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欲しがりな妹が婚約者だけでなく屋敷も欲しがったので、私は全てを置いて自由の身になります。けれど、その庭に植えられている植物は……手入れがとても大変でしてよ? 

作者: 海月 花夜
掲載日:2026/07/24


「今日も好き勝手伸びちゃったね」


 屋敷の外にある広い庭。

 バラやブーゲンビリアにシャクナゲ。

 様々な植物が綺麗に庭園を形作っている。


 その中でも厄介なのが――カクミミッケと呼ばれる魔性植物だ。


 小さな三つ葉が繋がった様な植物で、そこから四枚のピンク色の花を咲かせる。

 見た目は誰が見ても綺麗と言う。


 けれど手入れを怠れば、

 直ぐに手が付けられなくなってしまう。


 それも魔性植物が周囲の魔力で昼夜問わず、育つのが原因だ。

 だからこそ、根気強く手入れが必要になる。


「私が整えて、きっちりさせるからね」


 手に魔力を纏わせ、指でつまむ。

 すると、剪定バサミで切ったかの様に植物が切れてくれる。


 普通にハサミで切っても、次の日には元通りだ。

 それを解決する為に私が見つけた方法でもあった。


 切断面に他の魔力が残っているからか、再生が遅くなる。

 それだけ聞けば植物に悪そうだけど、この植物に限って言えば問題ない。


「適材適所とはこのこと~」



 そんな私が、気楽に庭のお手入れをしている時だった。



「エレナ! こんな所に居たのかッ!」


 私の名前を強く呼ぶ声が聞こえて来る。

 エレナ・バレロン。


 それが今の私の名前だ。

 辺境の子爵家で生まれ育った次期当主。


 次期当主になったのも、弟ではなく妹が居るからだ。

 両親は三人目は考えずに、男性貴族を婿入りさせる事にした。


 それが婚約者であるフェリクス・ホルダだ。


「フェリクス、どうしましたか?」


 私はフェリクスに聞き返していた。


 けれど怒った様な顔で、近づいて来る。


 腕が掴まれ、屈んでいた身体が無理やり立たされてしまう。


「どうもこうもあるか! 来いッ――!」


「フェリクス痛いっ、ちょっと待って」


「うるさいッ!」


 そのまま引っ張られ、私は屋敷の中へと戻される。

 メイドや執事までもが集まっている食堂。


 いったい、何があったんだろう。


「エレナ! どういう事だ! これは――!」


 フェリクスが怒鳴りながら、食堂に居た妹の――ベロニカを指さす。

 腕を抑え、薄っすらと滲んだ血がドレスを汚している。


 その近くには、厨房で使う包丁と食材が置かれていた。


「ベロニカ怪我をしたのね。だからあれほど、刃物を扱う時は気をつけるようにって言ったのに」


「貴様! まだ知らないと申すかッ――!」


 フェリクスが更に怒鳴り、妹に近づこうとした私の前に立つ。


「いったい、何の事ですの?」


「もう良い。妹も大切に出来ないクズな女だとは思いもしなかったよ」


「だからいったい何の話をしているの、フェリクス」


「貴様がベロニカを傷つけのだろ!」


「えっ……?」


 何のこと……。

 私が?


 でもありえない。


 だって、今日起きてからベロニカの顔を見たのも今だ。


 言いがかりも良い所だ。


「ベロニカ、貴方またそんな嘘をついて――」


「貴様こそ、いい加減にしろッ!」


 近づこうとした私の頬に、痛みが走る。

 顔が自然と横を向き、遅れて視線を動かせば振り払ったフェリクスの腕が見えた。


「フェリクス、貴方いったい何を……」


「どうもこうもあるかッ! 妹を傷つけ、それすらも認めない者に痛みを教えたまでだッ! 貴様はベロニカの腕を斬りつけだのだぞ! これで少しは分かったかッ!」


 ――何かを言う前に頭を叩かれてしまう。


「おやめ下さい、フェリクス」


 近くに居た執事がそれを慌てて止めるも、それでもフェリクスは暴れ続けていた。



 何で……。


 私が何をしたって言うの……。


「フェリクス、貴方何をしたか分かっているの? 私達、婚約してるのよ……」


「誰が貴様みたいな女と結婚するかッ。この事はバレロン当主様にも伝え、俺はベロニカと婚約を選ぶ! きっとご当主様も理解してくださる筈だ! 妹を大切にしない者に大事な家を任せる訳にはいかないからなッ――!」


