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33話

■33話



 ドルセアは、使者からの親書を受け取っていた。

 

「将軍、どうなさりました?」


 ドルセアの表情が暗いのを、副官は気にしていた。

 

「ああ、レジスタンスが南砦を落としたらしい。なので、早急に中央砦に向かえとのことだ。」


「しかし・・・」


 ドルセアは悩んでいた。ここヨーレルとの国境の戦闘は、島の攻略を隠すためのダミーだった。しかし、このところヨーレルは反撃の機会をうかがってる節がある。

 今ここでドルセアが戦線を離脱するということは、反撃のきっかけを与えてしまうことになりかねない。

 ヨーレルの兵とその装備を相手に戦闘をしたら、この兵力と装備ではあっという間に勝負はつくだろう。そして、首都はレジスタンスとヨーレル軍の両方と戦うことになる。これはチャーズの滅亡を意味するのだ。

 

 ドルセアは生まれも育ちもチャーズであったが、祖父の時代にチャーズにより侵略された国の末裔であった。そして両親からもその国のことを聞かされて育っていたため、チャーズを祖国と思う気持ちはそれほどなかった。軍に入ったのも侵略された国の民は奴隷同然の扱いを受けていたため、その差別が比較的少なく出自が出世に影響しにくい軍を選んだだけであり、決して愛国心によるものではない。

 とはいえ、これまで守ってきた国が無くなるというのにはそれなりに抵抗がある。以前に比べると、最近はそれほどでもないが。

 

「正直いって、将軍が出発されたら、ある程度の時間を置いてヨーレルに降伏することを考えています。扱いは期待できませんが、死ぬよりはマシですし、今よりも悪い扱いというのはちょっと思いつきません。」


 副官は悪びれずに言う。そして、ドルセアもそんな副官を攻めるつもりはさらさら無かった。むしろ、ドルセアから降伏するように言い出すつもりだった。

 

 副官も、ドルセア同様に侵略された側の人間であり、軍に入った理由もドルセアと同じだった。

 しかし、ドルセアが出発した直後に降伏すると、ドルセアが背後からヨーレルに襲われる可能性がある。副官としてはドルセアを尊敬していたため、それは防がねばならない。お互いを思いやる思いは一致していた。

 

「よし、準備出来次第出発する。兵は向こうが用意するだろうから、100ほど借り受ける。食料はいらん。」


「かしこまりました。ご武運を。」


 ドルセアと副官は、固い握手を交わした。

 

 

◆◆


 中央砦の手前で、みんなが集まるのを待っている。待っているはずだった。

 ところが、逆に俺達を待ち受けていたのは、なんと4万ほどの兵だった。

 

「やばいな、死ぬぞこれ。」


「ここまでとは、予想外であるな。」


 ローレイも青ざめていた。まさか、これほど早くしかも大量の兵をチャーズが用意できるとは思っていなかったのだ。

 

「ちょっと様子を見てくるっす。」


 サスケとスマイリーが偵察に向かう。

 

 しばらくすると、サスケ達が戻ってくるが、なんか人数が多かった。

 

「沖田さん、味方っすよあれ。」


「は?」


 結局戻った農民兵達はさらに仲間を連れて戻ってきていた。その数、4万。なんか、利息がどっさり入ってきたような感じだな。


 サスケと一緒に来ていた人の中に、やたらと背筋が伸びた老人がいた。おそらく元軍人だろう。とはいえ、こんな老人まで参加していいんだろうか、と思ってしまう。

 

「あ、あなた様は・・・ もしや、レオール将軍では?」


 いきなりその老人に、ローレイが跪く。

 

「ああ、ローレイ王子ですな。久しぶりです。顔をお上げください。」


 将軍?

 

「沖田殿、この方はチャーズの5将軍の筆頭将軍といわれたレオール将軍です。」


 おい、なんでここにチャーズの将軍がいるんだよ! まずいだろ、それ! それにチャーズの将軍が味方とかありえねえ。

 

「お初にお目にかかります。レオールと申します。まあ、今はチャーズの将軍ではありませんがな。」


「沖田です。評議会からの依頼で、ローレイ王子とレジスタンスの支援をしております。」


 赤坂達も挨拶していく。

 このレオールという爺さん、チャーズでもっとも有名な将軍だったらしい。で、チャーズがレットラントに攻め入ったときの軍の最高責任者という。しかし、王族は皆殺しにすべし、という命令に背き、ローレイの持つオーラに感じるものがあったようで、ローレイを何とか逃がすことに成功したらしい。つまり、ローレイにしてみれば、親の敵でもあり命の恩人でもある。

