32話
■32話
グルセアから、ローレイ王子との接触に成功したとの連絡が入った。
ポイントを確認し、早急に向かうことにする。
当初は俺達のチームだけで行く予定だったが、ザンギとスマイリー、ジュリアに加え、各村からもう1名づつ代表として行くと言い張るので、連れて行くことになっていた。そのためクルーザーの定員を大きく超えてしまっていた。
また、チャーズの食料難はかなり深刻とのことだったので、ストックしてある食料なども四次元バックにいれて持っていくことにする。
俺達の留守の間は、しーちゃんにお願いする。
青森さんは、近藤部長達と同行して、ロンドガル国王をクルーザーでヨーレルに行っていた。評議会はレジスタンス支持を認めたそうだ。しかし、ヨーレルの軍の一部が戦争賠償に拘っており、レットラント復興を認めていなかった。どう考えても、賠償金額よりレットラント復興による帆船の貿易からの利益の方が経済効果としてもでかいと思うんだが。
田中は戦闘になったときの人の手配などを含め、斉藤課長達に相談に行ってもらう。
また、各村は代表を出すことで話がまとまりはしていたが、当初は戦闘ができるものは全員参加するつもりでいたようだ。
さすがに俺達の戦闘に巻き込むつもりは無かったし、最悪チャーズがもう一度攻めてこないという保証も無かった。
なので、何とか説得して、今回の形に収まっていた。
そういえば、今回エルフはきてなかったな。
バンゴやスマイリーは、今回の話がでるやいなや村に戻って、戦士達を連れてきていたが、ジュリアは村に戻っていない。
まあ、もともと期待していないし、来ても連れて行くつもりは無かったから気にしていないが。
あと、村に戻るとき、スマイリーはジープを借りていたが、バンゴはなぜか俺の原チャリを借りていった。
リザードマンが原チャリに乗る姿は、結構シュールなものがある。しかも奴は2mぐらいあるので、なおさらだった。
チャーズのガレー船は7日ほどかかったようだが、海賊船は3日ほどで付いてしまう。
俺達が船を下りると、海賊船は一旦戻ってもらうことにする。何かあったときには、インカムで呼び出すことになっていた。
3日というタイムラグは大きいように思えるが、実際チャーズの中に入り込んだら、海岸まで3日ぐらいはかかってしまう可能性があるので、許容範囲として考えている。
俺達は指定されたポイントに急いだ。念のため、到着は夜になるようにしていたので、暗闇の中を進んでいく。
上陸地点は、レイモンド達の情報で見張りなどに見つかることなく上陸できたが、ここからは敵の状況が正確につかめていないので、ある程度はレーダーを頼りに進めるが、暗闇とはいえ慎重に行動する必要があった。
途中、いくつかの村を見つけるが、どこもかなり寂れており、生活が厳しそうな感じがする。とはいえ、昼間であればもうちょっと人の気配はあったのかもしれないが。
しかし、畑を見る限りは、それほど人の手がはいっているようにも見えないし、植えられているものも、疎らだった。
過疎化が進んでいるか、戦争に人がとられているかのどちらかだろうと思う。
そうそう、一つわかったことがある。ジュリアは方向音痴だった。
上陸したときから、ジュリアだけは違う方向に進もうとしていた。
「なあ、ジュリア。お前方向音痴だろ?」
「え? いえ、そんなことはないですよ。それは精霊が間違ったことを教えてるだけです。」
赤坂が首を横に振って否定していた。
ちなみに、この辺りの精霊は土の精霊。精霊が見える赤坂によると、麦藁帽子をかぶって首に手ぬぐいのようなものを巻いたおっさんらしい。非常に分かりやすいな。
そんなこんなで、指定されたポイントについた。
早速、グルセアに連絡を入れ合流する。
「始めまして、沖田です。」
「ローレイです。あなたが沖田殿か。グルセアより話は聞いております。」
挨拶もそこそこに、状況の説明や確認をしていく。
まず、評議会はレジスタンスを支持することを伝える。これについては、ローレイは驚いていたがあっさり受け入れた。
そして、レジスタンスの状況については、ここに300、全体だと大体5000ぐらいはいるらしい。レジスタンスという性質上、一箇所に集まるわけにはいかず分散しているので、全体の状況を正確に把握するのは難しいだろう。
