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31話

ついに戦闘シーンです。ええ、誰も待ってませんでしたね・・・

■31話



 俺達は監視センターでレーダーの画面を確認していた。

 ついにチャーズの軍が攻めてきたのだ。

 

「ガレー船が100っすね。」


 サスケがレーダー上のターゲットを確認していく。

 

「ああ、ほんとに100艘で来やがったな。」


 チャーズのガレー船は200人乗り。船の両側で、それぞれ80人がひたすらオールで漕ぐのだ。

 大体7日ぐらいかかるらしいのだが、7日の間もオールで漕ぎ続けてきて、そのまま戦闘とかできるんだろうかと思う。

 

「でも、どうやって上陸するつもりですかね。」


 赤坂が首を捻っている。海賊船用の港は完成しているとはいえ、定員1艘だ。そしてすでにレイモンド達の船が泊まっているため、あの規模の船が付けられる場所はない。

 

「やっぱり、沖に止めて気合で泳ぐんでしょ?」


 まあ、花子ならそれもありだろうな。俺はいやだが。

 

「どちらにせよ、上陸させるつもりもないし、別にいいんじゃないか?」


 俺はあっさり言い切る。そう、上陸させるつもりは無く、すべて海上で決着を付けるつもりだ。流石に、2万を上陸させたらこちらに勝ち目はなさそうだし。

 

「おそらく明後日ぐらいになりそうっす。」


 サスケが船のスピードからおおよその到着予定を割り出す。

 

「じゃあ、明日ぐらいに動こうか。」


 その日はそのまま解散した。

 

 

 翌日、俺達は猫人族の村に来ていた。

 

「じゃあ、予定通りやるからよろしく。」


 レイモンド率いる海賊達に声をかけて、俺と赤坂は海賊船に乗り込んだ。斉藤課長やサスケ達はクルーザーに乗り込む。

 

「野郎ども、行くぜ!」

 

 俺は海賊船の船首に足をかけてポーズをとる。これを、以前から一度やってみたかった。まさに男のロマンってやつだ。

 

「じゃあ、沖田さん。次は私の番ですね。」


 例の船が沈む映画で有名なあれだ。俺が赤坂を後ろで支える。でも、これって沈没フラグがたってそうな気もする。そして、支える男は死ぬって・・・

 

 

「なあ、あいつら、なにやってんだ?」


 併走するクルーザーで、斉藤課長が花子に話かける。

 

「っちぇ、その手があったか。サスケちょっと来て。」


「おい、三村。お前遊びにいくのか?」


「え? いや、不謹慎ですよね、あれは。」


 斉藤課長とサスケは、不謹慎なのはお前もだろう、という顔をする。

 

「まあ、このところ忙しかったですし、あのぐらいは大目に見てあげましょうよ。こっちはダメですけど。」


 クルーザーを運転しながら、ほほえましそうに見つめる青森であった。そしてふてくされる花子。

 

 

「船が2艘近づいてきております。」


 兵からの報告で、パーコーは船首へ移動する。

 

「なんだあれは。海賊船か。その後ろの小船も見かけない形だな。」


「ええ。」


 なんとか拒否しようと頑張った副官であったが、パーコーに無理やり連れてこられていた。

 

「勇者とやらは、海賊とつるんでいるのか。」


「そういうことになりますね。」


 パーコーと副官は、顔を見合わせる。流石に副官も、この事態は想定していなかった。

 

「それにしても、2艘だけというのが気になりますね。しかも1艘は小船ですし。」


 いくら勇者がいるとはいえ、100艘に対して2艘というのは無謀である。周りを取り囲んで終わりだろう。

 

「もしや、爆弾を積んでいる?」


 副官の発言に、パーコーは腰を抜かしそうになった。

 

「いや、どちらも人がそれなりに乗っているようです。」


 船首で見張りをしていた兵が答える。

 

「罠にせよ、恐れるに足らず。全軍に戦闘準備をさせよ。捻りつぶしてしまえ。」


 パーコーが、ビビリながらもなんとか命令をだし、副官が全軍へ指令を飛ばす。

 

