第二十七話 新たなスキルと、これからの思い
第二十七話です。
「さて、宴の方は楽しんでもらえたかね?」
「ええ……」
「はい……」
その後、少ししてから俺は宴の最中にギルド長に呼び出された。
その際にどんちゃん騒ぎの空気についていけなかったナナもついてきたが、そのまま俺達は普段、彼女のいるギルド長室へと連れていかれた。
「それはよかった。今回の戦い、私達はなんの役にも立てなかったからね。それなら、別のことで君に恩を返そうと思ったんだ」
「俺だけの力では不可能でした」
「謙虚だなぁ。だがそれも君の美徳とも言えるのだろう」
これまでのやらかしもあって、ものすっごい評価されてしまっている。
てか、これナナのことも話しても態度が変わらないのではないか?
この人がナナの規格外さをどれだけ理解しているかによるけれども。
「どうして、ユーマを呼び出したんですか?」
「ああ、それはね。少しばかり重要な話をするためさ」
「……それじゃあ、席を外した方がいいでしょうか?」
「いや、構わないよ。重要といっても秘密の話ではないからね」
席を立とうとするナナを止めながらギルド長は、俺へと向き直る。
てか、重要な話とはなんだ?
「簡潔に言うと、君には王都から褒賞が与えられることになった」
「王都、ですか?」
王都とはあれか? 都会的な場所だろうか?
なんか王様がいるのは知っているけど、そっちの知識はあまり知ろうとはしていなかった。
「その際に君は王都に招集されることになって……王様と謁見することになったんだ」
「……俺、そこまでのことをした覚えはないんですけど」
「あの古代兵器は、それほどまでに厄介極まりないものだったことが判明してね。仮に王都の騎士団の力を以てしても太刀打ちできるかすら怪しかったらしい」
そんなにやばかったのかサウザーマキナ。
でもそれじゃあ、単独で足止めした上で、力技で装甲をぶちぬいたナナがもっとやばいことになるのだろうけど。
「え、と、都会……」
ちらりと隣を見ると、なぜかナナが衝撃を受けている。
都会に出たい年頃なのかなーって納得しつつ前を向く。
「えぇと、それじゃあ王都とやらに行けばいいんですか?」
「迎えの者が来るだろうから、そこまで気を張る必要はないよ」
「はぁ……」
王都か。
俺よりも前に来た元の世界の人は、城で保護? されてから音沙汰がなくなったらしいのでバレないように気をつけよう。
人の多い王都に向かえば、元の世界に帰る手立てが見つかるかもしれない。
「さて、伝えたいことも伝えたわけだけど、君達は戦いの後に何か変わったことはなかったかな?」
「変わったこと……ですか」
「私は特にないですね」
うーん、そう言われると思い当たるものがないんだよなぁ。
……あ、でも一つあったな。
俺はポケットからギルドでもらった手帳を取り出し、そこから冒険者カードを取り出す。
「なんか、カードの名前部分が光っているんですけど」
「光っている? それってもしかしてスキルがのせられている項目じゃないかな?」
「え、ええ、そうです」
なんかぴこーん、ぴこーん、って点滅していてびっくりしたんだよな。
怖くて放置していたけど。
「だとしたら、君に新しいスキルが発現したんだろうね」
「……スキルって増えるんですか……!?」
「勿論だよ。スキルとはいわば潜在能力の解放。その人の行動によって発現するものなんだ」
寝耳に水すぎる。
たしかに、スキルの名前の隣にSKILL1という文字があるから、複数あってもおかしくはない。
「恐らく、先日の活躍もあって君の潜在能力の一つが目覚めたんだろうね」
「やったね、ユーマ!」
「早速、確認の仕方を教えてもらっても構わないですか?」
どうやら、方法は最初にスキルを出した時と同じらしい。
額にカードを当て、スキルが出るように念じる。
一つ目が即死無効などという後ろ向きすぎるスキルで、今のところ活躍する機会がほとんどない保険のようなものだったが、今度ばかりはちゃんとしたスキルに目覚めてくれぇ……!!