また、旧レットラントの結構な数の村は、レジスタンス支持とのこと。この村が強力しあって食料をチャーズに極力回さないようにしていた。とはいえ、収穫量も多くないので日々なんとか食べている状態であり、食料不足はかなり深刻だそうだ。
さっそく、持ってきた食料をローレイ達に渡して、配給してもらう手配をお願いする。
ローレイの配下は、食料問題が改善するということもあるのだろうが、きびきびと動いてた。うん、統制が取れており期待できそうだ。
一通り話が終わったところで、斉藤課長に報告を入れる。
気になるヨーレルの動きだが、軍の反対派を抑えるのに手間取っていたのは、近藤部長が脅して納得させたらしい。
もともとヨーレルの国王は評議会の案に賛成なので、むしろ国王が脅してくれるように頼んだとか。いいのか、それで・・・
連合軍は現在編成中で、準備出来次第ヨーレルに向けて出発するそうだ。
翌日、連合軍との合流などを含めて、今後の動きについて相談する。
連合軍はヨーレル側から来ることになっているため、ヨーレルからチャーズの首都に向かう途中にある南砦といわれるところを目指すことにする。ここが最初の大規模戦闘になる予定だ。
俺達やローレイ達は南砦に向かって出発する。
途中、小競り合い程度の戦闘はあったが、無事に南砦に到着した。
連合軍はまだ編成が終わっていないとのことなので、しばらく様子を伺う。
「あれは結構きついっす。」
「うん、大体3万はいそう。」
偵察に出た、サスケとスマイリーの報告は予想していたとはいえ、あまりよろしくない状況だった。
「まあ、連合軍を待つか。」
「え? 沖田、やらないの?」
花子がとんでもないことを言い出す。
「だって、レオナルド王だっけ? テルテルボウズの戦い? 300の兵で何万とかいう敵を倒したんでしょ?」
何言ってんだ、こいつ・・・
「三村さん、それって映画の奴のこと言ってるっすか?」
「そうそう、あれ。」
「おそらく、レオニダス王とテルモピュライの戦いのことっすね。先日、静さんの話にも出てるっす。」
ああ、よく分かったな。サスケ、凄いぞ。
「あのな、あれは防衛戦だ。今回は攻城戦。まったく逆だ。それにレオニダス王はその戦いで死んでるぞ。」
「は?勝ったのに死んでるの?」
花子の常識では、勝った方は生きており、負けた方が死ぬという、非常に分かりやすいものだ。普通はそうかもしれん。
「そうっす。勝ったといっても、戦略的に勝っただけっす。最後は全滅してるっす。」
テルモピュライの戦いは、ペルシア軍の足止めが目的だ。そして、足止めに成功したので、スパルタ軍の戦略的勝利ということになる。
ここにしーちゃんがいなくて、ちょっとほっとしている。しーちゃんなら、軽く数時間ほど薀蓄を語り始めるに違いない。
「まあ、それはいいや。でも、守るより攻める方が好きなんだけどな。」
一人で勝手に行って来い。
「すまん、こいつと話して疲れた。腹減ったし、飯にしようや。」
マジ腹が減ってきた。
「そうだな、食事にしよう。」
ローレイは、今の話にはついてこれなかったが、花子がとんでもないことを言っているというのは理解していた。
「腹が減っては戦はできん、と言うっすしね。」
「じゃあ、準備しますね。」
赤坂が食事の準備に取り掛かろうと動き出そうとするが、動きが止まった。
「どうした?」
「サスケ、今なんと言いました?」
「え? 腹が減っては戦は出来んっすけど?」
赤坂は何か考え込んでいる。」
「それです。砦は落とせませんが、敵の戦意を削げるかもしれません。」
赤坂の話を聞くことにした。
1時間後、俺達は南砦の前で焼肉パーティをしていた。
赤坂いわく、チャーズは食料難で満足に食事していないはず。目の前でおいしそうな匂いをさせたら、きっと戦意消失するはず。
どっちにしろ、飯は食うし、だめもとでやってみることにした。
「このソースはかなりいけるな。」
ローレイは焼肉のたれをしらない。当然か。
「ああ、でもよく焼肉のたれとか持ってたな。」
「実は、1回ぐらい焼肉しようと思って、食堂のおばさんに貰いにいったんですが、渡されたのがこの業務用の大きい奴で。」
目の前には、業務用の2Lぐらいのものがあった。
「ちょっと風で向こうに焼肉の匂いを送ってくる。」
「私もお供します。」
俺と赤坂は、ウィンドで焼肉の匂いを砦に向かって送っていく。
◆◆