 

 俺は船首に立っていた。とはいえ、船が揺れるので、落ちないように船首に棒を立てて体を紐で固定していた。さすがに、そのまま立ってると揺れた拍子にあっさり海に投げ出されそうだ。

 

「おい、チャーズ共和国と思われるが、責任者はいるか。」


 50mほどの間を空けて、海賊船を停止させる。そして俺は拡声器を使ってチャーズの船に向かって叫んだ。

 すると、チャーズの旗を掲げた指令船と思われる船の船首の人が答える。

 

「我らはチャーズ共和国の軍である。降伏するなら、受け入れるが。」


 こいつらも声がでかい。こっちの人ってデフォルトで声がでかいのだろうか。


「いや、こっちも同じだ。お前たちが降伏するなら、受け入れる余地はある。」


 まあ、そうくるだろうとは思っていた。なんせ、こっちは2艘のみ。しかも1艘はクルーザーで、見た目だけは小さい。

 しばらく反応を待つが、やる気満々のようだ。

 

「じゃあ、そっちはやる気でいるってことでいいんだな。後悔するなよ。」


 俺は捨て台詞を吐く。これもやってみたかった。

 とかいってたら、いきなり弓を構えた兵士が出てきやがった。まあ、俺の装備だとあの弓ぐらいは平気だが。

 

「よし、来るぞ。後ろに下がっててくれ。」


 俺は海賊達に指示を出す。今回、戦闘においては海賊達の出番は殆どない。戦闘は俺達だけでやるので、後始末を手伝ってもらうぐらいだ。あと船の操舵か。

 

 弓が飛んでくる。俺は左手に持った盾で、その矢を防いでおく。本来なら避けられるが、体が固定されているので避けられないのだ。まあ、実際食らっても大丈夫だが、気分的に盾で防いでおく。

 

「じゃあ、沖田さん実戦ですよ。」


 赤坂がうなずく。

 そう、俺はようやく魔法の初級資格をとったのだ。そして、目の前には壁のように大量の船がいる。つまり、どこに撃っても当たる。ということは、俺でも十分当てられるということだ。

 

「じゃあ、こっちもいくぞ。」


 俺は目の前の旗を立てている船に向けて、ファイアを放つ。轟音とともに、左側の船が沈んだ。

 

「あれ?」


 もともとコントロールが悪いうえに、波で揺れるのでまったく思ったところに飛んでいかなかった。


「まあ、一応当たってますから、次どうぞ」


 赤坂に慰められるが、気を取り直して同じ船を狙ってとファイアを放っていく。おそらくこの船が指令船だろうと検討をつけていた。

 でも、今度は右の船が沈んだ。向こうもあわてて回避しとうとするが、ガレー船は小回りがきかないし、周りの船が邪魔で身動きがとれない様子だ。

 ふふふ、動く方が当たる確立が高いような気がするぞ?

 

 次。今度は奥の船が沈む。 次。また外れて、別な船が沈んだ。

 狙った船はなかなか沈まないが、それでも全弾なにかしらに命中していた。これも、ある意味才能だろう。

 と思ったら、5発目でようやく当たった。思わずガッツポーズをする。

 大体、10艘ぐらいが沈んだところで、チャーズの船がようやく展開し始めた。固まりすぎており、身動きが取れなかったようだ。

 

「展開し始めました。斉藤課長、よろしくお願いします。」


 後方で待機していた斉藤課長に、インカムで連絡を入れる。


「任せろ。」


 クルーザーが展開し、孤立し始めた船に急速に近づいていく。そして、斉藤課長やサスケ、花子、ザンギ、スマイリー達がクルーザーからチャーズのガレー船へと乗り込んでいく。

 斉藤課長達が乗り込んだガレー船の船上では、ワンサイドゲームが繰り広げられていた。如何にチャーズの海軍が正規兵で構成されているとはいえ、斉藤課長達の敵ではない。そして、他の船との間隔が広がってるため、他の船から救援に駆けつけることもできないのだ。

