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手紙と魔女と御茶会と  作者: 野花 智
第二幕 始まったお決まり事。
22/29

二十封 探し物、驚異の大変さ。

「あったあった」ドレスを手ではたき、お目当ての物を抱えて歩いてくる。それは紙と羽ペンとインクだった。


「この館の間取り図と、探し物を書いておきますわ」椅子に座り、紅茶を飲みながらそれらを見つめる。宙に浮くそれらは、インクをポチャッとつけて、紙に次々に綴り始めた。

 

 それを待っている間にパンケーキを平らげた。それを見るなり指でパチンと合図らしきものを送り、食器やカトラリー達は浮遊して来た道を戻っていった。魔女の力というのは便利なものだな。今の時代に生きていたのなら、どれだけ役立つことか。――そういえば、別の魔女はいないんだろうか? 魔女さんが最後の魔女? なんで魔女さんはここから出られないんだろう。

 

「探し物の期限は四月三十日。魔女の力がより一層高まる唯一の日。それまでに探しきっていただければ結構よ」

 

「四月三十日……。まだ半年ありますね」のんびり探すかぁ。なんて思っていた時に、間取り図と探し物のリストが書き終わった。それを手に取り、ペラペラと確認した後、ひらひらと私の手元に来た。

 

 ――いや、分かっていた。最初この地に足を踏み入れた時から思っていた。そりゃそうだよな、なんて納得もする。だが。

 

「この部屋の量は何!?」


「何って、普通じゃありませんこと?」


「いやいや普通じゃないですよ。確かに大きい館だなとは思っていたけど……」これは半年で全部の部屋を回れるのだろうか。気が滅入りそうだ。――それで、何を探せばいいんだ……。


「これ全部!?」


「そうよ、それ全部」


 嘘だろ。馬鹿多い部屋の数に、馬鹿多い物の数。これを半年でやれだって? 早急に取り込まないと、間に合わないんじゃ……。魔女さんは優しいななんて思っていたけど、違ったかもしれない。とんだ鬼畜だ。


 ――いや待てよ? 確かここは昔のある時間、日にちから止まっていて、時間は進んでいないんじゃ?


「ちょっと待ってください。ここは時間が進んでいないんですよね? なのに何故期限と、力が強まる日があるんですか?」

 

 「あぁ、それはね」

 

 ――確かにここは時間が進んでいない。けれども四月三十日に力が強まるというのは、代々魔女の本能に刻まれしもの。たとえここの時間が進んでいなかろうが、結界で守られていようが、()()()()()


 成すすべがなかった。今日のところはとりあえず館を散策して慣れよう。


「お昼ありがとうございました! 美味しかったです。私は館を散策してきますね」


「もう行っちゃうんですの? まだまだ期間はありましてよ?」


「まだまだって……。半年でこの量の部屋を全部と、この量の探し物はきついですよ」


「いえですから、四月三十日というのはここを出た時の話。逆も然り、ここを出て四月三十日になる前に終わらせればいいんですのよ?」


 そんなこと出来るわけ……。――そうか。ここは時間が進まない。でもここを出て四月三十日になるまでに終わらせなきゃいけない。ということは、四月三十日までに探し物をここに居て終わらせればいい……? 時間が進まないということを上手く利用すれば……。


 「でもいち早く慣れておきたいので。回り終わったらまた戻ってきますね」


 「そうですか……。そうですよね、いいでしょう」一瞬暗い顔をするも、すぐに微かな笑顔を取り戻した。


「フューレン。お嬢さんを傷一つ付けず、私の部屋に帰すこと。よろしくて?」主人にそう命じられ、カーと返事をし頷く。それを見るなり満足そうに笑う魔女さん。

 その笑顔に送られ、私とフューレンは二度目の冒険に足を踏み入れた。

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