「なんだ、このうまそうな匂いは。」
南砦の司令官は、いらだっていた。国からの食料配給はなんとかあるものの、常に不足していた。肉にいたっては最後に食べた記憶すらあやふやだ。
しかし、正規兵達はまだ食事がでいていたのである。この砦の殆どは農民兵であり、正規兵に優先的に食事が回るので常に空腹を訴えているような状況だった。
「あのうまそうな匂いはなんだ。もう、我慢できねえ。」
「正規兵のやつらだけ、うまそうなものを食ってるに違いねえ。許せねえ。」
焼肉を食ってるのは外の沖田達なのだが、砦の中にいる農民兵達は気が付かない。見張りは気が付いているが、その匂いに夢中だった。
「もう我慢できねえ、あいつらを叩きのめしてやる。」
普段からの鬱憤が、焼肉によって爆発する。
この砦の正規兵は約1000。通常であれば、3万の農民兵を押さえ込める戦力だった。しかし、不満を爆発させた農民兵を押さえ込むには、圧倒的に少なすぎた。
そして30分後、南砦は農民兵に占拠されていた。まさに、食い物の恨みは恐ろしい。
◆◆
「いやー、食った食った。」
「なんか、さっき砦の中が騒がしかったみたいだけど、おちついた感じね。」
花子、食いながら話すな。でも、確かに落ち着いているようだ。正直、焼肉に夢中で気にしてなかった。
「沖田さん、あれ。」
赤坂の指差す方には、白旗を持ち、砦から出てくる農民兵が居た。
「何事っすかね。」
サスケも首をかしげている
「降伏だと?!」
「「「え?」」」
ローレイの言葉に、俺達は言葉を詰まらせる。
そういえば、こっちの世界でも、降伏は白旗だった。
「「なんで??」」
「わしらは農民兵です。今、あの砦の中は正規軍はおりません。ワシらが倒しましたので。」
農民兵、なにげに強いな。この人が農民兵の代表なのだろう。
「お願いします。降伏しますので、ワシらにもその肉を食べさせてもらえませんか。」
「「え?」」
肉のために降伏していいのか? と思ったが、そのくらい切羽詰っていたのだろう。
赤坂の焼肉攻撃は、強力だったのだ。
「困りましたね。肉もたれも殆ど残ってません。」
やはり、砦の中には3万の兵がいたようだ。それを的中させるサスケも凄いな。
で、俺達もさすがに3万の兵にいきわたるほどの肉やたれは持ってなかった。まて、無いなら、もってくればいい。
「よし、手配する。みんなには、焼肉の準備をするよう指示しといてくれ。」
俺は田中に連絡をとる。
「田中、緊急事態だ! 焼肉用の肉とたれを最低3万食、早急に持ってきてくれ。」
「はあ? なんだそれ?」
「つべこべ言うな。お前なら出来る。頼む。」
「良く分からんが、お前がそこまで言うのも珍しいな。分かった、任せろ。青森さんのクルーザーを使いたいから、そっちの手配は頼むわ。」
「すまんな。この礼は必ずする。」
「いいってことよ。」
田中の次は、青森さんだ。丁度、青森さんは島に戻っており、快く了解してくれる。
「しかし、3万食ってどこにあるのよ?」
花子もその数字にびびってる。つうか、お前のうちの冷蔵庫にあるんじゃないか?
「・・・ あてはあります。」
そう言うと、赤坂はどこかに連絡を取り始めた。
うん、赤坂の家の冷蔵庫にはそのぐらいのストックが、ある・・・わけ無いな。
かなり激しい戦闘が予想される南砦があっさり降伏してくれることより、3万もの人達がろくな食事もせず、俺達を頼ってくることの方が、俺達を突き動かした。正直、降伏のことはすっかり忘れていた。
準備をしている間、農民兵のリーダーと話をしてみたが、南砦は元レットラントだったので、ここの農民兵の殆どはレットラントゆかりの人達だった。ついでに、ローレイのことも話しておくと、いきなり涙を流して喜んでいた。
なんだかんだいって、レットラントはいい国だったようで、ローレイ達王族も、結構な人気があったようだ。
そして2時間後、田中と青森さん達が焼肉とたれを持ってきた。
「なんだよ、この人達は・・・」
砦の周りには、3万の農民兵が、焼肉のための火の準備などをしていた。
恐るべし統率力である。
田中が4次元バックから次々と焼肉用の肉やたれを取り出していく。そして、それをレジスタンス達が配っていく。配るときにはローレイ王子のおごりと宣伝させて。
ローレイは、この支払いが回ってくると思うと、顔色が真っ青になった。出世払いでいいぞ?