 200人ほどの兵が乗っているはずだが、数分ほどでガレー船は無力化される。

 そしてタイミングを見計らって、青森さんがクルーザーをガレー船に横付けして斉藤課長達を回収し、さらに次の船へと向かう。

 

 俺は、まだ固まっている船を狙ってファイアを放ち続けた。赤坂も斉藤課長達が近づいていない船を狙ってファイアを放っていく。

 すでにガレー船からの弓による攻撃は止んでいた。さすがに反撃どころではなく逃げることにしたようだ。後ろの方の船は、ようやく旋回を始めていた。

 

「沖田さんはそろそろストップですね。クルーザーに当てるとまずいですから。」


 戦闘が始まって30分ぐらいだが、すでに俺と赤坂だけで約半分の50艘近くを沈めていた。そしてクルーザーの斉藤課長達も、20艘ぐらいを全滅させていたのだ。残った30艘ぐらいは、すでに一部が逃げ始めていた。

 

 さっそく、体を縛った紐を切っていく。海に落ちない、という面ではありだが、船と一緒にゆれまくるので結構きつかったのだ。

 でも、この紐がなかったら、今頃魔法に夢中で海に落ちていただろうと思う。

 

「しかし、こんな戦闘は始めてみたぞ。」


 紐を切りながら、その声に首だけ振り返ると、レイモンドやリーゼ達海賊が船首にでてきていた。

 

「1発でガレー船を沈めるって、おかしいにゃ。」


 リーゼが有り得ないと、頭を振っていた。

 

「でも、さすがに当たらないと沈まないぞ。」


「沖田さんはそうにゃ。絶対たまたまにゃ。でも赤坂さんは狙った獲物を外さないにゃ。」


 赤坂がちょっと自慢げだ。つうか、赤坂は魔法職で、俺は前衛職の魔法職もどきである。そのぐらいの差はあって当然なんだがな。

「しかも、あのクルーザーとかいう船はなんなんだ。俺達の船が一番早いと思っていたが、あの船には叶わん。あの速さと動きは何度見ても信じられん。」


 帆船とエンジンで動くクルーザーを比べること事態が間違っているのだが、あのクルーザーについては、青森さんの技術も凄かった。波があるにもかかわらず、ガレー船に一発でぴったり横付けするわ、船とは思えない動きをしていた。

 

「そして、あの連中も死神かなにかか? 200人をあの人数で片付けるとか、人間とは思えん。」


 レイモンドは、クルーザーに乗っている斉藤課長達をあごで示す。

 

「うちの接近戦のスペシャリストだしな。正直、魔王ですら倒しかねん戦力だ。あれぐらいは当然だろう。」


 レイモンドが、信じられないという感じで首をすくめる。

 

 しばらくしてクルーザーが戻ってきた。

 

「よし、沖田。この辺で終わりにしておくか。」


「ええ、そうですね。20艘ぐらいは逃げてますが、負傷兵の救助とかもあると思うので、それぐらいは見逃しましょう。というか、これで十分だと思いますし。」


「そうだな、じゃあ悪いがレイモンド達も死体の回収を手伝ってくれ。」


 俺達は海に浮かんでいる死体の回収を始める。そのままにしておくのは人道的にアレだし、最悪このあたりに鮫とかを呼んでしまうと、後が厄介だった。魚を獲りにきたら、鮫に食べられたとか目も当てられん。

 

 結局、1時間ほどかけて、回収可能な死体をまだ浮いているガレー船に乗せる。負傷者についても、死体とは別な船ににまとまってもらった。当然、武装解除はしてある。そして、俺と赤坂で死体を船ごとファイアで燃やしていった。

 

 さらに、程度のいい船をいくつか確保していた。海賊船の修理につかってもいいし、帆船などに改造してもいい。これはクルーザーや海賊船につないで持って帰ることにする。

 

 で、俺はファイアの使いすぎで、島へ戻る海賊船の上でぶっ倒れていた。とりあえず、この後はしばらくなにも出来そうにない感じだ。

 