 

「正直申し上げて、今のチャーズは国としての体をなしておりません。義はローレイ王子にあると考えております。私ごときにできる事もさほどございませんし、過去の償いといっても償いきれるものではないことは重々承知しておりますが、微力ながらお力となるべく、老体に鞭打ってまいりました。」


「お力をお貸しいただけるのでしょうか。」


 ローレイは泣きそうだ。この爺さん、筆頭将軍とかだったらしいので、結構期待できるかもしれない。

 

「ええ、及ばずながら。」


 俺達が話をしていると、向こうでなにか騒いでいた。

 

「レオール様、チャーズの使者を捕らえました。」


「ああ、念のため中央砦の周りを偵察させていたのですよ。」


 この爺さん、抜け目無いな。見た目は隠居した爺さんだが、たまに見せる目つきがヤバイ。そして、この部下も元軍人か、それ相応の訓練を受けていそうだ。動きにそつがなかった。

 

「このようなものを持っておりました。おそらく中央砦への伝令かと。」


 レオールが受け取るが、中身を見るなり頭を振る。

 

「暗号文ですな。ワシの時代のものとは異なるため、中身は分かりかねますな。」


「ちょっといいっすか?」


 サスケが受け取る。サスケはすでにチャーズの暗号を解読している。そして、俺達の翻訳システムにその暗号表が組み込み終わっているので、俺達は暗号のまま理解できるようになっていた。

 

「うわ、やばいっす。ドルセア将軍って人がこっちに兵を連れて向かってるっす。」


「援軍とかまじかよ・・・」


 俺達が砦を攻めている最中に援軍に挟み撃ちとかされたら、ひとたまりもなさそうだ。


「ドルセア将軍か。一筋縄ではいかんな。」


 レオールも考え込んでいる。ドルセア将軍と言う人は、結構な切れ者らしく、チャーズ最強のうちの一人とのこと。

 

「でも、最強のうちの一人ということは、ほかにもいらっしゃるということですか?」


「おお、赤坂殿でしたな。そうじゃ、もう一人ミルトア将軍というものがおりますな。」


「え? ミルトアが生きてるんですか?」


 ローレイが驚いている。でも、誰それ?

 

「ええ、北の地で魔物と戦っているはずですな。」


 ローレイいわく、ミルトアという人はレットラントで軍神といわれた人らしい。

 で、レオールいわく、捕まえたときに処刑したかったのだが、あまりの人気に反乱が怖くて処刑できずに、形だけの将軍職を与えられて北の地にながされたそうだ。


「よし、ミルトア将軍を頼ろう。ワシが使者として参りますよ。この兵はローレイ王子におまかせいたしますぞ」


「よろしくお願いいたします。それでしたら、私の権限でレオール殿にレットラントの将軍職を受けていただきたいのですが。」


「いや、このような老人に将軍職などもったいない。しかし、お受けしないのも失礼にあたるゆえ、謹んでお受けさせていただきます。」


「サスケ、お前も一緒に行ってくれ。グルセアも道が分かるなら、案内してあげてくれないか。」


「了解っす。」


「北なら見当はつくので、もちろん行きますよ。」


 早速、出発の準備をしてもらう。サスケにはあまった肉や準備した食料も持たせる。

 護衛については、サスケがいくし、グルセアの案内もあるので、10人ほどで十分だろう。

 

 そして、レオールやサスケ達は早々に出発していく。

 

 

「もう一つ懸念があります。」


 そう言うローレイの表情が曇る。

 

「ドルセア将軍がヨーレルとの戦線を離れるということは、場合によってはヨーレルの侵略があるかもしれません。」


 あ、忘れてた・・・

 早速、斉藤課長に連絡を取る。

 

「あ、斉藤課長? 沖田です。」


 斉藤課長にこれまでのいきさつを伝える。

 

「分かった、そのミルトアという人は、サスケもいるなら大丈夫だろう。問題はヨーレルだな。近藤部長と相談して、評議会から圧力をかけることにする。そっちも、念のため誰かを応援にいかせられないか。」


 向こうからも人は出るが、圧倒的に俺達のほうが早い。

 

