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暁なき世界の覇王   作者: 未記入です。


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第一話 終わり、そして始まり

第一章 神に忘れられた子

人は死んだ後、どこへ行くのだろう。

天国か、地獄か。

それとも、何もない無の世界か。

俺は、その答えを知ることになった。

もっとも、それが望んだ形だったかどうかは別の話だ。


俺の名前は、黒瀬蓮。

二十七歳。

特別な才能もなければ、人に誇れるような経歴もない、ごく普通の人間だった。

大学を卒業し、会社に就職して、毎日同じ時間に起きて、同じ電車に乗る。

そんな生活を繰り返していた。

趣味は読書。

特にファンタジー小説が好きだった。

剣と魔法の世界。

強大な魔物。

巨大な王国。

そして、何者でもなかった主人公が、努力と経験を積み重ねて強くなっていく物語。

現実では決して手に入らないものが、そこにはあった。

その日も、仕事帰りに本屋へ寄り、いつものように小説を一冊購入した。

帰宅途中、雨が降り始めた。

傘を持っていなかった俺は、スマートフォンをポケットにしまい、駅へと急いだ。

そのときだった。

耳をつんざくようなブレーキ音。

振り返ると、視界いっぱいに大型トラックが迫っていた。

避ける時間などなかった。

衝撃。

浮遊感。

そして、暗闇。

(……ああ、死ぬのか)

不思議と恐怖はなかった。

ただ、もう少し生きていたかった。

もっと違う人生を歩んでみたかった。

そんな後悔だけが胸に残った。


次に意識が戻ったとき、俺は奇妙な感覚に包まれていた。

身体が動かない。

目も開けられない。

声を出そうとしても、喉から音が出なかった。

(なんだ……?)

何かがおかしい。

身体が異様に小さい。

それに、周囲から聞こえてくる声も理解できない。

いや、理解できないのではない。

言葉そのものが違うのだ。

『――産声が弱いな』

低く、威厳のある男性の声。

『旦那様、まだ生まれたばかりです。どうかご心配なさらず』

女性の声が続いた。

そして。

『この子が、クロイゼル家の次男か』

クロイゼル?

聞いたことのない名前だ。

その直後、俺の身体は優しく抱き上げられた。

『アルヴェイン』

男性がそう口にする。

『アルヴェイン・クロイゼル。それがお前の名だ』

アルヴェイン。

それが、新しい俺の名前だった。


生まれ変わった。

そう理解するまでに、数日を要した。

俺は赤ん坊になっていた。

しかも、どうやら相当な名家に生まれたらしい。

世話をしてくれる侍女たちの会話から、いくつかの情報が分かった。

ここはエルディアス大陸。

その南西部に位置するヴァルディア王国。

そして俺が生まれたクロイゼル家は、王国でも屈指の歴史を持つ公爵家だった。

剣術に秀でた武門の家系。

代々、王国の北方防衛を担っているらしい。

つまり、貴族の中でもかなりの名家ということだ。

(転生先としては悪くない……のか?)

しかし、問題もあった。

クロイゼル家には、一つの厳格な家訓が存在していた。

『力なき者に、家名を名乗る資格なし』

家柄や血筋だけでは認められない。

実力がなければ、たとえ当主の子供であっても容赦なく切り捨てられる。

そんな家だった。

(なかなか厳しい世界に生まれたみたいだな)

だが、俺は少しだけ笑った。

前世では何者にもなれなかった。

今度こそ、自分の力で何かを成し遂げたい。

そう思った。


このときの俺は、まだ知らなかった。

自分が生まれたことそのものが、この世界にとって異常だったということを。

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