 騒ぐフェリクスの声が小さくなる。

 いや、私の思考が受け付けていないだけだ。


 もう、どうでも良いのだろう。


 こんな男。


 妹の話に耳を貸すのは良い事だ。


 なのに、どうして婚約者の話は聞こうとしないのか。


 まるで理解が出来ない。


 そう言えば、前世にもこういう教師が居た気がする。

 誰かが悪いと言えば、その子の話を信じて一方的に殴って来る教師。


 時代が時代だったから、それが余りにも多かった気がする。


 もう――遠い昔の話だ。


 今の私は、エレナ・バレロン。


 けれど、この名前にすらもう……気持ちが入らない。


「そう、私との婚約は破棄して、ベロニカと結婚するのね」


「それが理解できたのなら、さっさとこの場から消え失せろ!」


 戸惑う事なく言い切ったフェリクスの言葉を聞いて、私は何もかもがどうでも良くなった。


 一つ頭の中にある心配としては。


「明日は、屋敷で昼餐会を開く筈だったけど、既に向かっている招待客にはなんて伝えるのかしら」


「ただ事実をだ。貴様の悪事と、ベロニカとの婚約を宣言する!」


「そう……分かったわ」


 私が呼んだ人達も混ざっている。

 けれど、今から伝える手段はなかった。


 もう諦めるしかないかな。


 後から連絡しても、きっと……分かってくれる。


「それじゃ、この場に居る貴方達が承認ね。この時をもって、私はバレロン家の家名を捨てます。次期当主はベロニカ、貴方よ」


 周囲のメイドや執事からどよめきが生まれるも、今更残る気にもなれない。

 父上と母上も、妹を溺愛しているのだから言った所で無意味だ。


 大して強く言ってくれないどころか、私が怒られるまである。


 もうそんなのには付き合って居られない。


「そして俺は、ベロニカと結婚する事を誓う!」


 勝手に話し始め、周囲にフェリクスが宣言していた。

 どうぞご自由に……。


 もう私には関係ないわ。


「それじゃ、元気でね」


 私が食堂を去る時に、ベロニカと目が合う。

 口を開いたかと思えば舌を出して、嘲笑う様に微笑んでいた。


「さようなら、お姉様」



 ***



「もうっ、私が何したって言うのよっ……!」


 辺境にある屋敷だ。

 街や村に向かうまでの道のりは長い。


 そんな場所で私は、転がっていた石を蹴りながら歩き続けていた。


 例え涙が出そうになっても、一刻も早くこの地域を離れたいという気持ちが身体を前に進めてくれる。


 それでも込み上げて来るものが、止め処なく溢れてしまう。


「もう、最悪よ……」


 最初は優しい婚約者だったのに、どうして……。


 きっと、ベロニカと話す内に何かがあったに違いない。


 あの妹はいつも、私から何かを奪おうとする。


 だからこれで離れられたのは良かったのかも知れない。


 もう二度と会うつもりはない。


 そう……彼らが私にすがってきても助けたりはしてあげない。


 だって私を助けてくれなかったのに、自分達だけ助けて欲しいは話が通らない。


 そんなの絶対に駄目だ。


「エレナ様、散歩ですかい?」


「はい、こんにちは」