「わかりました。赤坂を向かわせます。抑止力としては最強ですから。」


「頼む。こっちも急がせる。」


 斉藤課長との話が終わると、赤坂にヨーレルとの国境に向かうように頼む。兵も1万ほどもつければ大丈夫だと思う。

 

「わかりました。任せてください。」


とか言ってると、また騒がしい。なんなんだよ、お前らは。こっちは大変なんだ、もうちょっと静かにしてろよ。


「あ、来たようですね。」


 ジュリアが遠くを見ていた。ジュリアは裸眼でも遠くが見える。

 ジュリアの視線の先を追うと、なんか黒いものがこっちに向かっているのが見える。

 

「げげ、ワイバーンだ・・・」


 スマイリーがビビリまくってる。こいつは猫のくせにやたらと目がいい。というか、猫人族はみんな目がいいんだが。

 

「おいおい、ワイバーンとか止めてくれよ・・・」


 しょうがないので、戦闘準備を始める。

 

「あの、あれ味方ですよ?」


 ジュリアがきょとんとした表情でつぶやく。

 

「は? ワイバーンって誰が呼んだの?」


 花子も混乱気味だ。まあ、いつもかもしれないけど。

 

「私達ですけど?」


「「え?」」


「エルフって、ワイバーン呼べるの?」


「いえ、正確には姫のために来てもらった、ということですね。」


「・・・」


 赤坂も首を捻っていた。

 とりあえず、みかたなのでみんなに安心するように伝えてもらう。

 

 しばらくすると、ワイバーンが20匹ぐらいやってくる。で、それぞれにエルフが乗っていた。

 

「遅れてすまぬな。どうしてもエルフは時間にルーズでな。」


 あ、カルロスだ。

 

「なんでここが分かったの?」


「え?だってジュリアから連絡貰ってたし。」


「ジュリアって何時連絡してた?」


「結構頻繁にしてましたね。」


 赤坂が答える?


 なんじゃそりゃ?

 

「ああ、私達エルフは、風の精霊に伝言を頼んで、連絡を取り合っているのです。」


 そういうことか。なら赤坂が知っているのもうなづける。

 

「なあ、赤坂、風の精霊ってひょっとして宅配便の人みたいなカッコだったりする?」


「なわけないじゃないですか。青い服を着て、赤いマントしてますよ。」


 そっちか、弾よりも早く空飛ぶやつな。


「うわ、かっこいい!」


 なにやら、花子が向こうで騒いでいた。

 花子の方を見ると、白いふた周りほども大きいワイバーン、いやドラゴンがいた。

 

「なんだよ、あれ・・・」


「ミスリルドラゴンである。姫に仕えるドラゴンじゃな。」


「つまり、このワイバーンは、あのミスリルドラゴンの配下ってこと?」


「そうじゃ、ついでに乗せてもらってきた。」


 なるほどね。理解はしてないが、把握はした。

 

 ミスリルドラゴンがこっちに来て、赤坂の前で跪く。

 

「姫、初めてお目にかかります。ミストレアと申します。」


 このミスリルドラゴンは、女性のようだ。声が女性なだけかもしれんが。つうか、しゃべるのかよ。

 

「赤坂です。よろしくお願いします。」


「こちらこそ、姫に仕える光栄、身に余る思いです。」


 俺もミストレアに近づいてみる。やっぱりミスリルの体なのか?

 

 ぱくっ。

 

「うおっ、おい、止めろ!」


 いきなり、ミストレアのやつが俺の頭に噛み付きやがった。兜というかヘルメットをかぶってたので助かったが、危うく頭を食われて死ぬところだった。これは甘噛みとかじゃない、本気と書いてマジと読む方だ。

 

「ちょ、ちょっとミストレア、止めてください。」


 赤坂もあわてて止める。すると、いやいや俺の頭を離してくれた。

 

「な、なんだったんだ・・・」


「どういうことですか?!」


 赤坂がミストレアを凄い形相で問い詰める。さすがに誰も笑っていない。ただ呆然としていた。いきなりミスリルドラゴンが頭を咥えたことと、俺が頭を咥えられても生きていることに。そして赤坂がやばいぐらい恐ろしい。

 

「え、だって、そいつ敵だし。」


 はあ?

