第9話 困惑
「ねえ」
聞き覚えのある声がした。
「聞いてるの?まさか意識がある人間がいるなんて思わなかったわ」
目の前にいたのは見た目こそ美鈴だが、美鈴じゃない。
「ちょっと?無視しないでくれる?」
「……誰だ、おまえ」
「随分偉そうね、人間ごときが」
こんなの美鈴じゃない。 美鈴の姿をしたそいつは俺たちを見下している。
簡単に言えば身体だけ乗っ取られているような。
「そうねー。人間に教える必要はないわ」
「………美す、ずさ……」
するとそいつは、ただならぬ雰囲気の美鈴に恐怖をおぼえ、涙を流す雪那に近づくと、
「人間に生きてる価値はないわ」
そう言い放ち、そいつの手元が光ったと思えば、一瞬にして雪那が血だらけになって倒れていた。
頭が追いついていなかった。意味がわからなかった。なんで大事な妹が目の前で血だらけで倒れているのか。
「雪那⁈おい‼︎何なんだよ‼︎何が起きてんだよ‼︎」
「うるさいわね。大丈夫よ、次はあなたよ」
近づいてきたそいつに感情的になった俺は敵わなかった。いや。どちらにしろ敵う気がしなかった。
光ったそいつ手は俺に一瞬の激痛を与え、意識が途切れた。
▽ ▲ ▽
「ねえ。真也!雪那ちゃん!ねえってば……起きなさい、よ……」
ぼんやりと声が聞こえるような気がする。
気がするだけで、意識は夢の中にいるようで、ふわふわとした感じではっきりしない。
ただ目の前が真っ暗で右も左も、上も下わからない。
死んでしまったのではないか、俺は。
「……ちょっと危険だけど、これしか」
「あ"……ぅあ」
「ごめん、真也。雪那ちゃん。ちょっとだけ我慢して」
あ、れ………?蝶?なんで………
「ん……?え……俺生きて、る?」
「真也‼︎」
「三夏?」
恐らくここは地下水路とかだろう。
異臭が漂うこの空間。暗闇に水が静かに流れる音だけが聞こえる。
そんな場所の狭い道に座り込んでいる三夏の膝の上に雪那は寝ていて、動かない。
「……雪那は‼︎雪那は⁈生きてるよなあ‼︎生きて……」
「……生きてるとは言えないわ。ごめんなさい。生死を彷徨っているところよ」
絶望だった。死んだと言われたわけではないのはわかっている。
「処置はしたわ。一応ね」
そんな声すら俺には聞こえていなかった。
再び目の前が絶望で真っ黒に染まっていく。
「病院。病院に連れて行けば____」
息苦しい。
「病院では治せないわ」
「なんでそんなことが言えるんだよ‼︎」
静かな空間に俺の声が響いて消えていく。
それっきり三夏は口を開かない。
三夏が悪いわけじゃないのに。
俺は一体なにをやっているんだろうか。
「悪い。俺どうかしてる」
「……うん。一つ聞いてもいいかしら」
苦しそうな顔をしながら、雪那の頭を撫で、こちらを見た。
俺は頭を一度だけ小さく上下に振った。
「お姉ちゃんが、やった?」
俺は目を見開いた。
どうして三夏がそんなことを知っているのか。
同時にあの非現実的な受け入れたくない光景が浮かび上がった。
「なんで知って……」
「私とお姉ちゃんは………なんでもないわ」
何を言いたかったのだろう。
「そ、そうだわ!服。着替えなさいよ、持ってきたから」
三夏は明らかに話をそらした。
話したくないのだろう。なら無理に聞くこともない。気になるが……。
「早く着替えなさいよ。反対向いてるから」
服を受け取り、来ている服を見てみると、確かに赤黒い色で染まっていた。
あぁ。あの時のか。
そこでふと疑問が浮かんだ。
俺はなんで無傷なんだ?
身体のどこも痛くない上、暗くてよくは見えないが、切り傷一つ無いようにみえる。
雪那なんて、今もボロボロだというのに、なぜ俺だけ。
「着替えたの?」
「あ、悪い。まだだ待ってくれ」
というか別に俺は見られても問題ないのだが。裸を見られるわけでもあるまいし。
手早く着替え、脱いだ服を畳んでおく。
「いいぞ」
「じゃあ、行くわよ」
「ん?」
「家に行くわよ。ほらグズグズしないで」
そう言うと三夏は軽々と雪那を世に言うお姫様抱っこをして立ち上がった。
重い方では無いと思うが、軽くも無いであろう雪那を軽々と……。
「俺が変わって雪那抱いてくぞ?」
「大丈夫よ。全然軽いわ」
歩き出した三夏の後ろを追いかけた。
お久しぶりです。前回から2ヶ月ほど時間が空いてしまいすみませんでした。。。
更新が早くなるよう努力はしますが、期待しないでください...(苦笑)
久しぶりすぎて口調が迷子だった場合はすみません^^;今回も楽しんで頂けたらなと思います!また、次回!
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