ストレスフル
その日、マリアッチの隠し部屋の魔獣たちの手入れをしていた私の所に土だらけのノリコがやってきた。
鉱山のもう一つ奥の山にマグマ溜まりを見つけたと、地質魔女ノリコはそういう。
ノワール「やったわ!お手柄じゃない!」
喜ぶ私を尻目に「さてと。」と言いながらノリコは身支度を始めた。
ノリコ「ここでの仕事は終わった。次に行くから!また何かあったら呼んでくれよな!」
え?もう行っちゃうの?
ドルガ「待てよノリコ、今度は私の番だ。ここを調べてくれ。」
ドルガがシャツの胸ポケットから1枚の紙を取り出した。
ノワール『地図?』
ノリコは目の前に出された紙を見ている。
ノリコ「だいぶ北の国じゃないか、寒そう。」
ドルガ「神代の施設が埋まってるはずさ!今度こそ、機械関連だ!」
ノワール「ちょっと、ドルガさんまで行っちゃうの?」
さみしい。
せっかく、同志……いや、私以上の存在と巡り会えたというのに。
ドルガ「ここの地下施設はお目当てのじゃなかったしな。私は次のを探しに行く。」
ノワール「えー!じゃ、じゃあ、少しだけ機械人形だけでも貸してください!」
ここでマンパワー喪失は惜しい!シンフィールドさんのドラゴン精製施設への物資搬入は機械人形じゃないと。重いし、山奥だし。
ドルガ「いいぜ!1ダース、月極レンタル料○万円に負けといてやる!あ、ここのワイン1本でどうだ?」
ノワール「じゃあ、それで。」
ドルガ「決まりだ!ここのやつらを置いていく、好きに使ってくれ。命令コードの書き換えが必要ならシンフィールドに頼めばいい。」
「じゃぁな!」
2人は仲良く鏡の中に消えていった。幽世経由で行くのか。
魔女は、その方がいいんだろうな。現実世界から行くとなると、関所とか面倒だろうし。
マリアッチ「行っちゃいましたね〜。」
気を取り直して、いよいよ、スルトと対面よ!その前に、
何でスルトのところまで掘ればいいかしら?
ゴブリン
下層民
屍兵 (チリーン)
お?ここで?
ノワール「よし!屍兵にマグマ溜まりまで掘ってもらおう!」
マリアッチ「少し、命令コードを修正しないとですね。私の所に一回持ってきてもらえますか?」
マリアッチのコード書きはこの屋敷に来てだいぶ成長した。私が魔女集会で講師を見つけてきたのが大きい。偉い、私。
ノワール「わかったわ!」
屍兵たちのマグマへの坑道作りがスタートした頃に、ヴァイスとホムンクルスは首都から帰ってきた。確か、財務関係の呼び出しだったな。
私は二人を自室に招いて結果報告を聞こうとした。
ヴァイス「ノワール!ごめん!」
ノワール「?何が?」
ホムンクルス「私が彼の初めてをもらいました。」
…………は?
ノワール「ち、ちなみに、どっちが攻め?」『何、きいてんだ?私』
ホムンクルス「私が誘いました。」
ヴァイス「君の顔で迫られたから、つい。」
うーん、思考力が落ちてるわ。一応、ショックを受けてるのね私。
もう2個入ってるはずの紅茶に角砂糖を追加する。
グルグルグルグル……
スプーンでかき混ぜる紅茶の砂糖が溶ける淀みを見つめる。
グッはぁ~。
我が人生始まって以来の、クソデカため息。
ノワール「もういいわ、結果報告は明日、書類でちょうだい。」
ヴァイス「怒ってない?」
ノワール「私に迫られて、手を出さない方が屈辱よ。」
ホムンクルス「処分されるかと思ってました。」
二人の神妙な顔を見て私はため息をついた。
ノワール「しないわよ。アナタにはまだやってもらうことがたくさんあるんだから。」
その日の夜、私は夢を見た。
クリオ「ヌルゲーだろ?」
ノワール「チリーンのこと?」
死んだはずのクリオと私はテーブル席で味のしないブラックコーヒーを飲んでいた。
一面灰色の霧で覆われた空間にぽつんと居る。他は誰もいないし、何もない。
クリオ「そうそう。アレだよ。」
ノワール「便利すぎて泣けるわ。」
アレに従っていれば、選択を間違わない。死ぬことはない。
クリオ「あれには代償があるんだ。聞きたいだろ?」
ノワール「うんうん、聞かせて?」
クリオ「アレ一回につきお前の寿命一年分を消費してる。」
ノワール「え?私は何歳まで生きる予定なの?!」
クリオ「70だ。因みにコンティニュー一回で寿命5年。」
多い!
