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第1話 委員会決め

「はーい、委員会決めるぞー」


 ホームルームの時間、担任が黒板に委員名を書いていく。


「佐々木さん、何か委員会入る?」


「...別に」


 佐々木さんは正面の黒板を見つめたまま、小さく言った。


 実にそっけない。


 彼女は変わらず無色透明で、何を考えているのかわからない。


「そっか」


 聞いておいてなんだけど、僕も委員会に入るつもりはない。


「じゃあ、まずクラス委員長から決めるぞー。やりたい人いるかー?」


 担任がそう言うと、クラスの空気が青と赤と灰色になった。


 不安と警戒と疲労ってところか。


 担任がクラスメイトを見回すが、みんな視線を逸らすか、目を伏せるかして、目を合わせることを避ける。


 ——スッ


 そんな中、一人の男子が静かに手を挙げた。


 黄色と紫...正義、優越、不安、葛藤、期待...いろんな感情が渦巻いている。


 かなり頑張ってるな。


「お、遠藤やってくれるか! はい、じゃあ後は女子! 誰かいないかー?」


 そして、またクラスの空気が変わる。


 男子の色は青からオレンジ——不安から安心へと変わり、反対に女子はより一層濃い青——不安とストレスへと変化する。


 担任に対する敵意まで持ち始めた人もいる。


 あぁ...また他人の色のこと考えてる。


「佐々木さん、やったら?」


 自分で言っていて、心底性格が悪いなと思う。


 しかし、それでも彼女の色が変わることは無かった。


「...」


 一切の揺らぎなく彼女は俺のことを一瞥して、また黒板へと目を向けた。


 怒ったのかな。


 いや、それなら赤くなるはず...。


 でも、佐々木さん無色だからわかんないんだよな。


「...ごめん。無神経だった」


「別に...」


 ん?


 今、一瞬揺らいだような...。


 いや、気のせいか。


「おーい、女子でやりたい人いないのか? じゃあ最後にもう一回聞くからなぁ? はい次、体育委員」


 そうして、担任は諦めて次の委員会へと進めた。


 担任は青と灰色——不安、焦燥、ストレスの色が濃くなった。


 先生も大変だな。


 それから、いくつかの委員会は埋まったが、新聞委員、風紀委員はあと1人、図書委員、美化委員は誰も立候補しなかった。


「おーい、委員が決まるまで帰れないからな? ちゃんと決めてくれよー?」


 担任は冗談めかして言っているが、青の深みがより一層増している。


 相当なストレスがかかっているのだろう。


 その後、担任が何度か委員名を言って立候補者を募ったが誰も手を挙げなかった。


 そして、最終的にまだ委員に入っていない人たちでじゃんけんをすることになった。


「どれか一つを選んで、負けた人に委員会を担当してもらう」


 それでいいのかとは思うが、クラスの色を考えると仕方がないとも思う。


 皆かなり濃い青色になってきている。


「佐々木さん、どれにする? 僕は図書委員にしようかな。楽そうだし」


「...私も図書委員」


「......へぇー」


 てっきり、僕が選んだのとは違うのにすると思っていた。


 嫌われてはないってことかな。


 というか、初めてまともに返事をしてくれた。


 なんだろう、ちょっと嬉しいかも。


「そ、そうなんだ。じゃあ一緒だね」


「...」


 そうして、また佐々木さんは黙ってしまった。


 ***


「はーい、じゃあ次、図書委員の人」


 担任がそう言うと、7人ほど手を挙げた。


「じゃあ、図書も後ろでじゃんけんしてくれぇー」


 担任はもはや委員会が決まればなんでもいいって感じだ。


 ——ガタっ


 担任が言ったのを聞いて、最初に佐々木さんが立ち上がった。


 それを見て、続々と先ほど手を挙げた面々が後ろへ集まっていく。


 僕もそれに混ざって後ろへ移動する。


「じゃあ...最初はグー」


 誰かがそう言って、じゃんけんが始まった。


 じゃんけんは苦手だ。


 青、黒、赤、黄、緑、皆いろんな色が混ざっているから、深読みしすぎていつも負ける。


 ***


「はい、図書委員は伊坂と......佐々木ね」


 なんの偶然か、僕と佐々木さんがじゃんけんに負けた。


「佐々木さんもじゃんけん弱いんだ」


 僕がからかうと、佐々木さんがこっちを向いた。


「...」


 佐々木さんが初めてムッとした表情をした。


 その顔を見て、不覚にもドキッとしてしまった。


 僕は今、どんな色をしているんだろう。


 顔...赤くないといいな。

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