ダンジョン攻略完了
「あ───!泣いた!100年分は泣いた!」
キョウの胸の中でひとしきり泣いていたディザベルだったが、30分もすると泣き止み、涙でぐしゃぐしゃだった顔を洗い、キョウの元に戻って来た。
今まで誰にも話す事が出来なかった自分の悲しみを思いっきり吐き出す事が出来た彼女は、どこか晴れ晴れとした清々しい気分だった。
「もう大丈夫なの?」
「うむ!思いっきり泣いてスッキリした!」
泣きすぎたせいでディザベルの目元は多少荒れてはいるが、この様子なら大丈夫そうだ。
「そっか……それは良かった」
「色々ありがとう。私、キョウが一緒にいたいって言ってくれた時、本当に嬉しかった。この世界に来たのがキョウで本当に良かった」
「フッ……おいおい、なんか全部終わったみたいな感じになっちゃってるけど、まだ何も終わってないでしょ?」
もうすぐエンドロールでも流れそうな空気になってるけど、まだ首枷の関係者を見つけてもいないし、倒してもいない。
「あぁ、そういえばそうじゃったな。……くふふ、何だかもう、ついでみたいな感じになってしまったのぅ」
「ふふ、確かにね」
「まあ何はともあれ、これでダンジョンは攻略完了。そろそろ帰るとするか」
「あ、ちょっと待って!」
「ん?」
「この階層もそうだけど、色々な階の宝箱を開けずに来ちゃったから帰る前に中身を開封したくて」
「……まあいいじゃろう」
ディザベルは一瞬『泣き疲れたから早く帰って休みたいのに』って感じの嫌そうな顔をしていたが『まあ今回、色々と迷惑を掛けたし、これくらいは譲歩してやるか』って感じの顔で許してくれた。
「よーし開けるぞー!開けてないのは確か……5、6、7階層と13、14、15階層だっけか?どうせ5、6、7なんてどうせ碌な物入ってなさそうだしザックリ見ていくか」
俺は一切期待せず、5、6、7階層の宝箱を開ける。
5階のゴブリンの群れからは、中級回復薬5つ
6階のコボルトの群れからは、オオカミの毛皮が付いた鉄の鉤爪
7階のオークの群れからは、1.5mの金の棍棒1本
「まあ低階層の宝箱だしぃ?こんなものだよね!?本番はこれから!次は13階層の……13階層かぁ…………」
13階層はちょ~っとセンシティブと言いますか……。
「開けぬならワシが開けるぞ?」
「開けます!開けますから!あれだけ苦労したんだ、いいアイテムじゃないと承知しねぇからな!?」
俺は迷いも戸惑いも投げ捨てて13階層の宝箱を開ける。
中に入っていたのはほんのり赤い水晶だ。
■夢見の魔水晶
就寝時の対象に使用することで任意の夢を見せることが出来る。
エッチな夢ェ見放題ってことォ!?
スペクタクルズ・アイで水晶を見た瞬間、俺の脳内はピンク色に染まった。
これさえあれば悪夢を見る心配は無く、折角いい夢を見ても途中で終わってしまうなんてことが無くなっるって事だ。
これはなんて素敵なアイテムなんだ!と考えていた矢先、同じくスペクタクルズ・アイを発動していたディザベルが無言で水晶を破壊しようとしていた。
「ちょっと待って壊そうとしないで!!」
「こんな物、必要無い!!」
「いらないからって何も壊す事無いだろ!?」
「じゃあ使うのか!?言っておくがこんな物、悪夢を見せるくらいにしか使えんぞ!?」
「えっ!?あ!そういう使い方もあるのか」
脳内ピンクだった俺には、そんな発想1ミリも思い浮かばなかった。
「何!?じゃあ何に使おうと思った!?」
「え、あ、いや……その……エッチな夢でも見ようかと…………」
すっげぇぇぇ嫌そうな顔してる。
コイツも男だ……みたいな呆れと葛藤が表情から見て取れる。
「…………はぁぁぁ……早く次を開けろ」
「はい……」
今までとは毛色の違う気まずさを抱えたまま、14階層の宝箱を開ける。
■真紅龍の鎧
真紅龍の力を宿した真紅の鎧。
ヒヒイロカネと同等以上の強度を持ちながら布の様に軽いこの鎧は、身に纏った者は真紅龍を力を与える。
おお~!今まで武器は出て来てたけど防具は何気に初めてだ。
ヒヒイロカネと同じくらい硬いって書いてあるし、俺の筋肉の鎧を凌ぐ最強の防具かもしれない!