「とりあえず、10万食だ。」
「はあ? どこにあったんだ?」
10万食は、軽くトンのレベルだろう。大手スーパー辺りで買える量ではない。3万でも同じだがな。
すくなくとも、無茶振りした俺が言っていいセリフではない。すまんな。
「青山物産の倉庫。焼肉屋チェーンの在庫だ。そのかわり、食い放題向けだから、それ程高級ではないけどな。」
田中が赤坂を見つける。
「赤坂ちゃん、ありがとうね。会長の鶴の一声で助かったわ。
ああ、赤坂が手をまわしたのか。
「いえいえ、当然のことです。」
「ところで、沖田。アレ聞いたか?」
「ん?」
こいつと青森さんもちゃっかり食ってる。というか、違う肉くってないか? あ、ブランド牛でやんの。まあ、今回は許す。
「近藤部長がヨーレルに侵略分の占拠を諦めさせた話。あれな、決め手は、愚だ愚だ言ってると、お前が魔王を召喚してヨーレルつぶすぞ?って話になってる。」
「なんだそれ?」
みんな、俺をなんだと思ってるわけ?
「よし、田中。ここの支払いは近藤部長のおごりにしよう。」
「かまわんぞ。早速手配しとく。」
赤坂達は苦笑しているが、誰も止めなかった。
「ついでに、開発部にもブランド牛を沖田の名前で送っておいた。なんかやらかしたんだろ?」
流石は田中だ。営業の鑑だ。田中に礼を言っておく。
「沖田さん、この方達って元チャーズの農民兵ですけど、同時にレットラント出身でもあるわけですよね。」
青森さんが何か考えてるようだ。しかし、相変わらず肉は食い続けていた。
「みたいですね。」
「この後、どうしますか?」
「あ、考えてなかった・・・ 一応降伏してるんで、名義上は俺達の捕虜ってことになると思いますけど、さすがに3万の捕虜とかドン引きですね・・・。」
「考えたくないですね。なら、いっそのこと協力をお願いしたらどうですか。」
「「あ、なるほど。」」
一斉にうなずく。
とりあえず、農民兵のリーダーに来てもらって、協力をお願いしてみると、あっさり引き受けてくれた。
ただし、当然ながら、全員の意思を確認する必要はあるとのこと。
正直、協力といっても、チャーズに味方しないぐらいの話でいい。
さっそく、青森さんが拡声器を取り出す。なにげに俺達の標準装備になりつつある。
「みなさーん。すみませーん。食事しながら聞いてくださーい。」
農民兵が一斉に青森さんに注目する。しかしびびらない青森さん、すげー。
「私達は元レットラントのローレイ王子とともに、レットラント再興を目指してチャーズと戦っています。つきましては、協力をお願いしたい。」
いきなり、大声援が湧き上がる。
「俺達もともに戦わせてくれ!」
「チャーズをやっつけないと気がすまない!」
ああ、怖いけど、俺達に協力的だってのは理解した。
そして、青森さんからバトンタッチさせられる。
「じゃあ、ともに戦ってくれる方は食事終わったら、こちらに残ってください。村に帰りたい方は、気をつけて帰ってくださいね。あ、村に帰られる方については、なるべくチャーズの協力はしないようにお願いしますね。」
いきなり笑い声がする。農民兵のリーダーも苦笑していた。
なにかおかしなことをいったか?
「いや、農民兵に命令するならともかく、お願いってのは始めて聞きました。それに、ここにも村にもチャーズに協力するやつはいませんよ。」
ああ、そういうことか。
「沖田殿は凄いな。人を治めるというのは、押さえつけるだけではないと思っていたが、お願いするというのも大切なことなのだな。」
いや、それ普通だぞ?
