第九話 その頃の二人は……
ガルゼン視点
「領主館が襲撃されただと!?」
帝都の屋敷で、俺とアレンは大声を上げて驚いた。
「父上、兄上、落ち着いてください。まずは報告を最後まで聞きましょう!」
「そ、そうだな。取り乱した。引き続き報告を」
俺はケイルのお陰で落ち着きを取り戻すと、続きを聞くことにした。
「領主館にいた人は全員死亡又は行方不明になっております。マリア様も行方不明になっておられます」
「そうか……分かった。一体誰の仕業なんだ……」
少なくとも俺はそこまで恨まれるようなことはしていない。そうなると、アレンとケイルか?いや、この二人は基本帝都にいるから、この二人が理由でゲルディンの屋敷が襲撃されるとは考えにくい。エリスも、同様の理由で否定出来る。そうなると……
「マリアが何かやったのか?」
マリアは平民を蔑むような態度をいつも取っていた。誰かに恨まれる要素は十分にある。
「取りあえず、犯人は分かっているのか?」
「いえ、まだ分かっておりません。ただ、死体の状態と場所から推測するに、襲撃犯は三人いると思われます。殺され方が違いすぎますので」
「なるほど。具体的には?」
「まず、毒が塗られた剣で首を切られた者が七名。短剣の投擲により殺された者が二十六名。胴を両断された者が二十八名です。これらがそれぞれ屋敷の入り口付近、謁見室の左側、謁見室の右側にありました」
「なるほどな……」
そこまで殺され方が分かれるというのも珍しい。それにしても、僅か三人で屋敷を制圧できる辺り、侵入してきた人間は最低でも俺とやり合える強さは持っているだろう。
「ちっ……ちゃんと隠蔽はしたんだろうな?」
「はい。騒ぎを聞きつけた領民には、家具が倒れて死傷者が出たと言っておきました。事実を知る者には緘口令を敷いてあります」
「そうか。それならいい」
領主館が襲撃され、中にいた人が全員死亡又は行方不明になったなんて領民知られてしまったら、ハルドン伯爵家は一気に衰退してしまうだろう。それだけは貴族の誇りにかけて、何としても回避しなければならない。
「あとは犯人を捜せ。屋敷を襲ったんだ。相応の代償は払ってもらわないとな」
「分かりました」
部下は頭を下げると、部屋の外へ出て行った。
「あとはガルド公爵にも伝えておかないとな」
マリアがガルド公爵の息子、ハルスと婚約をしている。緘口令を敷いたとはいえ、彼には真実を伝えておかないとマズいだろう。
「……アレン、ケイル。お前たちにもこの事件の調査を任せる。頼んだぞ」
「分かりました父上」
二人はそう頷いた。
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ガルド視点
「ほう。ガルゼン伯爵の屋敷が襲撃されたのか」
屋敷の執務室で、俺は諜報部員から報告を受けた。
「それで、マリア嬢の生死は不明なのか。まあ、奴隷商に売られたか、殺されたかのどちらかだろう」
ハルスの婚約者としていい働きをしてくれた彼女だが、ここまで計画が進めばもう要は無い。消えたところで損失は無いに等しい。
「犯人は誰か分かったのか? 犯人を捕縛して、ガルゼン伯爵に恩を売っておくのも悪くはないだろう」
ガルゼン伯爵には最後まで私のことを善人と見て欲しい。その方が、万が一もなくなるだろう。
「状況から推測するに、マリア様がお招きした二名の客人だと思われます」
「そうか。名前は? 容姿は?」
「はい。名前はカインとノアです。二人とも銀髪で、かなりの美形ですね」
「名前も容姿も分かっているのか。よし。探せ。そして連れてこい」
俺は部下にそう命令した。
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