 

 そうそう、実は今回の作戦立案はしーちゃんだった。

 

「この布陣だとすれば、赤壁の戦いといったところですね。」


 サスケの作った戦闘配置図をみるなり、いきなりしーちゃんがヒートアップした。

 

「このど真ん中に向けて、ファイアを叩き込むべきです。そうすると、敵の船は木造。吹っ飛ぶなり炎上するなり効果は絶大かと。」

 しーちゃんの笑顔がちょっと怖い。


「また、赤壁の戦いと違って、敵の船は固定されておりませんので、その後展開してくることが予想されます。というか、普通ならしますね。ですから、そこはテルモピュライを想定します。つまり、海を渓谷に見立てるということです。」


「「「?」」」


「ですから、船は海にかこまれてますから、単独になってしまえば周りから援護に駆けつけるのが困難ですよね。つまり、船の上の敵だけを相手にしていけば言い訳です。これなら敵の数を問わず、つねに1隻分の敵だけを相手にすることができます。」


「「「なるほど。」」」


 赤壁の戦いは三国志ってのは分かったが、テルモピュライってのはピンとこなかった。でも、スパルタのレオニダス王が300人で戦ったとかいうあれだったのか。普通は知らんぞ、そんなの。


「つうか、なんでそんなに詳しいの?」


「え?常識ですよね?」


 しーちゃんの発言に、一斉にサスケを注目する。

 

「い、いや。静さんは歴史が好きってことっす。そうっす。」


 ああ、暦女ってやつか。それだけではすまない気もするが、それで納得しておく。

 

「まあ、作戦としては合理的だな。よし、これで行こう。」


 斉藤課長もあっさりOKだすとか、しーちゃん恐るべしだった。

 

 

 チャーズとの戦闘が終わり、俺達は通常業務に戻っていた。

 赤坂とサスケは代休が溜まっていたので消化中だ。

 

 俺や花子も同じように代休が溜まっているのだが、俺は一応責任者だし、報告書の作成とかあるので、あとから代休を消化しようと思っている。で、ついでに申請関連もあるので、花子に手伝ってもらうため、花子も当然あとから代休消化となる。

 

 なんか赤坂は俺と一緒に休みをとって、魔法の勉強の最終仕上げに有名テーマパーク「マジックランド」に行こうとしていたらしい。でもこっちの魔法とマジックランドの関連性ってなんだ?

 そもそも、マジックランドってカップルがいくところだろ?

 いや待て、合法的?に赤坂とデートできたってことだったのか・・・ 

 

「ミスった・・・」


「沖田、そんなときは<Ctrl+Z>でOK。」


 いや花子、それじゃダメなんだ・・・

 

 気を取り直して、仕事をすることにする。

 

 まず、島根さんのほうだが、これはリザードマン達による実験が始まっており、順調に進んでいるそうだ。

 さすがに大規模で、というところまではいっていないが、基本的な作業自体は問題ないレベルに達しているので、おりを見て拡張していくらしい。

 また、新品種もこれまでの倍の収穫が見込めるとのことだった。そして養殖のほうも軌道に乗り始めているらしい。

 よって次のステップとして、そろそろ寒冷地仕様にとりかかるとのこと。

 これは、斉藤課長達からも、チャーズの後始末部分で今後の食料調達プランとして優先事項に挙げられていた。

 チャーズの土地は気温が低いので、通常の農作物は育ちにくい。よって生産できるものが限られてくるし、それほど生産量も見込めない。この打開策として、寒冷地仕様が求められていた。

 

 また、猫人族の放牧も形になってきているそうだ。現在は豚だけだが、これも徐々に牛や鶏などにも手を広げていくとのこと。また、ブロイラーではないし、魔法による治療的なこともできるので、病気とかはそれほど気にしなくていいそうだ。