ノワール「もう60前半で死ぬんですけど私!」
クリオ「嫌なのか?」
ノワール「税収1位になったら遊んで暮らす未来設計が……
つか、まだ若くない?もっと女の子と遊んでたい!」
クリオ「なんか、変わってなくて安心だわ……まぁ、チリーンを消すモードもあるぜ?」
今はイージーモードってこと?
ノワール「あと何回、選択肢があるかわからない。今のままじゃ50代、最悪40代で死ぬことになるじゃない!?」
クリオ「悪徳令嬢なんだから、人生、太く短くと思ってたぜ?」
ノワール「まっぴらごめんよ!」
最低でも父より、長生きしたい!父は50歳で死んだからなぁ。正確には50の誕生日の3日前。
クリオ「じゃあ、チリーンを無くす設定にするなら、ノーマルモードかハードモードどっちかだけど、どっちにする?」
ノワール「ハードモード。フニ○チンはゴメンよ。」
クリオ「ハハハ!いいぜ!ノワールはそうでなきゃ!まぁ、今でも十分、人生ハードモードだけどな!」
パチリ
ノワール「……クリオ。」
カーテンの隙間から外の景色を見る。アルゲンとルーカーが脚立と剪定バサミを持って庭の木の手入れをしている。
これから春が来る。
ノワール『楽しい夢だった。』
その日、私はマグマ溜まりがある山に視察に行った。
カチン!カチン!
ザクッ!ザクッ!
肉が落ちて99%はスケルトンな屍兵達がツルハシやスコップを持って、一心不乱に人ひとり入れる大きさの穴を掘っている。
ノワール『もう腐乱することもないだろうけど……』
私がその場を去ろうとすると、突然
ゴゴゴゴゴ……!
大地が揺れ始めた。
ノワール「え?!地震!?」
直ぐに私は近くの木につかまった。スケルトン達は揺れててもなお、穴を掘ろうとしている。
ドン!グラグラ……
大きい!
屍兵達がいる山の中腹あたりが大きく割ける。
ドゴォォン!
ノワール『うっそ!?噴火したんですけど!?』
大きな噴石が辺りに降り注ぐ。
ドゴス!
ノワール「う!」
ニアミス、巨大な岩が至近に落ちる。
ノワール「やっば!」
私は全身冷や汗でびっしょりに成りながら、山から急いで逃げた。早く距離を取らなければ。それと同時に溶岩が噴き出る。
ドバ!ドバ!……
大きな石で体の大半を押しつぶされようが、頭が吹き飛ばされようが屍兵は命令コードを実行しようともがいている。
スケルトン「……」
ブジュゥゥゥゥ!
勢いよく噴き上がったマグマは、瞬く間にふもとにいた屍兵達を飲み込んで、さっきまで私のいたところまで流れてきた。当然、辺りはすぐに火の海と化した。
ハァ!ハァ!……
口の横から垂れ下がる舌をしまうのも忘れて私は山を鉱山のほうにむかって逃げた。逃げ惑う小動物達に混じって。
「逃げるのか、小さき者よ!」
どこからともなく大きな声の幻聴がする。当たり前よ!死んじゃうじゃない!
「死を恐れるな!立ち向かえ!」
ノワール「ムリ!」
鉱山の入り口まで逃げてくると、そこにはアルゲン達が来ていて、下層民達の避難をしていた。
アルゲン「ノワール様!ご無事で!?」
ノワール「アルゲン!水遁!」
アルゲン「かしこまりました!水遁!氷結郷!」
濃い霧が辺りを包み、火の勢いが止まる。
プスプスプス……鎮火。
炭化した木の所々に小さな煙が上がって、空を灰色の煙が覆っている。
ノワール「たっ助かったわ!」
私はその場で四つん這いになって激しい呼吸を整えた。
アルゲン「……間一髪でした。」
ノワール「まじで、死ぬかと思ったわよ。」(ハァハァ……)
後日、現場に戻ってみると屍兵は全員、黒く固まったマグマの下だった。もう、ゴーストも消滅しているだろう。
ノワール「どうしよう。一からやり直し?」
顔をもとに戻す工程がやり直しとなって、落胆した私は隠し部屋のマリアッチに愚痴を聞いてもらおうと寄った。
ノワール「……ってわけで、またマンパワー探しからよー!参っちゃうわ!」
マリアッチ「あ、それなら命令コードはバックアップしてあるから、ゴーレムにやらせましょうか?」
ノワール「いいわね、それ!すぐ始めて!ゴーレム作成!」
マリアッチ「はい!わかりました!」
私が席を立つと、それをマリアッチは呼び止めた。
ノワール「何?まだ何かいいアイデアが浮かんだの?」
マリアッチ「あの、その……ご褒美をください……!」(テレテレ)
うーん、ドハマリしたのか……




