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穿つ狂気

 何も言わず、落下点の真下にやって来た。そのままあぐらをかいてから両親に謝罪を述べる。

 何でここに来たのかも分からないが、勝手にいなくなった僕を今だに探しているのかもしれない。苦労も心配も絶望もかけたと思う。それなのにいまここで死地に自ら立っている。もうどうしようもないから。

 僕が使う重積魔術は七賢人を全て呼べるわけではない。知識として賢人は七人いる事を知っており、各々が特別な特性を持っていることが分かっているだけで、1体呼ぶのですら最初は難儀した。頭が分裂している様な錯覚と凄まじい頭痛、脳に負担がかかっているのを身を持って知った。今では同時に三体の賢人を呼び出せる。

 しかし、魔女が残したアレは魔素が結晶化する程の密度で凝縮され、術式は解読できているがあの出量の魔素が地面を破壊しながら地殻を超え星の中心にまで至るエネルギー量がある為、防ぐ手段が必要だ。

 重積魔術を展開し各属性の結界魔法を多重に展開していく、賢人を呼び出す度に結界が多重構造化し、賢人の能力で結界同士が結び付き、圧倒的な防御能力を築き上げていく、僕は魔女が残したアレを穿つ狂気とでも呼称する。それに対応している間も魔の森からモンスターが襲いかかってくるのをまだ戦える正規軍が守ってくれているから、僕は穿つ狂気に専念できている。

 5体目の賢人を呼び出した時、失いそうになる意識をレオが支えてくれる。レオの精霊魔法による補助を受け、7種の結界を同時展開しそれぞれが干渉しながら成長させていく。

 更に6体目に賢人を呼び出した時、目や耳などから血が流れているが気にしている余裕はない。結界が光り輝く、随分と時間が経っていると思うが、穿つ狂気はゆっくりと堕ちてくる。

 それは上空にいる天使族が光魔法で穿つ狂気が落ちるのを遅延させていると共に、周りには正規軍の本隊が到着し、防御陣を築き始め、魔法使いとして能力が高いものは穿つ狂気を消滅または無効化する方法を議論している。

 今ではとんでもない人数がこの爆心地となる場所に集っている。星が終われば何処にいようと変わらない隠れていようが逃げれる者は一人もいないだろう。

 各国の聖女も集まり、各々がその特殊能力で穿つ狂気を削っていたり、一部分だが崩壊させてはいるがあまりにも巨大な魔素の塊を減らせているとは言い難い。

 そして急速に穿つ狂気が堕ちてくる。天使族が限界に達したのだろう。僕は準備不足だったが7体目の賢人を呼び出すと、いままでの頭痛や人数分の頭脳を同時展開する並列思考の負荷が一気に無くなり、それぞれがいま組み上げている八つの属性から展開した結界が完成して行く、すでに術式は周りはじめ僕の手から離れ穿つ狂気に接触して世界が光に包まれ僕は意識を手放した。


 あの時、死んだと思ったが失った魔力が自然回復した時に焦げ臭い匂いと共に目を覚ました。辺りには倒れている人が多くいたが外傷は無かった。

 もう少し遠くに目を向けると辺りに何も無かった。爆発で消し飛んだ様で、僕がいる数十メートルから先にあった森は跡形もなく消し飛んでいた。爆発は数キロメートルで地面を抉ったが僕がいた場所は結界魔法が一番強固な中心だったから爆心地であり結界の中心だけが助かった様だ。

 この戦いで数百万人が死んだとされ、魔女の死も確認され、魔界の門も消滅した。


皇暦314年 日の月


 魔女は討ち取られた事で、やっと平和な時代がやって来ると多くの人は失った悲しみから回復し明るい雰囲気が流れていた。

 魔の森も消滅し魔界の門が無くなったことでいままであったいつか来る恐怖は無くなり新の平和だと喜ぶ声も聞こえる。

 僕はあの戦いで身体を酷使しすぎにより魔素を操作する何らかの器官が失われた様で魔法が使えなくなった。だが魔女との最終決戦で最大の戦果を出したとして侯爵位を賜り、不自由なく暮らせている。

 またロギアング公爵家の男子は先の戦争でレオ以外が亡くなっており、レオが家を継ぐことになった。

 僕はできるだけレオを同じ派閥の上位者として、親しい友人としても元の世界での知識を使って支え続けている。

 友人の墓の前であれからあった事を話している。これで10回目、毎年変わらずに花を供え、あの時はお酒を嗜む程の歳でも無く、二人が生きてればこうやってお酒を飲みながら会話も弾んだのかもしれないと妄想しながら一人で話している。

 僕も結婚し家庭をもった。世界は新たな時代へと進んでいく、この一時の平和を享受しながら生きていく、誰かが言った通り平和とは次の戦争までの期間でしかない。

 九大天の魔女は死んだ。だが新たな魔女が誕生した。新たな魔女はその特性の色を冠しており、九人の魔女はそれぞれ強大な力を持って生まれる。

 人類ははじめ、魔女を隔離したが今では各国が持つ最大兵器として戦争に投入される。

 魔女たちはあの九大天の魔女の様に最初から狂気に染まっているわけではない。種族に関わらず普通の両親から生まれ、多くの人間と同じように育ち、鑑定の儀にて魔女と神託を得る。

 魔女による繁栄と魔女による被害と人間の欲望が増幅され、終わりなき戦いの時代が始まる。

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