 あっちの世界では、結構聞く話だったので、ちょっと心配していたのだが。

 まあ、きままっぽい猫人族がちゃんとやってるので、この辺も含めて島根さんや青森さんに任せておけば、問題ないということである。なので判子をおして、決済の箱に入れる。

 

 次は船だ。海賊船のほうは、順調に修理が進んでいるそうだ。そして分捕ってきた船を帆船に変えようとしているが、レイモンド達は船大工ではないので難航しているらしい。

 一応、青森さんに聞いてみたら、作るのはちょっと、ということだった。熊本さんも船は専門外とのこと。

 6課とか開発部に頼むのも考えたが、とんでもないのが出来そうなので、この件はペンディングする。保留の箱へっと。

 

 地熱発電と温泉だが、地熱発電はほぼ完了とのこと。思ったより発電量が多かったので、電気に余裕ができた。

 で、熊本さんは、現在温泉のほうを対応中。

 これについては、報告書に書いておくっと。

 

 あと、追加メンバーのおかげで、いろいろな仕事が回り始めていた。

 

 そうそう、ついに社食も完成したのだ。メニューは赤坂監修の期待できる内容だ。例のスケルトンラーメンもあるし。

 ちなみにスケルトンラーメンの材料になるスケルトンだが、この島にはいなかった。

 でも、例の魔王の城の後片付けで、かなりの量のスケルトンが出てきたので、それを大量にもらってあるので心配はないとのこと。 で、問題も発生。昼時になると、あっちから団体でこっちの社食にくるので、超満員だった。さすがにこれは制限してもらわないと。ということで、これも報告書と。

 

「よし、休憩、休憩。」


「あ、沖田。車ならないよ。」


 な、なんだと・・・ 猫人族の村に行けないではないか・・・

 

「た、田中! 車の追加ってできないのか?」


 田中としーちゃんは、平常運転中だ。ただし、しーちゃんはちょっと機嫌悪そう。

 

「ああ、それな。一応お伺いは立ててるんだが、開発部が対応中だと。」


「え?なんで開発部? 嫌な予感しかしないんだけど。」


「俺に言うな。そう言われてるからしょうがない。」


 うーん、これはどうしようもないな。ちょっと上条さんに聞いてみよう。上条さんに内線をかける。

 

「沖田です。今大丈夫ですか?」


「よう、どうした。かまわんけど。」


「あの、俺達の乗り物なんですけど、開発部で担当しているって田中に聞いたもんで。」


「ああ、やってるぞ。」


「ちなみにどんな物になるんですかね?」


「一応、バイクタイプになる予定だ。赤坂以外な。」


 あ、赤坂はなんか検討がつく。おそらくアレだろう。

 

「あ、意外とまともですね。」


「あのな、お前は俺達をなんだと思ってるんだ。」


 マッドサイエンティスト集団と言いたいが、ぐっとこらえる。

 

「何時ごろ完成しますかね。」


「話を逸らすな。まあ、いい。来週ぐらいにはできると思うぞ。追加の車と一緒に持っていく予定だ。」


「了解です。よろしくお願いしますね。」


 とりあえず良しとしよう。

 

 数日後、赤坂達と入れ替わるように、代休を取ることにする。

 

 

 代休も終わり、業務再開しているところに、珍しく近藤部長や越後屋がやってきた。

 

「やってるか。」


「あ、近藤部長。珍しいですね。どうしました。」


「まあ、いろいろとな。飯でも食いながら、話せんか。」


 丁度、昼飯時なので、みんなで食堂へ行くことにする。

 

「うん、これはうまいな。」


 近藤部長と越後屋はひたすらスケルトンラーメンを食っていた。話があるとかいっていたのに、ラーメンに夢中で一向に話が始まる気配はない。

 

「で、何があったんですか。」


 痺れを切らした俺が口を開く。


「ああ、チャーズ討伐の連合軍だ。」

 

 以前に評議会で、連合軍を派遣する話が出ていた。編成に問題でもあったのだろうか。

 