いいねぇ!これ着てダンジョンから出ちゃおうかな~?
浮かぶよ~、カッコいい防具を装備した最高にカッコイイ俺が周りの冒険者や夢見るちびっ子達からチヤホヤされる光景が!
……なーんてね、効果説明を見た時は思いましたよ。
どんなカッコいいのが入っているんだろうと宝箱から取り出した瞬間分かった。これ女性用だ。
ん?なんで鎧なのに何で分かったかって?そりゃあ───
「ビキニアーマーだ、これぇ……」
宝箱から偶然手に取ったのがビキニの上部分だった。
「まさか、実在するとは……」
俺は取り出したビキニアーマーを見て思う。
真紅のガントレットに真紅のハイヒールブーツはまだ分かる。
だがこんな薄っすいビキニで身を守れるのか~~~!?何処も守れてないんじゃあないか~~~!?
というか宝箱にはブーツとガントレットにビキニ、それしか入ってない!
ってか、よく見ればこれただのビキニじゃあ無い!ビキニにしては面積が小さすぎる!
これマイクロビキニだ!マイクロビキニアーマーだ!!
守るどころか隠せんのかこれ!?
そもそもなんでこんなのがドラゴンを倒した報酬なんだよ!?
普通、ドラゴンキラーって感じの大剣とか入ってるもんじゃない!?
なんでこんなエロ装備が入ってんだよ!?
「こういうのが好きなのか?」
馬鹿みたいな防具に気を取られていて気付かなかった。いつの間にか横からディザベルが覗き込んでいた。
「いや!別にそんなんじゃ無い!俺の世界では空想の存在だった存在に出会ってビックリしただけだから!」
「ふーん」
俺は真実をありのまま話したのに、この信用されてない感じ。
俺はどうにか弁明しようと思考を巡らせているとディザベルが俺からビキニアーマーを奪い取った。
「あ!」
「これはワシが売る時まで預かっておく」
「あ、どうぞ……」
「ふん」
変態の烙印を押されたかは微妙なラインだがディザベルの中で俺がまだ変態になってないと信じて15階層の宝箱を開ける。
「これが最後!いいの出ろ!!」
■反魂の指輪
──────────────────。
「んん!?」
宝箱から出て来たのは黒紫の指輪だったが効果が読めず名前しか分からない。
名前からして蘇生アイテムなんだろうけど……。
「ディザベルはこれ、何か分かる?」
「ワシも名前しか分からぬ」
「ほぇー、ディザベルでも分からないなんて」
意外や意外。あのディザベル様でも分からないことがあるとは………。
「まあいいか」
俺はディザベルに反魂の指輪を渡す。
「ディザベルが持ってて、名前通り蘇生アイテムならパーティーの中で一番硬い奴か一番強い奴が持つのが定石だから」
「うむ、分かった」
ディザベルは俺から渡された反魂の指輪を大切にアイテムボックスの中に仕舞った。
「さーて、一通り開封も終わったことだし帰るか!」
「うむ。早く帰ってベッドに横になりたい」
「俺も俺も」
長かったダンジョン攻略もこれで終わり。
俺達は出現していた魔法陣に乗ってダンジョンから脱出した。
■入手アイテム一覧
1F、薬草3枚
2F、コボルトの毛皮 (ディザベルによって燃やされ焼失)
3F、下級回復薬3個
4F、水属性の魔剣 (操られたディザベルとの戦いで蒸発)
5F、中級回復薬5つ
6F、鉄の鉤爪
7F、金の棍棒
8F、リターン・ハルバード
9F、トライ・ヴェノム・ベルジュ
10F、巨大なミスリル鉱石の塊
11F、アースイーター・リュック
12F、宝箱一杯に入った沢山の宝石
13F、夢見の魔水晶
14F、真紅龍の鎧 (マイクロビキニアーマー)
15F、反魂の指輪 (現状効果不明)