 畑仕事をしていた高齢の方に挨拶をして、私は歩き続ける。


 立ち止まってしまったら、顔をしっかり見られてしまう。

 そしたらきっと、話を聞こうとしてくれる。


 領民は皆、優しい人達ばかりだからな。


 もしかしたら、皆で屋敷に乗り込んでしまうかもしれない。


 嬉しいけど、もう良いかな。


 暫く一人で歩いて考えたけど、あの屋敷には戻りたいとは一度も思えなかった。


「夕方までには、街に着くと良いな」


 近くにある大きな街まで馬車で数時間はかかってしまう。

 そんな距離を歩こうとしているのだから、夜までに着けば良い方だ。


 のどかな平原や畑が広がる場所だから視界は拓けている。

 だから、前から来る馬車は直ぐに分かった。


「昼餐会は明日だけど、もう来た貴族の方かな……」


 遠くから来てくれる方は屋敷に泊まったりもする。


「止めてから、謝った方が……」


 いや、それも含めてもう、ベロニカとフェリクスの役割だ。

 ここで私が辺にしゃしゃり出たら、また何を言われるか分からない。


 筋を通したい気持ちもあるけど、今後を考えたら意味がないかな。


「ごめんなさい」


 声を出しながら通り過ぎる馬車に頭を下げる。


 きっと聞こえていないだろうけど、やらないよりは良い。


 少なくとも御者の人は見てくれたし、もしかしたら聞こえてたかもしれない。


 頭を上げ、そのまま馬車が走って行くのを見て、再び歩き出そうとした。

 けれど後ろから物凄い馬の鳴き声が聞こえ、馬車が草原に入って曲がる光景を目にする。


「えっ……」


 余りに無理な急旋回だ。

 馬と、草原が可哀想まである。


 ――そして私の目の前で馬車が急停車する。


 何かを確認するよりも先に扉が開き、中からドレスを来た少女が飛び出して来た。


「エレナっ!」


「えっ、セレスティナ!?」


 驚きながら飛びついて来たセレスティナを受け止め、そのまま身体が一回転する。

 勢いが収まり、ゆっくりとセレスティナの腰に手を当てたまま地面に足を着けてもらう。


「もう危ないでしょ」


「だって、久しぶりに会えたものですから。それよりも、こんな所でどうしたのですか? (わたくし)これから、屋敷に向かおうとしてたのですよ? 散歩ですか?」


「それが……」


 隠す事も出来ず、私はセレスティナに事情を話した。


「それは本当ですのっ!?」


 狭い馬車の中で、セレスティナの声が響く。


 私よりも怒っていて、頭に血が登っていた。


「セレスティナ! この馬車に大砲は積んでなくて? 今すぐ、屋敷に放ちに行きますわよ」


「お嬢様、流石にご用意しておりません。エレナ様も、大砲がなく落胆されたと思いますが、ご容赦いただけますでしょうか」


「えぇ、大丈夫ですよ」


 本当にやりかねない二人を見て、私は少し笑ってしまう。


「ありがとう、セレスティナ」


「ん? どうしてですの? まだ復讐は済んでませんでして?」


「いやいや良いから、私――そういうのは興味ないかな」


「そうですの? まぁでも、エレナがそれで良いとおっしゃるのなら、私もそれで構いませんでしてよ。でも、いつでも言って下さいね。あんな家、いつでも潰して差し上げます」


