プロローグ 色のない女の子
高校の入学式の日だった。
クラスに一人、色のない女の子がいた。
不安の青、興奮の黄、安心の緑、様々な色がある教室の中で、僕は彼女から目が離せなかった。
***
僕は人の感情が色で見える。
その時、何を思っているのか、本当のことを言っているのか、全てわかってしまう。
その結果、知らなくていいことまで知ってしまう。
人は誰しも本音を隠す。
優しい言葉の裏にある悪意。
笑顔の奥に隠された嫉妬。
最初は皆、綺麗な色をしているのに、いつかは必ず汚くなってしまう。
そうして、気づけば僕は人と関わるのが嫌になっていた。
「――透、起きなさい。遅刻するよ」
「ん...」
僕は重い瞼をこすって開いた。
あー朝か。
「うん...すぐ行く」
僕がそう言うと、母は部屋のドアを閉めて階段を下りて行った。
なんだか今日は嫌な夢を見た気がする。
***
学校に来ると、いつも構えてしまう。
たくさん人がいるところは苦手だ。
——ガラガラ
教室のドアを開けると、僕の目にはたくさんの色が映った。
息が詰まる。
「あっ...」
そして、一人の女の子と目が合った。
うるさいくらいに、色鮮やかな教室の中で一人だけ色のない女の子。
「おはよう」
僕は机にカバンを置きながら、小さく挨拶をする。
「...」
彼女は何も言わない。
「今日、暑いね...。佐々木さん、まだ長袖なんだ」
「...うん」
そして、彼女はまた何も答えてくれない。
入学式の日に見た彼女が、隣の席になってから一か月。
気づけば僕は、彼女の色が気になって仕方なくなっていた。
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