「むむむ……!」
「す、すごい気合だね……」
数秒ほど唸っていると、手に持っている白いカードが淡い光を放つ。
それを確認し、額から離してカードの文面を辿る。
———
★
SKILL2【話術】
:汝の巧みな言の葉には力が宿る。
虚飾を真と思い込ませるほどの巧みな話術は、あらゆる存在に通ずる至高のもの。
励め(がんばれ!!)
———
「あばァァァ!! 一つ星ィィ!!」
「カードを床に叩きつけた!?」
「ユーマ!?」
衝動のまま地面にカードを叩きつける。
なんでッ、嘘つく力に目覚めなきゃならねぇんだ!!
俺は詐欺師になるつもりなんてないんだけど!?
あれか!? ナナ関連で常に嘘ついているし、サウザーマキナの中でえぐい脅し方と嘘をついたからそれで目覚めたのか!?
「ゆ、ユーマ、落ち着いて……」
「ナ、ナナ、お、俺はなぁ、こんな力……欲しくなんて、なかったんだ……!」
「うん……分かってる。分かってるから……」
「畜生……!!」
ナナに止められ、カードを拾った俺は苦悶の表情を浮かべながら唖然としているギルド長の前に座る。
すぐにハッとした表情を浮かべたギルド長は、なにやら沈痛な面持ちを浮かべる。
「……君のスキルについては深い詮索はしない」
「え、あ、はい……?」
「君は我々の仲間だ。君からしてみれば頼りないかもしれないが……それでも、なにか思い悩んだ時は、相談してほしい……!」
もうスキル発動してないかこれ……?
なんかものすごく痛々しい人を見る視線を受けながら、俺はギルド長に思いっきり勘違いされている事実に頬を攣らせるのであった。
●
「ナナ、俺は君に対しては誠実な人間でいようと思う。絶対に嘘をつかない」
「う、うん」
夜が更ける前に家に帰った俺は、まずナナに自分のスキルについて説明してから、そんな決意の言葉を口にした。
「クッ、まさか即死無効に話術なんて……! どうして姑息なスキルばかりに目覚めるんだろうか……!!」
「話術は凄いと思うけど。催眠とかじゃないんだよね?」
「いや、多分、口がよく回るだけだと思う。姑息な話術に説得力が増しただけだな、ハハッ」
自虐的な笑みを浮かべる。
せめて、最低限の自衛手段を手に入れられたらよかったのに……。
「はぁ、王都かぁ」
王都の王様に呼ばれているつったって、俺からしてみれば恐々とするしかない。
なにせ、前の俺と同じ世界から来た人が、行方が知れなくなった理由が城に保護されてからだ。
「ナナは、王都のことはよく知っているのか?」
「勿論、知ってるよっ。色々なものが売ってるし、劇場もやってるすごいところなんだー」
劇場? 舞台とかやっているのだろうか?
ナナからの認識としては、都会のようなものなのか。
「憂鬱でしかないな……」
「私もついていくから大丈夫っ」
「……ただ、王都に行きたいから……じゃないよな」
「……えへっ」
うわ、美少女。
誤魔化すようにはにかんだナナに毒気が抜かれてしまう。
「とりあえず、王都には行かなくちゃな。王様の顰蹙を買って問題を起こす方が嫌だし……」
どちらにしろ、王都に行くことは決定している。
人が集まるところに行けば、俺がなぜこの世界に来てしまったのか、どうやって元の世界に帰れるかを調べなければ……。
「俺の戦いはまだまだ続くのか……!!」
この世界の強さの基準は高すぎる。
そこらを歩く子供でさえ、俺の身体能力を軽々と凌駕する。
周りがその気になれば俺のようなゴミムシ、一瞬で粉微塵にできるほどの環境に投げ出されてしまったが、それでも生きている。
「……頑張ろ……マジで」
この世界の強さに、理不尽に、何度も打ちのめされて心を折られたが、それでも何度でも立ち上がり一日、一日、確かな生を勝ち取っていこう。
以上で第一章が終了となります。
続きの更新については現状では未定となりますので、完結扱いとさせていただきたいと思います。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございましたm(__)m




