない!」


「締切は関係ないだろ!」


「人生には全部関係ある!」


少女に手を引かれ、俺は走った。


止まっていた時計が、胸の奥で音を立てる。


カチリ、と。


俺の人生は、その日から動き始めた。

読了ありがとうございます。

次回、白兎が現実的すぎる助言をします。

※関連動画:この物語のミージックビデオも作りました。是非、さちらも視聴いたたけましたら幸いです。

https://youtu.be/D6b8Cfu35qc

次話

第二話 白兎は就活を勧めてくる

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