 今朝まで私も住んでたんだけどな……。

 でも、私を気遣っての事なんだと思う。


 良かった、セレスティナに話す事が出来て。


 今思えば、そのまま屋敷に行っていたら、本当に血の海になっていたかもしれない。


 セレスティナはこう見えて、魔導師だ。

 そこらの人間であれば、一人で相手に出来る。


 そんな彼女がわざわざ大砲を使おうとしたのは、派手さと情なのかも知れなかった。


「それよりもエレナは、これからどうするのですか?」


「決まってないけど、この領地には居たくないから。とりあえず、王都まで一緒に行っても良い?」


「もちろんですわ。というか一緒に住みましょう、部屋なら沢山ありましてよ」


 笑顔でそんな事を言ってくれるのは有り難い。


 けど、


「流石に、王城に住むのは……ちょっと」


 セレスティナ・セレスティナ。

 まごうことなきこの国の第四王女様だ。


 何故私とこんなにも仲良くしてくれているのかと言うと。

 ただ単に、私が植物に向かって話しているのを見てからというもの、どうしてか私の事を面白がってくれてそれからずっと仲良くしてもらっている。


 昼餐会だって、三ヶ月に一回は会いたいと言うセレスティナたっての希望から始まったものだ。

 そんなセレスティナに会いたくて他の貴族も顔を出してくれて、自然とバレロン家の信頼度は上がっていた。


 これからどうなるかは、分からないけど。


「それは残念です。けれど、王都には住むのでしょう? ならこれからは頻繁に会えますね」


「その予定だけど、お金もないから。まずは仕事かな」


「でしたら、エレナに使っていただきたい物件がありましてよ」


「流石に悪いよ。気持ちだけで十分だよ」


「それは、見てから……判断していただけますか? その……少々情けない話ですが……出来れば、受け取っていただけると、非常に……助かります」


 少し気まずそうにするセレスティナを見て、私はとりあえず見る事を決めた。



 それから道中。

 夜を二回経てから王都に辿り着いた。



 これでも早い方だ。


 普通の馬と馬車なら、後一日はかかっていたと思う。


 流石王家が扱う馬と馬車だ。


 凄さが違う。


 ――そして私の目の前にも、ある意味――物凄い建物がある。


 全体的に蔦で覆われた少し大きな家。

 可愛らしい三角屋根も緑で覆われ、下にある茶色の屋根材が殆ど見えない。


 中にも植物が広がっているのか、窓に張り付いていると思った植物がガラス越しに見えてしまう。


「セレスティナ……これはいったい、何があって。こうなったの?」


「それは……その……エレナの話を聞いて、私も植物を育ててみよう……かなって、思ったり?」


「そしたらこうなった?」


「そう、そんな感じでしてよ」


 笑って誤魔化そうとしているが、確かにこれは……処分すらも困るレベルだ。


 王城でしなかったのが唯一の救いだと思う。


「どうです? 貰っていただけますか?」


「貰う!? 貸すじゃなくて!? 王都のそこそこ良い土地だよ!?」


 この小さな家がある場所を買おうとするだけでも、私が今朝まで住んでいた屋敷が多分二つは建つと思う。それ程までに此処は立地が良いのだ。


「ええ? それが何か?」


 けれど王女様には、関係のない話だったみたい。


 貰えるなら……貰うけど……。


 再び植物まみれの家を見る。


 大変そうだけど、私なら何とか出来るかな。


 それに此処なら――お店とかも出来るかもしれない。

 全く考えていなかったけど、こんな素敵な家が貰えるなら何だって出来てしまう。


「良いの貰って?」


「えぇ、差し上げます」


「分かった、お金はいつか渡すから」


「必要ありませんでしてよ?」


「駄目、こういうのはしっかりしないとね」


「分かりました。気長にお待ちしております」


 何年もかかると思ったのだろう。

 セレスティナが少し微笑んでいた。


「そうと決まれば、まずは――」


「紅茶にしましょう」


「掃除だよ、掃除。それと剪定に除草だよ」


「分かりました……」


「えっ、セレスティナもやるの!?」


「もちろんでしてよ。私がまいた種なのですから、エレナが管理する状態まではお手伝いするのは当然の事です」


 そうして私達は、植物との戦いを始めた。



 ***



 エレナが居なくなって一週間が過ぎた屋敷。

 そこには、以前の整然と手入れされた庭園の面影はなかった。――縦横無尽に広がったカクミミッケが他の植物を覆うだけでなく、屋敷すらも飲み込む勢いで広がっていた。


 辺りが緑が、ピンク色の小さな花で埋まっている。それだけを見れば綺麗ではあるものの、人が住む場所として考えるとエレナが王都が目にした建物よりも酷い。


 それもその筈だ。


 王都にあったのは、カクミミッケの成長を抑えた品種に当たる。


 元祖、カクミミッケの成長速度はその比じゃない。


 だからこそベロニカやフェリクス。

 屋敷に従事する者達が総出で取り除こうとしても、間に合わないのだ。


 そもそも彼らは、魔力で切るという事を知らない。


「何だこれはッ! 切っても切っても生えて来るぞッ!」


 手で乱暴に引きちぎったフェリクスが叫ぶ。

