二十二封 魔女の殺し方。
汚れを知らないレッドカーペット。壁には無数の絵画。抽象なものもあれば、風景画なんかもあった。その中でも、より一層目を引くものがある。題名なんかは書かれていない。二つの種族? が向かい合ってる絵が多かった。それか足元に屍があるなど。決して内容を理解は出来なかった。だが仲睦まじいものではないと、自然にそう思わせる、察せる絵だった。
「仲良くしてほしい」――なんて思うのは、私が彼らの立場にいないからだろうか。綺麗で美しい絵ではあるが、内容は笑顔で見られたものではないと、そう思えてしまうのが、どことなく寂しい。
壁をなぞり、絵画をなぞり。低くない階段を上り終えた。左右に広がる廊下。確か書庫は、左。先に窓を開けて、帰りに閉めよう。
「えーと、間取図によれば、多分ここかな」
私より背丈の高く、木製で凹凸に柄の入れられている。手を少し開き、左右の扉に手をかけ、ゆっくり押す。先に見える景色は、大きな机がいくつかと。少し見える角度を変えてみれば、無数の天井まであるような大きな本棚に、空きなど見当たらないほどびっしり埋まっている本達。所々はしごがかかっている。――でもまずは窓を開けないと。
階段は本棚の奥の奥。上った先には左右で分かれている。右側に行くと、窓がいくつか。手前から順に開ける。
真ん中に一つ。窓ではなく、ガラスの扉があった。だいぶ固く、音を盛大に鳴らしながら開く。と、そこはバルコニーだった。机と椅子もあって、さながら森を眺めながら読書をする、といった感じだろうか。だが生憎、ここの空は変わらない。木々から差し込む槍を見て、隣に居座る生命を感じる日は来ない。
いつかは味わってみたいものだと、柵から手を退け、あと少しの窓を開けて回る。当然風なんてものは吹いていない。なのに窓を開ける? なんてことも思ったが、空気を入れ替える、ということは叶うのだろう。こういうのは、気持ちが大事。
こうも数の多い本に見下ろされることもない。地域の図書館なんかは、天井近くまで本棚は高くはないし、ここまで本の数も多くない。――勘だけど。
軋む木を撫で、流し目で題名を読み、今は亡き著者に思いを馳せる。数多の本を見て、唯一の本に声を零した。
「え……?」
「魔女の殺し方」
――なにこれ。魔女の殺し方? なんでそんな物騒なものが、魔女さんの館の書庫に? いや、流石にフィクションだろう。そんな仲間割れ地味たことを、あんな温厚そうなひとが。
そう思うと同時に、それを否定する声が漏れる。
「でも、温厚な人ほど、怒ったら怖いとか、怒らせてはダメ。なんか言うよね」
中身を見たい。読みたい。何が書かれているんだろう。誰が書いたんだろう。そんな方法があるのか、ないのか。
――貴方を、殺すことは出来るのか。
つい手に取り、表紙をめくろうとした所で罪悪感が働いた。これの内容がもし、仮に本当だったらどうする? 魔女さんに、何事も無かったかのように振舞うことが出来るの? 出来るとしても、そうだとしても、ここの主は魔女だ。魔女の住む館で、魔女と接するのに、興味本位だとしても、手に取るべきなんかじゃない。ましてや読むなんて。気が知れない。さっさとほかの部屋を散策しよう。




