第二十七話 騒動は終わらない
第二十七話です。
魔王軍を名乗る不審者集団が乗り込む古代兵器サウザーマキナによる、都市パワルワへの襲撃。
数多くの負傷者を出したこの戦いだが、ナナと俺の活躍によって解決することができた。
まあ、主に頑張ってくれたのはナナで、俺は姑息な手と脅しというこれまでするとは思いもしなかった酷い手段を用いてしまった。
人を騙して気分がいいわけではないが、自分の思い通りに事が運んだことには少しだけ誇ることにした。
とにかく、俺はこの世界でも自分にできる範囲でできることを成した。
「魔王軍の連中は全員捕まったんだよな?」
「そうみたい」
あの騒ぎから三日後。
夕方近くとなり、オレンジ色の空が暗くなり始めた頃、俺とナナはパワルワの街の中を歩いていた。
それぞれの生活を送る街の人々。
暗くなってきた道を温かく照らす魔具の
あれほどの戦いがあったにも関わらず、俺の日常は変わらな――、
「ユーマさん、おはよう」
「あ、おはようございます」
「お、ユーマさんじゃないか。ギルドかい?」
「ええ、お仕事頑張ってください」
いや、なんか道行く人に挨拶されることが多くなった。
ナナが俺のふりをして戦っていたことで、ナナ以外のこの都市にいる人々は俺が単身でサウザーマキナを倒し、魔王の企みを止めたという認識となっている。
俺としては、ただ脅しただけの自分よりもナナがその評価を受けるべきだと相談してみたが――、
「こ、こんなのバレたら、女の子扱いから遠のく……」
先ほどから隣を歩いている彼女は顔を青ざめさせながらそんなことを呟いている。
なんかこの子の感性って、俺の元の世界よりなんだよなぁ。
「お、ナナにユーマ君。相変わらず仲がいいねぇ!!」
「え、ええ、そ、そんな……えへへ」
「いえいえ、そんな間柄じゃありませんよ」
「……」
なにやら妙な威圧感をナナの方から感じる。
周りに勘違いされるとナナに迷惑がかかると思い訂正しているのだが、もっと別な言い方をするべきだったか。
「……もう今更だし、この分不相応な評価も甘んじて受けるか……」
「分不相応ではないと思うよ? ユーマ、一人でロゥリちゃんをなんとかしてたし」
「子供相手に、脅して泣かせたようなものなんだけど……」
「ぅッ……あ、あははー」
笑って誤魔化された。
まあ、俺も自分のやったことにドン引きしていたので別に怒らないけれども。
「そういえばロゥリはどうなったんだ?」
「警備隊の人たちに連行されたって聞いたけど、どうなんだろう。子供だから重い罰にはさせられないだろうし……多分、故郷に戻されるんじゃないかな?」
「まあ、相手が相手だからな。それが妥当かもしれん」
そもそも都市を乗っ取る前にその野望を未然に防いだわけなので、厳密にはロゥリはまだなにもしていないわけだ。
『このままで終わるとは思うなよぉ、ぐすっ、顔覚えたかんなぁ!!』
「最後、不穏な言葉を言っていたことは忘れることにしよう……」
「そうだね……」
普通の子供だったのなら微笑ましいが、相手は規格外の魔力を持っていたらしい怪物だからな。
人間としての最強であるナナと、魔族としての規格外のロゥリという感じだろうか。
まあ、もう二度と会わないことを願おう。
「そろそろギルドだな。時間通りに来たけど……」
「うん。でも珍しいよね、ギルドから直接呼出しなんて」
少し前にギルドの職員が家を訪れ、呼び出されたのだ。
それほど重々しい雰囲気ではなかったので、それほどは心配していないが……いったい、どんな用なのだろうか?
そんな会話をしている間にギルドに到着する。
「ん? なんか外まで人が溢れてるな……」
「なにかやってるのかな?」
やけに冒険者達から注目されてもいる。
疑問に思いながら開いた扉から中へ入ると、いつもの騒々しい雰囲気とは違う静かな室内に、たくさんの冒険者たちが集まっているではないか。
「古代兵器サウザーマキナとは、過去に大戦時代に作られた脅威の機械仕掛けの怪物!! その力は王国の騎士が加勢に来たとしても、対応できたか怪しい代物だった!!」
「ギルド長……?」
室内に用意された檀上の上には黒髪の美女、ギルド長が立っており、なにか演説のようなものをしている。
それに聞き入っている冒険者たち。
「事実、私達はあれの暴威に成すすべなく地面に倒れるしかなかった!!」
流れ的にサウザーマキナとの戦闘について語っているのだろうか?
のほほんと、他人事のようにそう考えているとギルド長の視線が、今しがたこの場にやってきた俺へと向けられる。
「しかしッ!! 彼がやってくれた!! イズハラ・ユーマ君がこの街を、我々を救ったのだ!!」
「えっ」
その場にいる全員の視線が集中する。
え、いや、待て。
受け入れはしたがこんな扱いは望んでない!?
俺、こんな祝われるようないいことしてないし、むしろ自分では恥ずべき手段を取ったと思っているんだが……!?
「ようやく来てくれたか、ユーマ君ッ!!」
「あ、あの、その? これは……」
「なにって……宴に決まっているじゃないか……!!」
そういうことじゃねぇよ!?
この宴の目的を聞いてんだよ、俺は!?
そうこうしている間に、ギルドの酒場で働いている人がものすごい笑顔で飲み物を渡してくれる。
「私達の英雄を讃えようじゃないかぁぁ!!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
全員が手に持った杯を掲げる。
完全に空気に置いて行かれた俺とナナは、呆然とその場に立ち尽くす。
「ユーマ」
「……ああ」
「ごめん」
「……それを言っちゃあおしまいよ……」
この世界の人たちすっげぇノリが良すぎる上に、いい人だらけ……。
ギルド内で宴が行われる光景を死んだ目で見たオレは、そう思うしかなかった。
基本的に善人が多い世界。
それが逆に主人公を苦しめる……!