「あ、残った肉については、村に持って帰ってください。村の皆さんにも食べさせてあげてくださいね。」
おお、青森さんナイスフォロー。残った肉をどうするか、ってのも考えてなかった。有効活用だな。
結局、ほぼ3万の農民兵が俺達の仲間になった。一応、村に帰ってもらい、後で合流という事にしておく。まあ、半分も来てくれればうれしいところだ。
こうして、戦闘をすることもなく南砦をゲットして、ついでに味方も10倍にふえてしまっていた。
「沖田。どうなってるんだ?」
「なにがだ?」
「焼肉で砦を奪って、さらに味方が3万増えるとか、ありえないだろう。」
まあ、そうだな。10万食っていったら、結構な金額だが、仮に半分の1万5千が戻ってくれたとしても、それだけの兵を雇うことに比べたら、超破格だ。
「これって、社長賞くるぞ。」
「え? そうなの?」
「ああ、間違いない。」
「じゃあ、みんなで貰っとくか。花子、申請とか必要なら頼む。」
おそらく1万円ぐらいはでるんだろう。
「沖田? 社長賞を申請で貰えるわけないでしょ? たしか近藤部長か越後屋の推薦が必要だったはず。」
そうなのか?
「まあ、とりあえず、このメンバーがもらえるように越後屋に話しておく。当然、俺としーちゃんや熊本さん達も含めてな。」
「まかせる。」
「じゃあ、社長賞でたら、みんなでハワイとか行くっすか。」
「まて、誰が金だすんだ? お前が出すのか?」
「は? 賞金に決まってるだろ?」
「ハワイって結構するぞ? そんなに出るのか?」
「「「・・・・・」」」
はい、知りませんでした。意外とでるんですね、うちの会社。
「でも、私は社長賞より沖田賞がほしいかな。」
・・今、赤坂が凄いこと言った。
「そんなんだったら、いくらでもやるぞ?賞金はでないけどな。あ、社食のSランチぐらいはおごってやる。」
「じゃあ、それで。」
良く分からんが、おごらされることになった。まあ、賞金でるならいいけどな。
その後、田中や青森さんを見送ったあと、合流ポイントを決めて次なる決戦の地である中央砦に向かうことにする。
◆◆
「まいったな。南砦があっさり落ちるとは。」
チャーズ共和国では、会議が開かれていた。
「ええ、こうもあっさりと落ちるとは想定しておりませんでした。」
ウーロンロン大統領やトイツー大臣を含め、出席者の全員が顔をしかめている。
「トイツーよ、残すは中央砦のみとなる。中央砦に兵を集めよ。」
「早速手配いたします。しかしながら、南砦も農民兵中心とはいえ3万の兵を配置しておりました。それがあっさり落ちるとなると、かなりの戦力を振り当てる必要がございます。としますと、現在の司令官では重荷かと存じます。」
「では、誰を差し向ける?」
「この大役に相応しいのは、ドルセア将軍のみかと思われますが。」
戦闘国家を自認するチャーズ共和国だが、5将軍といわれる将軍職も現在は2名のみ。そして、それに順ずる将軍補佐はそれなりにはいるが、有能なものは戦死するか引退するなどしており、現在のこっているのはパーコーのような戦闘能力ではなく、政治力や賄賂でのし上がっているようなものが殆どだった。後継者の育成を怠っていたつけが回ってきていた。
「ドルセアか。ヨーレルとの戦闘をしておったな。しょうがない、ドルセアに使者を遣わせ。中央砦にはドルセアが到着するまで死守するよう伝えよ。」
「はは、仰せのままに。」
ウーロンロンが退出すると、そこにいる全員がため息を漏らす。
「この戦争は勝てるのだろうか。」
一人が漏らしたその言葉が、全員の思いでもあった。
「勝てるかどうかではなく、勝たねばならんのだがな。」
先ほどまで勝って当然という態度をしていたトイツーすら、勝てるとは思っていなかった。
評議会は連合軍の派遣を決めていると聞く。そして南砦はレジスタンスのみで落とされていた。
つまり、中央砦の戦いは、連合軍とレジスタンスの両方を相手に戦うことも想定しなくてはいけないのだ。
そして、中央砦がおちるようなことがあれば、この首都は簡単に陥落するだろう。
しかも、60万といわれる戦力も、実際のところその半分以下になっている。到底、立ち向かえるはずは無かった。仮に勝ったとしても、その後に予想される民衆の反乱を押さえ込むことは到底不可能だ。
「チャーズも、もはやここまでかも知らんな。」
トイツーのその言葉で、全員がどこに逃げようかと考え始めていた。