 

「たしかに、昔の沖田さんは変態馬鹿野郎と言われ、女性の敵とも言えることもしてきました。でも、今はそんなことはないです。」


 うん、赤坂。それはフォローになってない。花子も笑うところじゃないぞ。

 

「いや、ドラゴンの敵。」


「沖田。あんたドラゴン討伐した?」


 花子に聞かれ、思いをめぐらせてみる。


「いや、してないぞ?」


「ええ、しているとすれば、私やサスケも共犯のはずです。」


 だな。

 

「どういうことですか?」


 さらに赤坂が問い詰める。まじこえーわ。

 

「そいつの先祖が、うちらの遠い親戚を倒したの。」


 俺の先祖? 遠い親戚? つうか、ミストレア言葉遣い変わってるぞ?

 

「沖田、あんたの先祖って何物?」


「爺さんは戦争にいってるけど、公務員だぞ?親父も公務員だ。兄貴も公務員。爺さんの前はしらん。」


 こいつらは、俺が入院しているときに爺さんや親父には会ってるはずだが。

 

「ひょっとして・・・」


 赤坂? 本人が知らない事実を、赤の他人のお前が思い当たるとかおかしいぞ?

 

「それは勇者と関係がありますか?」


「勇者かどうかは知らないけど、そいつの先祖がうちらの遠い親戚を倒したのは本当だよ。」


「ねえ、ちなみにその遠い親戚の名前ってなに?」


 あ、花子がひさびさに建設的な意見を言っている。

 

「ヤマタノオロチ」


「「え?」」


「だから、ヤマタノオロチだって。」


「・・・ヤマタノオロチってドラゴンだったのか?蛇じゃないのか?」


「沖田さんの先祖って、スサノオノミコト?」


「「・・・・・」」


「ひとつずつこう。まずは、ヤマタノオロチはドラゴンか蛇か。」


「だから、遠い親戚だって。」


 おそらく、俺達の想像も付かない分類方法があるのだろう。

 

「じゃあ聞くが、俺はこの世界の人間じゃない。なのに何故俺達の世界のヤマタノオロチとお前に関係があるんだ? 違う世界だろ?」


「あのね、世界は繋がってるの? じゃなかったら、あんたらもこの世界にこれないはずでしょ?」


「・・・・」


 ああ、なんなんだ、これは・・・・

 

「沖田さんがスサノオノミコト、つまりヤマタノオロチを倒した人の末裔というのは間違いない?」


「うん、間違いないね。神酒<八塩折之酒 大吟醸>の二千年物をかけてもいい。」


 ああ、有り得ないが、こいつがヤマタノオロチと親戚とかいうのが本当のような気がしてきた・・

 

「じゃあ、沖田さんの先祖って神?」


「それはないぞ?」


 当然、即答してやる。


「沖田さんって出雲出身ですよね。」


「ああ、そうだが。なんだよ、確かに出雲大社はあるけど、出雲に住んでるのは神の末裔とか言うなよ?」


「沖田、あんたのお父さんとかお兄さんって仕事なに?」


「二人とも県庁の土木課。爺さんも同じような感じ。そういや、全員なぜか土木関係だな。」


「それって、封印のため?」


「いや、封印ってなんだよ? なにを封印する? つうか、封印って県庁の職員のすることなのか?」


「・・・・」


「そこ、黙るところじゃないから!」


 なんなんだよ、この展開は。このままだと、神の末裔にされかねん。

 

「てかさ、赤坂。お前とっととチャーズとの国境に行ってほしいんだが。」


「あ、いけない。忘れてました。」


「では、童にお乗りくだされ。」


 ミストレアが赤坂の前に跪く。


「食うなよ?」


「食うのはお前だけだ、ボケ。」


 俺とミストレアは一触即発状態になるが、そそくさと赤坂はジュリアも乗せて出発する。そして、他のワイバーン達も出発していった。

 

「沖田殿、ミスリルドラゴンやワイバーン、さらにエルフすら率いる、あの赤坂殿とは一体何物か?」


 うーん、俺も知りたい。

 

「まあ、俺達の仲間ってのは間違いないな。」


 そうそう、エルフなんだけど、この世界では不老不死の最強の存在という認識をされていた。

 実際、不老でも不死でもないんだが、寿命は千年以上も生きるらしいし、体もやたらと丈夫だ。大体、例の魔力の泉の水だが、分析途中の結果では、人間は飲んだら即死だそうだ。ところが奴らはお腹を壊す程度という。もう、それだけでこいつらの強靭さがわかるというものだ。そして実際戦闘も強かった。なので、そう思われても不思議はない。

 

