二十一封 お館の散策。
魔女さんの部屋を出る。が、来た時より辺りが明るい。特にろうそくが変わったわけでもなさそうなのに、確かに来た時よりも明るい。ここに慣れたのか、はたまた本当に明るいからなのか。最初来た時の不気味さというのはなく、ただ豪華で綺麗なお館と化している。先がよく見え、壁や天井の装飾なんかもかがやいて見える。念のためライトやその他のグッズなんかは持ってきていたが、今回それの出番はなさそうだ。まずは一階の大きな部屋、食堂に行こう。
ホールを右に曲がり、少し進んだ先の部屋。そこが食堂。重く大きい扉を、目一杯両手で押す。一番最初に目に入るのは、シャンデリアに照らされ光る、とても大きなテーブルだった。両端と側面に向き合うように置かれる、いくつかの椅子。夢に見るような縦に伸びている椅子。やっぱりここはお館ではなく、お城なんじゃないだろうか。そこまでの大きさはなかったとはいえ、ここまで各地周辺、隅々まで凝っているデザインに装飾なんて、信じられない。
白いテーブルクロスに皺一つ許さない厳粛さ。お皿なんて一つもおかれていないけれど、ここに並ぶ品はどんなものでも輝いて見えるのだろうな。一度は、見てみたいかも。魔女さんが部屋から出られるようになったら、その時はきっと。
そしてその奥はキッチン。今日食べたパンケーキのお皿なんかはもう洗われているのだろうか。少し、見てみたい気持ちもある。だが、仮にも食品を扱うところ。許可は取っているとはいえ、あまり容易に立ち入るスペースでもないだろう。
次、また次と部屋を覗いては立ち去り。時には中に入り様子を窺ったり。一階の部屋を回り終えた。が、広さが広さなだけあって、随分と体力を奪われる。今日のところは家で休んで、後日また二階を散策しよう。
そうして、魔女さんの部屋に一度戻り、今日は帰る旨を伝えて館を後にした。森に戻り、町に戻り、スマホを確認してもやはり時間はさほど進んでいない。あそこの時間が進まないというのに、嫌でも納得をしていった。
翌日。朝起きて、お昼ご飯を済ませて、お館まで来ていた。慣れた手つきで扉をノックし、笑顔の魔女さんを前にする。
「いらっしゃい、お嬢さん」
「こんにちは、魔女さん」
引かれた椅子に座り、指の弾ける音の数分後にやってくる楽しい行進に身を委ね、今日の始まりを雑談とともにする。
「今日は二階の散策をなさるのよね?」
「はい、昨日は一階を終わらせたので、今日は二階を散策するつもりです」
「そこでお願いなのだけれど、書庫の窓を開けてきてくださらない?」
「書庫の窓をですか?」
「そう。ここの空間全土は私の支配下にある。だから、ある程度のことはここに居てもできるのだけれど」
「あの書庫だけ何も手出しが出来ないんですの。ですので行きに開けて、帰りに閉めてくださればいいわ。お願いできないかしら?」
「わかりました、それもしてきますね」
「えぇ。終わったらまたわたくしの部屋にお寄りなさいな。スイーツを用意して待っているわ」
「はい! 楽しみにしていますね」
浮足立つ様子を隠すことなく、私は笑顔に笑顔で返し、ご褒美のスイーツを楽しみに二階へ向かった。