「なにか問題でも?」


「ヨーレルと冒険者ギルドを中心として、連合軍を編成する、というところまでは決まった。」


 ロンドガルやラフェリアはローネシア大陸なので、出兵には海を渡る必要がある。よって、出せる兵の数には限界があるので、そうなるだろうとは思う。

 

「で、討伐後はお前が統治するって話だったろ?」


 ああ、忘れてた。そういう話だった。素直にうなずいておく。

 

「ところが、ヨーレルが攻め込んだ分は統治させろ、といってきた。」


 あーそっちか。国境付近の戦闘で被害を受けた分の賠償をよこせということだろう。

 

「でも、ロンドガルやラフェリアは認めませんよね。」


「当然そうだ。で、そこで止まってしまっている。」


 今、連合軍が出ると、そのままヨーレルの軍が占領とか勝手に始める可能性がある、ということか。

 

「それは面倒ですね。」

 

「ああ。」

 

 他人事なので気楽に聞ける、というのはなかなかいいな。

 

「であれば、レジスタンスを前面に出す、というのもアリではないですか?」


 あ、赤坂・・・ 余計なことを・・・

 

「レジスタンス?」


 おっさん達は静かにラーメン食ってなさい。身を乗り出すんじゃない! そこに食いつくのはやめろ!

 

「ええ、昔チャーズに滅ぼされたレットラントという国の人々が、レジスタンスとしてチャーズに対抗しているらしいです。」


「なるほど。であれば、レットラントを再興する、という大義名分も成り立つ可能性があるか。」


 ん? 待て、ということは、俺が統治しなくてもいいってことか。

 

「幸い、ここにもレットラント出身の人達が何人かいますので、話を聞いてみるのもいいかもしれません。」


「ほんとか。では早速聞いてみよう。」


 食事が終わるや否や、スパイことグルセアや、海賊のレイモンド達が呼び出される。

 

 

「レジスタンスですか。まあ、聞いたことはあります。」


 グルセアはスパイとして活動していたので、それなりに情報は持ってるはずだ。しかし、なんかはっきりしない感じであった。

 

「実際、レジスタンスは存在しているのは確かだが、それを聞いてどうするつもりなのか?」


 ああ、そういうことか。グルセアもレイモンドも、レットラントの再興を期待している。その期待の星がレジスタンスということだ。ここでレジスタンスに悪影響を与えることをすれば、自分達の望みも尽きてしまうため、慎重にならざるを得ないわけだ。

 

 近藤部長が、俺達の計画を説明する。すると、みるみるレイモンド達の顔が明るくなった。

 

「実は、レジスタンスを率いているのは、ローレイ王子なんですよ。」


 グルセアが説明していく。

 ローレイ王子というのは、レットラントの王家の生き残りで、当時は子供だったが、現在はかなり人望のある若者に成長しているとのこと。おそらく周りの家臣がしっかり教育したのだろう。

 そして、ばらばらだったレジスタンスを纏め上げ、今のレジスタンスとしての体制を築けたのは王子の才能と人柄によるものとのこと。

 

「期待できそうですな。」


 越後屋が怪しい笑顔を見せる。悪い人ではないと思うのだが、どうも怪しすぎる。

 

「よし、レジスタンスを支持する方向で考える。早速、評議会にぶつけるための案を考えてみるか。とりあえず、そのローレイ王子のことは他言無用だ。ヨーレルが余計なことをしかねん。」


 近藤課長からの連絡を待ち、水面下でローレイ王子との連絡をとりつつ、準備を進めることになった。

 また、ローレイ王子とのコンタクトについては、グルセアが対応してくれることになった。

 グルセアには、簡易インカムを持たせることにする。俺達との連絡しか使えないし、グルセアの生態認証がされているので、万が一盗まれてもインシデントにはならないという、優れものだ。つまり、盗まれたり、なくしたりしても俺が始末書を書く必要はない、ということだ。

 翌日、グルセアは青森さんにクルーザーで、レイモンドに教えてもらったチャーズの進入可能ポイントまで運んでもらった。


 