 そして、ワイバーンは正直それほど強くない。1体であれば、ある程度のレベルの冒険者がパーティを組めば倒せる。でも、倒すのと乗るのは別だ。実際無理。で、今回は20匹ほどいるので、1匹だけならともかく、相手が軍レベルでもないと厳しいだろうが。

 

 ところがドラゴン、しかもミスリルドラゴンとなると、俺でも傷つけるのがやっとだろう。そもそもミスリルという素材に敵うほどの武器は、この世界には数えるほどしかないはずだ。でも、近藤部長や千葉さんなら力で、斉藤課長や土方課長、永倉さんあたりは技で倒しそうな気がする。サスケもいけそうだ。赤坂? うん、倒すどころか、消滅させかねんな。

 

 ということはなんだ、ヨーレルとの国境って、赤坂とミスリルドラゴンとワイバーンに乗ったエルフとかいう最強布陣に狙われるのかよ。絶対侵略できねえわ。



◆◆


「結構遠いっすね。」


 サスケやレオール達は、ようやく北の地についた。

 

「たしか、この辺に拠点があったと思ったんですが。」


 グルセアが辺りをきょろきょろ見回す。


「ビンゴっすよ。」


「来たのう。」


 その直後に物陰から戦士が現れる。

 

「何物だ。ここから立ち去れ。」


 レオールが前に出る。

 

「わしはレオールというものだが、ミルトア将軍はおるかね。」


「なに? まさかレオール将軍では?」


「いや、とうの昔に将軍職は辞しておる。」


「これは失礼いたしました。こちらへどうぞ。ミルトア様をすぐに及びいたします。」


 サスケ達はテントに案内される。おそらく食堂や打ち合わせに使われているのだろう。

 

 しばらくしてミルトアが入ってきた。

 

「これはレオール将軍。このようなところになぜ?」


「久しぶりですな、ミルトア将軍。」


 レオールがミルトアに微笑みかける。


「いや、チャーズから将軍職を受けた覚えはありません。」


「これは失礼。」


「そういえば、レオール様も将軍職は辞しておられましたな。」


「うむ。しかし、今日はレオール将軍として参った。」


 ミルトアの顔が曇る。

 

「チャーズの将軍に復帰されたので?」


 レオールはミルトアに微笑みかける。

 

「いや、レットラントの将軍じゃよ。」


「レットラント?!」


 ミルトアが驚き、思わず椅子から立ち上がる。

 

「ああ、ローレイ王子が立たれた。レットラント再興のためにな。」


「ま、まさか・・・ ローレイ王子は生きておられたのか・・・」


 サスケもうなずく。ついでに、スマホで取った写真を見せる。

 

「変わった絵ですな。たしかに、ローレイ王子の面影がありますな。いい青年に成長されたようだ・・・」


 ミルトアが涙ぐむ。その配下もレットラント出身のようで、一斉に涙ぐんだ。

 

「しかるに、ミルトア殿。そなたはどうする?」


「どうするもこうするも、ローレイ王子をお助けするのみ!」


 ミルトアが立ち上がるタイミングで、一斉に鬨の声が上がった。

 

「ここはどうする?」


「う・・・・」


 ここはミルトア達のおかげで、なんとか持っているのだ。今ミルトア達がここを離れるということは、この周りの村を含め魔物などに蹂躙されるだろう。

 

「ミルトア様、ここは我らが守ります。ミルトア様は一刻も早くローレイ王子のもとへ。」


「お、お前たち・・・」


 サスケが4次元バックを取り出す。

 

「じゃあ、とっとと済ませるっす。これをどんどん配るっす。」


 4次元バックから、例の肉や、食料などを出していく。

 

「なんだ、この量は・・・ なぜそのような小さなバックに入っている・・」


「細かいことはあとっす。とっとと配るっすよ。」


 気にせず、サスケはどんどん出していく。あっという間にテントがいっぱいになった。

 

「おい、みんなを呼べ。お前は分類を指揮しろ。手が空いているものは、村へ運ぶ準備をしろ。」


 副官があわてて指図していく。

 

「じゃあ、ここが落ち着いたら出発じゃな。」


「お供させていただきます。」


 ミルトアがレオールやサスケに深々と頭を下げた。



ファンタジーにヤマタノオロチって意外と出てなかったような気がしたので、ゲスト出演させてみました。日本にも、結構ファンタジー向け?の方々がおられるんですよね。

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