 そのまま別の箇所を引きちぎっていると、先程の場所が気の所為だとは思えない速度で伸びている。


 魔性植物は、人が近くに居るだけでも成長してしまう。

 そんな植物を乱暴に引きちぎったのだ。

 手が触れ、動き回った場所に魔力が垂れ流されている。


 それを吸収しているのだ。


 もっと怒りを込めて、手に魔力を集めていれば自ずとエレナみたいに、魔力で切った事になったかもしれない。けれどそれを行える程にフェリクスは優秀でもなかった。


「フェリクス様、いったいどうしたら」


 ベロニカがフェリクスに抱きつくも、解決策が示される事はない。


 本人がどうして良いか分からないのだ。


「おいお前らッ! 早くこれをどうにかしろ!」


 近くにいる使用人に言いつけるが関の山。

 実に酷い。


 それは少し離れた場所でも余り変わらなかった。


「どういう事だ! 貴様らはこれまでも手入れをしてた筈ではないか!」


 ベロニカとエレナの父にして現当主の男が、離れた場所でメイドに問いかけていた。

 その後ろには何もしない母親が立っている。


「申し訳ございません。これまではエレナ様が」


「我が家を見捨てた者の名を口にするなと、何度も言ったであろう!」


「申し訳ありませんっ……」


 エレナが居なくなってから何度目から分からない叱責。

 

 それが続けば自然と、使用人も減って行く。


 日を追う事に一人、また一人と減る。


 けれど、カクミミッケの勢いは止まらない。


「あぁあああ私の部屋がぁあ!」


 カクミミッケの根がベロニカの部屋の窓を突き破り、室内へと入っていた。


「このままでは屋敷が……」


 彼らの懸念は余りにも遅かった。


 例えエレナが居なくとも、カクミミッケの異常を察知したその日か。

 屋敷に到達するよりも前に――庭ごと、全てを焼き尽くしていればまだマシな状態に意地出来た筈だった。

 けれどフェリクス達バレロン家はこれまで同様に、庭で昼餐会を開こうと考えてしまったのだ。それが終わりの始まりとは微塵も考えずに。


「くそっ、全部あいつのせいだ……。あいつが何かしていったに違いない!」


「そうですわ。お姉様ったら、私とフェリクス様が結婚するのが嫌で嫌で、意地悪をしたのですわ」


 そんな二人のやり取りを見て、残っていてくれた最後の使用人達の心も離れてしまった。


「ここまでですね。長い間、「「「お世話になりました」」」」


「おい待て! どうしてだ!」


 呼び止める声も虚しく使用人達が去って行く。


「おい! 待つんだッ!」


 例え彼らが自分の過ちに気づけたとしても――もう元には戻らない。


 これから彼らは、

 植物に満たされた家で住むか。


 財産とも言える屋敷を手放すしか道は残されていなかった。




 ***




「いらっしゃいませ」


 王都で建物を手に入れた私はお店を開いていた。


 行っているのは主に、花束の制作とポーション販売。

 ポーションを作った事はなかったけど、植物の事は知っていたから思いの他すぐに完成した。


 そして後は、毎日訪れるセレスティナ第四王女の口コミだ。

 実績はないのに信頼が付き、私はセレスティナには感謝しかない。


「この前はほんと助かったわ。娘も喜んでくれたの」


「それは何よりです」


 昨日花束をお渡しした方から、そんな事を言って貰える。

 それだけでとても嬉しかった。


「それで今度は、冒険者ごっこをして怪我をする息子に、ポーションでも飲ませてあげようと思って、数本いただけるかしら?」


「もちろんです」


 すぐにポーションを渡してお金を受け取る。


 直ぐには大きなお金にはならないけど、これも立派な稼ぎだ。


 セレスティナにお金を渡せる日もそう遠くはない。


「順調ですわね」


「セレスティナのおかげだよ、本当にありがとね」


「大した事はしていませんよ。一度は来てくれても、先程の方の様に二度目があるかどうかはエレナ次第ですから」


「それでもだよ」


「まぁ嬉しい。そう言っていただけるのでしたら、今夜は家に来て、一緒にお食事でもしてくださりますか?」


「かしこまりました。喜んで、向かわせていただきます」


「約束でしてよ。それでは私はこれで」


 楽しそうにセレスティナが去って行く。


 そして――暫くしてまたお店の扉が開いた。


 綺麗な顔立ちをした男性が訪れる。

 どうやら、女性のお客様だけでなく男性の方にも認知され始めたみたいだ。


「いらっしゃいませ」


 こうして王都での生活が、今日も続くのでした。



 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 少しでも『面白い!』そう思っていただけましたら、下記の☆☆☆☆☆から評価や反応など、何卒よろしくお願いいたします。

 皆様の応援が、執筆の原動力に繋がっています!



 ――海月花夜――


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王女の親友で危険植物の世話出来る長女の価値分かってなかった両親は社交界でヒソヒソされそう。
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