 グルセアからの連絡を待っている間、いろいろと出来ることを進める。

 そんなある日、珍しく上条さんがこっちにやってきた。

 

「あれ、上条さんがこっちに来るって珍しいっすね。」


「例の物持って来たぞ。入り口においてある。」


 早速見に行くことにする。

 

 そこには、トラックとジープ、そしてオフロードバイクが大きめのと小さいので1台ずつと、お約束の箒が1本あった。

 箒といっても、なんか近未来的なデザインの、どうやって掃除するんだ?という感じの箒だった。

 

「これが赤坂専用の箒ですね。」


「ああ、なにげに一番金と時間がかかってる。」


 バイクや車より高い箒ってなんなんだ・・・

 

「あれ、バイクは3台じゃないっすか?」


「3台あるだろ?」


 良く見ると、トラックの陰に原チャリが1台あった。

 

「この原チャリは・・・」


「ああ、紛れも無く、沖田のだ。」


 ・・・やられた。

 

「オフロードバイクは、サスケと三村の分だ。」


 赤坂が同情するような目で、こちらを見つめていた。

 

「でも、性能は全部変わらないぞ?」


 うん、原チャリだ。どこから見ても原チャリだ。紛れも無く原チャリだ。

 気を取り直して、試乗してみることにする。

 

 ところが。

 これが異常に早かった。本当に性能的な違いはない。違うのは見た目だけ。

 でも、原チャリ。

 

「あとで、田中と高知の分も届けさせるから。」


「田中のも原チャリでいいですよ。」


「いや、原チャリはお前だけだ。」


「・・・・」


 そういうと、上条さんは食堂にスケルトンラーメンを食いにいった。

 

「沖田さん、申し訳ないっす。」


「まあ、いい。気にするな。」


 とはいうものの、俺のモチベーションとかいう奴は駄々下がりだ。

 しかし、原チャリとはいえ、移動手段が確保されるというのは効率UPに間違いは無い。

 とりあえず、慣らしを兼ねて、猫人族の村に行くことにする。

 

 猫人族の村の港では、海賊船の修理が進んでいた。

 

「これは、沖田さん。また変わったものに乗ってますな。」


 村長のロドリゲスが、目ざとく見つけてきた。

 

「ええ、今日届いたばっかりですよ。」


 なんか、子供達がやたらと集まってくる。こ、こんなはずじゃ・・・

 とはいえ、やることはやらないと。港に海賊船の修理状況を確認しにいく。

 今回の移動はクルーザーではなく、海賊船を使うつもりだ。クルーザーだと乗り切らないし、万が一のためにもクルーザーは温存しておきたい。

 

 レイモンドに状況を確認しに向かう。

 

「レイモンド、どうだい。」


「沖田さん。また、変なのに乗ってるにゃ。」


 ほっといてくれ。とりあえず、リーゼは無視しとく。

 

「修理は順調だ。あと2日ぐらいで終わりそうだ。」


 レイモンドも苦笑している。なんなら、お前らの船を痛船にしてやろうか?

 

「チャーズに行くときはこの船を使わせてもらうつもりだから。よろしく頼む。」


「ああ、当然だ。まかせろ。」


 リーゼは変なのとかいった割には、原チャリに興味津々だった。

 

「リーゼ、乗ってみるか?」


「いいのかにゃ? お願いするにゃ。」


 オフロードバイクだと結構楽に二人乗りできるが、原チャリは基本一人乗り用なので、無理やり二人乗りする。一応、こっちには交通法規とかないので、警察に捕まることはない。

 で、乗ってみると・・・ う、リーゼの胸が・・・ せ、背中に・・・

 しばらくその辺を走り回るが、リーゼの胸が気になってしょうがなかった。

 これ以上、二人乗りしていると、俺の平常心がやばくなりそうなので、終了にする。

 とはいえ、原チャリGJ! 

 

 よし、また来よう、と思いつつ帰ることにする。


2章もほぼ書き終えたっぽいので、後半部分の設定のずれや矛盾のチェック中です。ついでに3章もぼちぼち準備中。

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